第50話 感慨
オーリーが到着して30分後、やっとルークが現れた。
皆で晩餐をとりながら、話すことにしてあったので、
モリンはサロンに、食事の準備をした。
モリンの家の者は、皆が働き者だ。動く方が好きで、
あっという間に準備ができてしまう。
父が、気楽な生活を好むので、使用人とも距離が近かった。
そして異国の風習で、ある事も取り入れていた。
前菜やメイン料理、お楽しみのメニューなどを大皿で
置き、自分で好きな物をとるのだ。
これは友人皆を喜ばせた。いつもより気楽に楽しめるし、
不思議な調理法で作っているものも、見たことのない食材も
全てが興味深かった。
それでも皆、いつもの習慣は崩せずに前菜や小さなスナックを
皿に乗せ、席についた。今日の食前酒は果物を蒸留酒に漬けて
3年間も寝かせた物だった。
モリンがグラスを取る。
「ルーク、お仕事、お疲れ様。さあ、いただきましょう」
グラスがチンッといい音を立てた。
その食前酒は、寝かせていたおかげでトロッとした食感だった。
フルーツの香りも充分楽しめる。
「モリン、美味しいわ。飲みやすい」
あまりアルコールが得意でないリリーが感心していた。
カイも喜んでいる。
「本当、飲みやすいよ。味も香りもフルーティになるんだね。
あぁ、リリー、それ以上飲んじゃダメだよ」
カイの忠告に、リリーは大人しく従った。
「そうね、カイ。これでは美味しくて、飲み過ぎてしまうわ。
私は、そちらのお水をいただくことにするわ」
「まあ、飲み過ぎても僕が送っていけばいいんだから
問題ないんだけどね。でも君の乳母が卒倒しそうだ」
リリーは笑い出した。
「そうね、ばあやが倒れてしまうわ。
やはり私はお水をいただきましょう」
カイはリリーに、フルーツを1切れ入れたお水を渡してやった。
マイアが待ち切れないとでもいうように、オーリーをせっついた。
「オーリ、約束よ。ルークが来たわ。
何が起きたのか教えて!!」
オーリーは楽しそうに笑いながら、話し始めた。
「そうだな、約束したからな。お前達、どこまで知ってるんだ?」
「ソフィが、前よりもっとジョシュにしか
世話をさせないって噂までよ」
「そうか。ではジョシュがやっている目覚めの儀式は知ってるか?」
「目覚めの儀式??」
「そりゃ、誰も知らないか……」
オーリーは話が漏れていないことに感心していた。
たぶん侍女長の教育の賜物だ。
「ジョシュの、ソフィを甘やかしに甘やかした起こし方に
侍女達が密かに、目覚めの儀式と名付けたそうだ」
カイの目が、さらに丸くなった。
「そんなに甘やかしているの?」
「ああ、俺も驚いた。ちょっとどうかと思って侍女長殿に
聞いたくらいだ」
ルークも驚いていた。
「それで?侍女長は何と?」
「ソフィ相手には足りないと、ジョシュに進言したそうだ」
皆、それを聞いて微妙な表情になる。
マイアが苦笑いしながら言った。
「まあ……、そうよ……ねぇ……」
オーリーは笑いながら続けた。
「あのジョシュに、あんなことできるんだなと感心したよ」
「そんなになの?!」
カイは本当に驚いていた。どちらかと言うとジョシュアは
ソフィア以外の女性には無関心だからだ。
「まあ、甘ったるくて固まるぞ。頬を撫でて声をかけ続け、
腕の中に抱き起こし、キスを落としながら、
お前の好物を食べてしまうぞって言うと、ソフィが
私も食べる!!って言って起きるんだ」
オーリーは、大笑いしていた。
リリーは微妙な顔をしていた。モリンも何だか頬が赤い。
マイアだけが大笑いしていた。
リリーは、少し頬を染めながら、首を傾げた。
「何だかとても甘い感じがして、こちらが恥ずかしくなってしまうけど、
結局ソフィは食べ物に釣られて起きるのね……」
マイアは、まだ笑っている。
「さすがソフィだわ。私の大切なソフィ!!そうでなくちゃ!」
ルークも笑っていた。
「そういえば、今日はショコラケーキを少し出したんだ。
ジョシュの分も半分こと言ってもらっていたよ」
「ジョシュはソフィの好きな物なら、自分の分もあげてしまうものね」
モリンも微笑んでいる。
ルークは本題を切り出した。
「さて、オーリー。それで?どうやって婚約することになったんだい?」
その一言に、みんなが固まった。
「婚約???!!!」
ルークは優しく微笑んで、皆に教えた。
「そうなんだ。帰還したかと思ったら婚約するって
ソフィが言ったんだよ」
マイアはオーリーを見る。
「オーリー、何でまたそんな急展開になったの?
私たちの感触では、ソフィが自覚するまで
まだ当分かかると思っていたのに」
皆の、いったいどうなっているのか?!!!
と言う圧力に押されそうになりながら、オーリーは思っていた。
ルークめ、さては報告を入れなかったのを、まだ根に持っているな……?
しょうがないと言うように、オーリーは答えた。
「分かった、分かった。肝心のところもきちんと話す。
そう俺を責めんでくれ」
そう言っても、無言の圧力は変わらないのだった……。




