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俺の閣下  作者: テディ
本編
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第59話 一滴

 週末まで、ソフィアはジョシュアに約束した通り、

午前中は執務に励んだ。昼休憩をはさみ、午後は訓練、

ただし時間は1時間に短縮された。

その後、自室に戻って祝ってくれた人々へ

お礼のカードへの署名。これを約束通り、やり遂げた。


週末の初日、ソフィアは案の定、何もせずに魔具をいじっていた。

ジョシュアは笑って、身支度を整えさせ朝食を食べさせる。


「ソフィ、来客があるかもしれないと言っただろう?

身支度はしないとな。あまり侍女長を困らせるな」


ソフィアは首を傾げ尋ねた。

「すまん、侍女長。困っていたのか?」


侍女長は思わず微笑み、笑ってしまった。

「ほほほ…、まあ、失礼しました。

ソフィア様があんまりにも愛らしくていらっしゃるので……。

そうですね、ジョシュア様がいらっしゃるとはいえ、

身支度は、お任せいただけるとありがたいですわ」


「そうなのか? うん……、考えておく」


ソフィアの、あまりにも正直な返答にジョシュアが

笑い出した時だった。


ソフィアが、突然立ち上がった。

ジョシュアと侍女長は、ただ立ち止まってそれを受け止めた。

ソフィアは長い間、窓の方を見ていたが静かにジョシュアに告げた。


「ジョシュ、客人だ。お前の想定とは違う客人だがな。

ちょっといつもと違うので、自信がないが間違いない。

父上と、テオドアに連絡を。

最初の対面は、私が行う。オーリーは近衛の部屋にいるのか?

呼びにやってくれ。遠征に一緒だった近衛と騎士を連れてくるように。

ルークに連絡を。休みは無しになったと伝えてやれ」


ジョシュアは静かに、愛しい主人の言う通りに手配した。


ソフィアは、戻ってきたジョシュアと、慌てて駆けつけたオーリー、

そして遠征に引き連れた近衛と騎士を連れて

王宮の端、高台と呼ばれているところに行くと言う。

全員、武器や敵意は絶対に出すなと誓わされた。


オーリーはジョシュアと目で会話した。

ソフィアの、この様子は見た事がある……。


グリフォンなのか?王宮に?

……わからんが、聖動物がらみに間違いはなさそうだ……。


ジョシュアは、転移魔法を使った。ソフィアが歩くより早いと言うのだ。


着いた場所は、王宮で使用されているのと同じ石でできた、

ただの広い広い円になっている闘技場のような場所だった。

高い壁で覆われており、何もない。もちろん観客席などもない、

ただの広場だ。


ジョシュアも、オーリーも、この場所は知っていたが

使用したことも、訪れたこともなかった。


ジョシュアが、声をかけようとした時

ソフィアが微笑んだ。


「あぁ、やっていらしたぞ。

いいか皆、動くな。向こうに敵意はない」


ソフィアが見上げたその先、澄んだ青い空の中に

それは泳いでいた。


「皆、あれが青龍だ。他にも白竜、赤龍がいる。

全ての龍を、ドラゴンと呼ぶ国もあるな。

我が国では、青龍、白竜、赤龍と色を尊重して呼ぶことになっている」


呑気に言っているソフィアだが、

ジョシュアとオーリー以外の近衛や騎士は、

そもそも聖動物にあった事がない。

あたふたしている様子を、ソフィアは笑いながら眺めた。

「オーリー、この者たちはお前が選抜したのであろう?」


その一言で、全員が気を持ち直した。


ーーそうだ、我々はこの任務に置いて選抜されたーー


その想いは、全員を冷静にさせるほどの重みがあった。


ソフィアは、満足げに頷いた。


「オーリー、やはりお前に任せて良かった」

そう微笑んだ時、青龍はスルスルと地面に降り立った。

後ろ足で立ち、、前足には伝説の珠を持っている。


まだ空気が、意思を持っているかのように舞っていた。


ソフィアはグリフォンの時とは違い、

立ったまま最大の礼を尽くした。


「青龍殿、長い飛行の旅、お疲れであった事でしょう。

グリフィス王国の最初の代表として、ソフィア・ラ・グリフィスが

歓迎申し上げる。どうぞ、ごゆるりと過ごされよ」


そのソフィアの神々しさに、部下達は習った。



(こうべ)を垂れるグリフィス王国の民に、青龍は、満足したようだった。


ソフィアは、ジョシュアに言付けた。


「ジョシュ、動いて大丈夫だ。父上とテオドアをここへ。

テオドアがいなければ、それでかまわん。

何かの理由で、父上が判断なさったのだろう。

騎士を1人連れて行け。もうこちらに向かっているだろう。

そこの通路を使え」


ジョシュアは、優雅に青龍に礼をし、騎士を伴って

通路を歩いた。

ただの1本道の通路だ。何かの理由で、この通路以外からの

出入りはできなくしたのだろう。


少し歩いただけで、目の前から近衛の姿が見えた。

後ろに国王、テオドアもいる。


ジョシュアは、ひざまづいた。

「陛下。お迎えに上がりました。

テオドア殿下も、ご一緒で安心いたしました」


近衛の後ろから、声がする。

「ジョシュア、連絡受け取った。急ぐぞ」

「はっ、僭越ながら先頭をつとめさせていただきます」


そう言うと、騎士と一緒に身をひるがえし、元来た道を戻る。


ソフィアの元に戻ると、国王のために道を開ける。

ジョシュアは、ソフィアに声をかけた。


「閣下、陛下とテオドア殿下がお着きになりました」


ソフィアは、さっきよりも青龍の近くにおり、交流しようと

青龍へ高く手をあげているところだった。

青龍は、長いヒゲをたなびかせ口元をソフィアの手に寄せた。



ソフィアはゆっくりと手を下ろし、後ろを振り返った。

「あぁ、父上。ご挨拶が済んだところです。

こちらへ。テオドア、お前は父上の後に続いてくるように」


「はい、姉上」

テオドアは素直に返事をした。


父がソフィアの側まで来た時、ソフィアは父に場所をゆずった。

父が、先ほどソフィアがしたように礼をとる。


「青龍殿、ようこそお越しになられた。

私がグリフィス王国の国王、セーヴェル・ル・グリフィスだ。

あなたに充分なくつろぎを」



皆、国王が誰かに礼をとるのを初めて見た。

それは自分たちの経験上、とても衝撃的なことだった。


テオドアも、自分の名を名乗り青龍に挨拶をする。


青龍は、留まっているにもかかわらず風をまとっているかのように

ヒゲをたなびかせていた。


ソフィアは、まるで世間話でもするようにリラックスして

父と話していた。


「父上、ヘイネシア王国に使いを出さねばなりません。

またグリフォンが同じように他国に使いを出しているやもしれません」

「そうだな、至急に書簡を送ろう。いいか、ガザンは

どちらにしても最終だ」

「承知しております」


たったこれだけの会話で、国の方針が固まったのだった。

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