↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の閣下  作者: テディ
本編
67/186

第66話 核心

 ジョシュアは近侍達に手伝わせ、コーヒーと

王都で評判の、ドライフルーツやナッツをのせた平たいショコラを

それぞれに運んできた。1皿だけ、小さなサンドイッチが乗っている。


ジョシュアは、クアドロの前にその小さなサンドイッチを置いた。

「クアドロ殿下、確か甘いものは遠慮なさっていると伺いました。

こちらでいかがでしょうか」


クアドロは、ゆっくりと微笑んだ。

「ジョシュア殿、さすがソフィア殿の片腕。覚えていてくださったのですね。

その通りなのです。これは美味しそうだ」


ソフィアはジョシュアが褒められたので、嬉しくなった。

「クアドロ殿、それはジョシュアが遠征先で習って

作ってくれたのです。今はシェフに伝え、調理しています。

毒味は、先ほど近侍の方がしておられたようです」


クアドロは、ちょっと詰まって悲しそうに笑った。

「早く毒味などしなくても良い世の中になれば良いですな」

ソフィアも微笑んだ。

「本当に。さ、クアドロ殿。我らが暖かいものや出来立てを食べるには

毒味に早く仕事をしてもらい、その後すぐに食べるに限ります。

どうぞ」


ソフィアの逆転の発想に、クアドロはクスクスと笑い出した。

「本当にソフィア殿とご一緒だと、常にチャンスの中にいるようだ。

では……」


そう言ったクアドロは、サンドイッチを1つつまんで口に入れる。

しばらく味を噛み締めていたようだった。


「ソフィア殿、これは美味しい……。柔らかさの中に

かみごたえもあるし、肉の旨味も出てくる。

野菜のソースと混ざって、何とも言えない旨味に変わるのですね」


ソフィアは、さらに嬉しそうな顔をした。

「そうでしょう?気に入っていただけて良かった。

最近のお気に入りなのです。ジョシュ、作り方は難しいのか?」


ジョシュアは、軽く首を横にふった。

「いいえ、閣下。美味しい肉と香辛料、新鮮な野菜と時間があれば

どなたでも美味しく作れると思います」


クアドロは感心したようにジョシュアを見ていた。

「ジョシュア殿は、料理もなさるのですね。器用でいらっしゃる」

「恐れ入ります、クアドロ殿下」


ツァイトも、感心したようにクアドロへ話していた。

「殿下、こちらのショコラも美味しゅうございます。

ナッツが我が国と種類が違い、ちょっと香りがするのです。

でもショコラの良さを消していない。

グリフィス王国は、食文化も豊かなのですね」


クアドロは、滅多に味のことを話さない腹心を

おもしろそうに見ていた。

「そうか、お前が言うのであれば、余程美味しいのであろう」


ヴェルデも、おもしろそうに笑っていた。

「殿下、我が国の評判の料理も、ぜひ閣下達に

召し上がっていただきたく思います」

「そうだな、機会があれば是非にでも試していただこう」


クアドロは、ソフィアを見て尋ねた。

「ソフィア殿、このサンドイッチに名前はあるのですか?」

ソフィアは笑って答えた。

「ホロホロ肉のサンドイッチと呼んでいます。

地元では、この肉をサラダに混ぜたり、スープに入れたり、

もちろんそのままでも食べています。皆がホロホロ肉と呼んでいたのです」


「ホロホロ肉……。名前だけでも美味しそうですね」

思わず言ったツァイトに、皆が笑い出した。


ソフィアは、笑いながら話を続けた。

「クアドロ殿、もし貴方が良ければレシピをお教えいたしましょうか?

我が国の地方料理として、紹介していただければ皆も喜びます」

「良いのですか?ああ、でもこの美味しさを知ってしまったら、

私も皆も、グリフィス王国に通いたくなるでしょう。

それはなかなかに叶えにくい願いですね。何年もかかりそうだ。

次の訪問まで我慢できそうにありません。

お言葉に甘えて、レシピをお教えいただいても?

もちろんグリフィス王国の地方料理として、紹介させていただきます」


クアドロは、いつものように穏やかな微笑みで願った。

ソフィアはうなずいた。


「ジョシュ、お前レシピをお教えできるな?」

「はい、閣下。ただ……、クアドロ殿下。

シェフからのレシピではなくて良いのですか?

私にはない、プロのコツが何か入っているかもしれません」


クアドロは、笑って言った。

「それも魅力的ですが、ぜひジョシュア殿から伺いたい。

何か特別な香辛料は必要ですか?」

「いいえ、殿下。ごく一般的なもので大丈夫なのです。

村の家庭で作られている料理ですから」

「この料理は、そこが良いのですね。ぜひ教えていただきたい」


ソフィアは、笑いながら約束した。

「クアドロ殿、お役に立つようで良かった」

「ええ、ソフィア殿。とても楽しみです」


その答えに、ソフィアはニヤリと笑った。

「これで、貴方に伺いたいことが聞きやすくなりました」

クアドロも、ニヤリとしながら返す。

「ほお、貴方は何か私に聞きたいことがあったのですね?」


ソフィアは、優美に微笑んだ。

「ええ、クアドロ殿。これで我が国に隠していることはありません。

さて、ヘイネシア王国の切り札をお教えいただきたい。

今のところ、ヘイネシア王国の民のためにも、

全力を尽くすつもりでおりますのでね」


そう言ったソフィアは、確かに隠し事のない美しい笑顔をしていたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。