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俺の閣下  作者: テディ
本編
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第55話 多忙

 その日の正午、正式にソフィアとジョシュアの婚約が

公示されることになり、ジョシュアは大忙しになった。


まだ婚約なので、別に国民にお披露目があるわけでもない。

ただ、祝ってくれる人が多数になるはずなので、

その前に、遠征中の溜まった仕事を片付ける必要があった。


時間のないジョシュアは、目覚めの儀式を

さらに大胆なものにした。

侍女達がふるふると微動するが、侍女長は、仕方がないと

見逃してくれたようだ。大きなため息があったが……。


ベッドサイドにコーヒを用意し、

いきなりソフィアを抱き上げ、キスを落とした。


「ソフィ、ソフィ。起きろ。今朝は優しく待ってやれないんだ。

……ソフィ?俺の大切な閣下、頼む、起きてくれ」


そう言うと、胸元でふにゃふにゃしているソフィアを

抱きしめ、額に、頬に、耳元に、キスを落としていく。


ソフィアは気持ちよさで、さらにふにゃふにゃになっていた。

「ソフィ、コーヒーを入れてきたぞ。村からもらって

持ち帰ったコーヒー豆を使ったんだ。うまいと思うんだがどうだ?」


……そういえば……香ばしい香りが……。


ソフィアは、目が開いていないのに、鼻をクンクンとさせていた。

「ほら、ソフィ。良い香りがするだろう?早く飲まないと

香りが落ちてしまう。さあ、起きてくれ」



ようやく、ソフィアの目が開いた。

「ジョシュ……。おはよう……。コーヒーをくれ」


ジョシュアは笑って、カップを手にとった。

まだ目をこすっているソフィアに、そんなにこするなと言い、

カップを近づける。


「ほら、ここでこぼしたら一大事だ。

飲ましてやろう」


ソフィアは、いつもの眠気に勝てず

されるがままだ。


口元にあった、カップに引き寄せられるように

ひと口飲むと、頭の中が少しずつはっきりしてきた。


「……うまい……。ああ、苦味もうまいな……。

ジョシュ、起きたぞ。おはよう」

「おはよう、ソフィ。さ、急ぐぞ」


ジョシュアは、いつものように浴室で待機している侍女に

頼むと言ってソフィアを座らせ、

いつもの倍のスピードで書類に目を通した。


いつも湯から上がってきたソフィアを磨き上げる侍女達に、

今日は自分がやるから大丈夫だと言い笑った。


侍女達は表情に出さなくなったものの、目が星のように輝いていることから

ジョシュアの甘さの漏れようが、分かるというものだ。


鏡の前に座ったソフィアの髪を、一瞬で乾かし、

香油で髪を磨き上げる。こんな時のために、

化粧の仕方も覚えておいたので、魔法で全部済ました。


いつもよりも短時間でソフィアの支度を終えたのだ。

侍女達に、これは緊急のための物なので、明日からは

いつも通り、侍女達にやってもらいたいと告げておいた。


侍女長は、感心していた。

「ジョシュア様、お見事でございます」


そんな侍女長を見たソフィアは、笑った。

「侍女長、早すぎて私の覚醒が追いつかない」

「歩きながら、目覚められると良いでしょう。

本日は、執務室で朝食を取れるようご用意いたしました」

「えぇ??朝食も執務室なのか?!ジョシュ!?」


立ち上がったソフィアを、後ろから抱きしめジョシュアは笑っていた。

「すまんな、陛下が早く動いてくださっただろう?

午後の公示に間に合うように、早く動かねばならんのだ

代わりにお前が村で気に入ったと言っていた

ホロホロ肉のサンドイッチを作っておいた。

ベリーのジュースもあるぞ。それで勘弁してくれ」


ホロホロ肉のサンドイッチ……。

……確かにあれは絶品だった……。


ソフィアは、しぶしぶ自分の頭の上にあるジョシュアの顔を見上げた。

「……そうなのか……。では、仕方あるまい。

いくぞ、ジョシュ」


そこからは、いつもの風景だった。

颯爽と廊下を歩くソフィア。後ろから今日は片手にバスケットを持っているが、

書類を確認しながら歩くジョシュア。


すれ違う王宮の勤め人達は、いつもの光景にホッとして

明るく挨拶を交わすのだ。


執務室の前で、近衛がドアを開けてくれる。

中に一歩入ったソフィアは、驚いた。

「こ……これは……??」


ジョシュアにも香りが届いた。


執務室には、すでにお祝いの花が届き初めていたのだ。

もう、かなりの数になっている。


ソフィアは部屋に入って、自分の執務室を眺めた。

ジョシュアは、近侍に贈ってくれた人の名前を控えるように言い、

カードがあれば、無くさないよう全部ソフィアの空き箱に入れるように指示した。


「私的な事をさせてすまんな。

今、侍女を1人頼んだから来るまでの間、頼む」

ジョシュアが、さすがに申し訳なさそうにすると、

引き受けてくれた近侍は、にこやかに答えた。

「いいえ、ジョシュア様!!お手伝いさせていただけて、

幸せな気持ちです。皆で情報を共有するようにしておきますね」


「閣下、朝食をとってください。すぐ始めないと

大変なことになりそうです……」


ソフィアは、この状況じゃ……とサンドイッチを

ゆっくり味わうのを諦めた。


そして何としても溜まった仕事を片付けるとの

ジョシュアの信念に、大人しく従ったのだった。

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