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俺の閣下  作者: テディ
本編
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第63話 来客

 ヘイネシア王国は、山の多い国だった。王宮は山を背に建てられ、

長い年月、民を見守ってきた。懇意にできる聖動物は龍で、

山と山の谷間にある、大きな大きな湖でよく見かけられた。


クアドロは、この王国の第一王子だった。

クアドロ・シス・ヘイネシア、誰から見ても完璧な王子だった。

魔力も高く、武力も優れ、それでいて優しくて、

おごることの無い性格。

歳は30歳になり、周りが婚姻のことを本気で心配し出していた。


ヘイネシアの王族は、はしばみ色の瞳と、グレーの髪の者が多い。

クアドロも、その1人だった。


そんなクアドロは、自室で本を読もうかと動きかけたとき連絡が入った。


「殿下、陛下がお呼びです。至急、応接間にくるようにと……」


クアドロは驚いて、急いだ。


応接室に着くと、中には父と宰相、魔法大臣、

そしてどこかの国の使者がいる。


「父上、遅くなりました。こちらは……?」


父は、ゆっくりとクアドロを見た。

「クアドロ、こちらへ。グリフィス王国の使者殿だ」


紹介を受けた使者は、椅子から降りひざまずいた。

「クアドロ・シス・ヘイネシア殿下。お目にかかれて光栄に存じます。

我がグリフィス国王の命を受け、親書をお届けにあがりました」


「ああ、届けてくださってありがとう。さ、もう礼は良いので

お座りください」

クアドロは、何が起きたのか分からず急いで椅子を勧めた。


父が苦笑いしながら、親書をクアドロに手渡した。

「父上?……良いのですか?」

父は、ただうなずいただけだった。


クアドロは、親書を無言で読んでいた。

が、途中に驚きのあまり顔を上げて父を見た。

無言の父を見て、親書に目を戻す。


読み終えると、しばらく考えている様子だった。


「クアドロ、どう思う?」

父に尋ねられたクアドロは、即答した。

「父上、私がグリフィス王国へ伺います。

状況がハッキリすれば、今晩か、明日には戻ってこられるでしょう」

「お前ではなく、ロッソも考えたのだが……」


ロッソはクアドロの弟だ。兄を手伝おうと騎士団に入り

自分の力でのし上がってきた。


クアドロは首を振った。

「父上、お考えはわかりますが私が行った方が良いと思います」

父は、ゆっくりとうなずいた。

「分かった」


父は使者に告げた。

「使者殿、我が息子を伺わせる。我が親書をグリフィス国王に

お渡しいただきたい。それから従者と近衛を何人か。

よろしいか?」


使者は、再びひざまずいた。

「ヘイネシア国王の、思われる通りに」


こうして、クアドロは、急遽グリフィス王国に行くことになったのだった。


 一方、昼食を終えたソフィア達は、ソフィアの執務室に

再び集まった。テオドアは、後学のためと言って父を説き伏せ

休日だけ参加すると言う約束で戻ってきた。


ソフィアは苦笑いしていた。

「私もな、言ったんだぞ?学校の課題もあるのに

休みまで公務の見学なぞ、するものでは無いとな……」

そのソフィアに、テオドアはにこやかに返していた。

「姉上、そんなことおっしゃらずに僕にも色々と

体験させてください。将来に何が役に立つか分からないでしょう?」

「ま、父上が許可したのだから、かまわんが……。

お前、卒業して執務するようになってから

もっと休んでおけば良かったなんて言っても、誰も聞かんからな」

「はい、姉上!!」


ニコニコとする王子に、皆は微笑ましい様子で見ていた。


その時、侍従から連絡が入った。

「閣下、殿下、ヘイネシア王国のクアドロ殿下がお越しになりました」


それを聞いて、ソフィアがニヤリと笑った。

「分かった。……さて、皆、準備は良いな?行くぞ」


そう言って、ソフィアはいつものように颯爽と廊下を歩いた。

部下がゾロゾロと付いて歩くのは異例だ。


応接室の前の近衛に、声を掛ける。

中には、父と側近が数名、近衛が

ヘイネシア王国からの客人を迎えていた。


クアドロは優雅に立ち上がった。

ソフィアに手を差し出し、友好の握手を求める。

本来なら、女性なのでエスコートしなければならないのだが

ソフィアは、いつでも女性としてではなく

王族として対等の挨拶を望み、それを相手国の対面者に話してきた。

クアドロにも、ハッキリとそう求めたことがある。

それを覚えていたのであろう。

ソフィアは、凛とした表情で手を出した。


「クアドロ殿、よくいらした。我が国の馬車はいかがでしたか?」

「ソフィア殿、出迎えありがとう。実に興味深かった。

あなたのアイディアだとお聞きしました」


その馬車は、確かにソフィアのアイディアで改良されたものだった。

国同士を行き来する場合、転移魔法は使えないと言う

協定があるのだ。もちろん滞在国内でも使えない。

これは、訪問する人々、全員に課せられたものだ。

しかし、それでは時間がかかるので空を飛べる乗り物を利用するのだ。

民の中には、それを生業にするものもいる。


ソフィアは、馬車の上部を透明にしてしまったのだ。

強化したガラスを使い、表面を結界で覆う。

密談される恐れもなく、景色を楽しんでいただきたいと

もてなしの意味も込められる。なかなかによく考えられた改良だった。


「気に入っていただけて良かった。眺めはいかがでしたか?」

「ええ、大変楽しめました。街は笑顔の民であふれておりましたよ」

「ありがとう。最高の褒め言葉だ」


ソフィアは後ろを振り返って、テオドアを呼ぶ。

「テオドア、来なさい。クアドロ・シス・ヘイネシア殿だ。

クアドロ殿、我が弟なのです。まだ学生なので夜会には出席していないのですよ」


テオドアは、手を差し出した。

「クアドロ殿下、ようこそいらっしゃいました。

テオドア・ル・グリフィスです。どうぞお見知りおきを」


クアドロは優しく手を握り返した。

「初めまして、テオドア殿下。クアドロ・シス・ヘイネシアです。

これから親交を深めましょう」

「はい、クアドロ殿下」


子供達の対面に、国王は満足したようだった。

「さて、ソフィア。本題にかかるかの」


「はい、父上」


ソフィアは、またしても不適に笑うのだった。

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