第44話 混乱
ソフィア達は、1週間の視察を終えて、無事帰還した。
執務室には、ルークを始め、部下達も、
ソフィア付きの侍女達も揃い、ソフィア達を迎えたのだ。
「魔法大臣閣下、無事のご帰還お待ち申し上げておりました。
お帰りなさいませ」
ルークの言葉に、皆が嬉しそうに王族への礼をとった。
ソフィアも、嬉しそうにうなずいた。
「今、帰った。出迎えありがとう」
ソフィアがそう言った途端、あとは無礼講となった。
「閣下ーー!!お帰りなさい!!」
「閣下がいらっしゃらなくて、なんだか皆、元気なくて!!」
「閣下!!僕、この間お話しした文房具の店、行ってきましたよ!!」
「副閣下も!!無事のご帰還嬉しいですーー!!」
「副閣下……、実は……」
皆、涙目でジョシュアを見上げている……。
ジョシュアは笑いながらため息をついた。
「分かっている。未処理の書類が溜まっているんだろう?
明日から、追い上げるぞ」
「ジョシュア様ーー!!」
「副閣下……!!」
部下達は、本当に涙目でジョシュアに縋り付いていた。
それを見ていたソフィアは、なぜかムッとした。
いつもの光景。別にめずらしくない。
良くあることだ。本当に書類が溜まっているのだろう。
でも……。
ソフィアはちょっと膨れて、ルークを見た。
「ルーク、父上に目通りを。報告と、ジョシュと婚約する」
その一言に、皆がシンッとなった。
オーリーと騎士に近衛、侍女長まで天井を見上げ、
手で目を覆っていた。
ルークも、すぐに反応できなかった。
「……ソフィ……?……聞き間違いなのかな……?
ジョシュと……婚約すると聞こえたよ……?」
そんなルークに、ソフィアは無情に言い放った。
「ルーク、そう言った。ジョシュと婚約する」
しばらく誰も動けなかった。
業を煮やして、ソフィアはルークに問うた。
「ルーク、私はジョシュと婚約する。
誰か意義のある奴は?!」
皆、無意識のうちに首をブンブンッと横に降っていた。
「意義はないのだな?!よし、では父上に目通りを。
ルーク……、ルーク!!」
ルークは、ハッとしたようにジョシュアを見た。
そしてオーリー達も……。
ジョシュアは苦笑いしており、オーリー達は
どこから説明すれば良いのやらと言った顔をしている。
ルークは悟った。何かがあったのだと……。
そして、それはあとでタンマリと聞いてやることにしよう。
「分かった。すぐに陛下にご連絡申し上げよう」
ルークは、答えた。
ジョシュアは、腹を括った。
……こうなったら、俺の想うままに甘やかしてやる……!!
周囲が、自分たちの仲を認めれば、
隣国にいく際も、自分の立場がはっきりする。
そのほうが、ソフィアを守れるだろう。
ジョシュアはソフィアの手をとった。
ニヤリとして、皆を見る。
当のソフィアは、手を取られ腰にまで手を回されているのに
キョトンとしていた。
「そう言うわけだ。陛下からお許しをいただければ、
話が進むことになる。少し騒がしくなるが、皆、頼むな」
ジョシュアは、すっかり色気タップリ仕様になったらしい自分を
思う存分に利用することにした。
侍女達は、手を胸の前で祈るように組み、
フラフラしながら、顔を真っ赤にしている。
ソフィアは、その様子を見て
侍女達の病気は、まだ治っていなかったのかと心配になった。
侍女長が、冷静にソフィアに告げた。
「ソフィア様、ご心配なく。侍女達は大丈夫でございます」
侍女長を見ると、慌ててはいない。
そうか、大丈夫なのか……。……大丈夫なのか……??
ソフィアは、ジョシュアを見上げた。
いつも通り、美しい漆黒の瞳だ。そして何やら嬉しそうだ。
「ジョシュ、侍女達が病気かと思ったのだが、
違うのか?」
「閣下、侍女長が言ったことをお聞きになりましたか?
侍女長が大丈夫と言っていたでしょう?
ご心配なく、大丈夫ですよ、閣下」
ジョシュアは、ソフィアのこめかみにキスを落とした。
侍女達は、歓声を上げなかっただけ褒めてやらねばなるまい。
少し震えてはいるが……。
侍女長は、ジョシュアと部下達を冷静に見た。
「ジョシュア様、その辺で。侍女達が仕事にならないと
ソフィア様が困ります」
ジョシュアがクスクス笑っていた。
「足りないとアドバイスをくれたのは、あなただったのに」
「確かに足りのうございます。しかし、今はこのくらいが
適度かと……」
「分かった。確かにこの辺でやめておこう」
オーリーは後ろに騎士と近衛を従え、盛大にため息をついた。
「ジョシュ、こっちも被害が出るんだよ。
適度にしとけ、適度に」
ジョシュアは笑っていた。
「良いか、恋人がいるやつも、独り身のやつもいる。
理性にも限界はあるんだよ。あんまり刺激するな。
適度だぞ、適度」
そんな中、手配を終えたルークが笑いながらオーリーを見た。
ーーマズイッ!!魔王2号だ……!!
オーリーは瞬時に危機を察知した。
「ルーク、そんなに怒るな。前もって連絡できずに悪かった。
事情があるから、勘弁してくれ。きちんと説明する」
「オーリー、怒ってなんかいないさ。ただ、
事前の報告はどうしたのかな?って思っただけだよ。
ジョシュもね」
ーー怒ってる……。
ジョシュアは素直に頭を下げた。
「ルーク、連絡できずに申し訳なかった。
心配してくれていたのに、悪かった。
陛下にお話ししたら、ルークのところへ行く」
そのジョシュアの様子を見て、ルークは少し溜飲を下げた。
「分かったよ。オーリー、ジョシュ、連絡を待っているからね」
その様子を見ていた者たちは、苦笑いしていた。
ここにも魔王が隠れてた……。
直属の部下じゃなくて良かった……!!
皆、そう思うのだった。




