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俺の閣下  作者: テディ
本編
55/186

第54話 母

 大切な友人や、ジョシュアが自分の為に

色々な話をしている時、ソフィアは晩餐の席についていた。


父から大切な話があると言う。そして、それは家族全員で居るところで

話したいと言うのだ。


意を唱えるわけもなく、ソフィアは晩餐の席についた。


テオドアが、嬉しそうにソフィアに声をかけた。

「姉上、ご婚約おめでとうございます」

「ん?もうお前も知っていたのか。

ありがとう。そういうことになったんだ。よろしくな」


姉は相変わらず、マイペースだった。

僕も、このくらい当たり前のように婚約したいな……。

テオドアは、まだ見ぬ自分の運命の人に思いを馳せていた。


父が、食事をしながらソフィアに話した。

「ソフィア、明日には国内外にお前の婚約を公示する」

「わかりました」

「お前は、分かっておらぬであろう。

だから、先に忠告しておこう」


父は、苦々しく笑った。


「ソフィア、王族の結婚は、予想しえぬ邪魔が入ることがある。

例えそれが、運命の相手だとしてもだ」


ソフィアはいつもと違う父の様子に、驚いた。

「父上、グリフォンが教えてくれたのです。

そうであってもと言うことですか?」

「ソフィア、そうであってもだ」


静かに父は、ソフィアに告げた。

「ソフィア、お前隣国に、どうしてもお前が嫁がねば

我が国に損失が出ると言う状況になったら、どうする?」


ソフィアは、あまりに突拍子もない想定に

返事ができなかった。


「他にもあるぞ。ジョシュアが、お前を守る為に

お前を諦める事も状況として、起こり得る」


……ジョシュが、私を諦める……?


そう思った瞬間、ソフィアは自分の血が

ガッと逆流したかのように感じ、思わず立ち上がった。


ガタンッと、椅子が大きな音を立てて後ろへ倒れる。

家令が、ゆっくりとその椅子を直した。


「他にもあるぞ、結婚にあたり

お前の臣籍降下を議会が認めないと言い出す事もあるやも知れん」


ソフィアの顔は、いつもよりも強張っていた。


テオドアは呆気に取られて見ていた。

今、幸せそうな姉に、この話をする必要があるのか?

家族皆で、姉が運命の人を見つけ受け入れた事を

喜んでいたのに、今、この話をしなければならないのか?


テオドアは、自分がまだ守られるべき学生で、

まだまだ勉強することがあるのだと思い知った。


ソフィアは、大きく息を吸った。

そして、ゆっくりと座り直した。


その表情は、グリフォンと話す時と同じ

表情は穏やかなのに、瞳に力が宿っていた。


「父上、ご忠告ありがとうございます。

そうですね、確かに全てが起こりえます」


父は片眉を上げて、おもしろそうにソフィアを見た。


これはなかなか……我が娘ながら……、

真が通って居るやも知れん……。


ソフィアは、そのまま続けた。

「父上、最初に誓いましょう。

私は自分の運命を、諦めるつもりはありません。

そして、最大の尽力をして、なお叶わぬなら

私にその力が足りないのでしょう。

でも諦めません。何度でも挑戦してみせます。

人生の中で、ほんのいっとき離れることがあったとしても、

私がジョシュを諦めることはありません。

ジョシュが私の為に、諦めるフリをするなら、

その状況を私が打破すれば良いだけのこと。

そうすれば、ジョシュは私のもとに戻ってくるでしょう。

そして、それが国民の幸せに繋がると信じていますし、

テオドアも理解してくれるでしょう」


父は、一転して優しく微笑んだ。

「そうか、ソフィア」


そこで母が、やっと話し出した。

「まあ、陛下ったら……。ソフィアを試すような事をして……」

母は、困った人とでも言うように自分の夫を見ていた。


「まあ、そう言うな。

我らの子として産まれた以上、話しておかねばならん。

環境に負けるような子では、本人が困るのだ」

「……もう、陛下ってば……」


ソフィアは、相変わらず少女のような母を見ていた。

自分もこのように愛らしかったら、他の人生があったかもと

何度思ったか知れない。

でも、そんな時に必ずソフィアらしくと言ってくれるのは

他でもない、この母だったのだ。


結局、私は自分の道を歩くしかないのだ。

そして、そのままで良いと言ってくれたジョシュアがいる。

友人にも恵まれた。家族にも恵まれた。

不平は漏らすまい。


そう思うソフィアに、母は優しく語りかけた。


「ソフィア、婚約おめでとう。

あなたに運命の相手が見つかって嬉しいわ」

「ありがとうございます、母上」


「ソフィア、大丈夫よ。心配しないで。

困難なら乗り越えられる。あなたにはジョシュアも

大切な仲間もいるでしょう?そして家族も」


ソフィアは微笑んだ。

「はい、母上。その通りです」


「私たちの大切なソフィア、よく聞きなさい。

あなたが他者の幸せをのぞむ時、相手もあなたの幸せを

祈ってくれるわ。そうやって人の心は、育まれるのよ。

その瞬間に芽が出なくても、いつか芽は出て

大木になる。だから心配しないで、幸せになりなさい」


母は、自分の席までやってきてソフィアを抱きしめた。

「おめでとう、ソフィア。幸せになりなさい」


ソフィアは、まるでグリフォンから加護を与えられているかのように

暖かい幸せを感じるのだった。

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