第57話 怒涛
部下達との楽しい休憩は、あっという間だった。
ジョシュアは午後からの手配をしたあと、ソフィアを連れて
王族の私的なエリアに急いだ。
「ジョシュ、本当に行かねばならんか?
家族は皆、喜んでいくれているし、明日でも良いのでは?」
そう言われたジョシュアは、少し笑った。
「ソフィ、そうもいかん。陛下は朝から議会の承認を得るために
動いてくださっていた。まだ、女王陛下にもご挨拶してない」
そう言うと、立ち止まってソフィアの顔を、そっと両手で包んだ。
「俺にも、たまには良いカッコをさせてくれ」
額にキスを落とし、また足早に急ぐ。
ソフィアは、この時間ならたぶん両親はサロンにいると言われ
目通りを願った。
近衛がドアを開けてくれると、中には両親とテオドアがいる。
ソフィアは驚いて、声をかけた。
「父上、母上。今日はありがとうございました。
テオドア、お前……学校は……??」
テオドアは、ソフィアを見て嬉しそうにした。
「姉上、ご婚約おめでとうございます!!
議会に承認されて良かったですね」
ソフィアは、しばらくテオドアを眺めると、
ふっと笑みを漏らした。
「何だ、心配していくれていたのか。でもよく学校を休めたな」
「父上に、お願いしたのです。後学のために議会を見学したいと」
「そうか、ありがとうな」
そう言うと、ソフィアは笑って父に言った。
「父上、良かったのですか?」
「たった1人の姉だ。仕方あるまい」
珍しく子供に甘いところを見せた。
ジョシュアは、ソフィアの両親の前にひざまづいた。
王族の礼を持って、感謝する。
「陛下、女王陛下。暖かいお心のおかげで、
本日、婚約を公示できたと聞いております。
深く感謝申し上げます」
そう言われた母は、嬉しそうにジョシュアの手をとった。
「まあ、ジョシュア。ありがとう。でも、あまり堅苦しのは
なしにしましょう?家族になる準備が始まるのですもの。
ねぇ、陛下?」
「そうだな、我らだけの時は無礼講で良い。
とは言っても中々難しいであろう。早く慣れるのだな」
「ありがたきお言葉。それでは無礼講は、婚儀が終了しましたら
お言葉に甘えたく存じます」
父は大笑いしていた。
「ジョシュア、お前ならついて来られると思ったので、
最速で事を進めるぞ。エヴァンス伯爵にも言ったが、
お前の気の変わらんうちに、早くせねばの」
「陛下、ご冗談を……。長年、閣下を待ち焦がれたのです。
この先も変わりませんので、どうぞお手柔らかに……」
「そうだな……、よく思い切ってくれた。
ジョシュア、父として感謝しておるぞ。
ソフィア、さあ、ジョシュアとそこに座りなさい。
お前のことだ、婚約した後の手順も知らぬであろう。
1回で覚えるのだぞ。ああ、テオドアは
自分の運命が見つかったら、お前と同じように
最速で事を進めたいそうだ。だから同席を許したからな」
ソフィアは、席につくと恐る恐る尋ねた。
「父上、わかりました。……婚約した後にやることは
そんなに多いのですか?」
「なに、お前達の場合はジョシュアが手配するのだろう?
お前はジョシュアに自分の望みを話せば良い。
そうすれば、ジョシュアが整えるであろう。
な、ジョシュア?」
「はい、陛下。長年待ち望んだ閣下をお迎えするのです。
私の全能力をもちまして、あたらせていただきます」
にこやかなジョシュアを見て、ウッとつまる。
これは……、なにが何でもやらねばならん時のジョシュだ……。
……婚約とは甘い時間だけでは……??
そんなソフィアの考えなど、お見通しのジョシュアは
にっこりと笑った。
「閣下、貴方はグリフィス王国の姫なのです。
色々と責務もございましょう。大丈夫です。
1つずつ取り掛かりましょう」
ーーダメだ……、仕事を終えんと、いつもの生活に戻れん……。
ソフィアは天井を見上げた。
母は扇の後ろで、クスクス笑っている。
テオドアは、密かに喜んでいた。
これが、魔法省の影の魔王……!!初めて見た……!!
ジョシュア殿は、普段優しいからな。1回見てみたかったんだ……!!
でもテオドアは、ふと気がついた。
……あれっ??……ジュードも、魔王に変身するなんてことは
ないよね……??うわ〜〜……。それは……嬉しくないな……。
そう思うと、姉を応援したくなるテオドアだった。




