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俺の閣下  作者: テディ
本編
42/186

第41話 自然

 その日の晩餐も、ソフィアを大喜びさせた。

漬けて置いた肉は柔らかく煮込まれ、絶品だった。

ソフィアは興奮して、ジョシュアのフォロー際立つ

食事となった。


「おかみ、皆、美味い!!熱々だし、とっても美味い!!」


そう喜ぶソフィアに、村人達は自慢げな顔で話していた。

「姫様、明日の夜は川魚にしましょう。

オーブンでグリルして、とびきりのソースを作りますぜ」

腕っぷしの強そうな男が、得意そうに話した。


「川魚?!すぐに釣れるのか?!」

「そうです、今は釣りのシーズンに入りましたからね、

明日、ちょっくら行って釣ってきます」

「釣り……、ジョシュ、私もやりたい!!」


ジョシュアは苦笑いした。

「閣下、公務できているのです。それは却下です」

ソフィアの顔は、みるみる内に悲しそうになっていった。


「次の休日に、陛下に許可をいただけたら

お連れしましょう」

「本当か?!約束だぞ!!ジョシュ、約束だからな!!」

「はい、閣下」

そう言いながら、ジョシュアはソフィアの口元をぬぐった。


ここに来て2日しか立っていないのに、

もはや、近衛も騎士も村人も、ジョシュアが世話を焼いても

誰も驚かなくなっていた。


村人の前では、さすがに言葉遣いを変えるジョシュアだが、

王宮の人間しかいなくなると普段通りだ。

侍女長もオーリーも気にしないので、近衛も騎士も順応は早かった。


 楽しい晩餐は、ソフィアの活力になっている。

普段、自分が聞くレストランではなく、食堂の話し、

道に立ち並ぶ屋台の話し、

武器屋で自分の望みの物を見つける楽しみ、

1人は家族を持っているので、子供のおもちゃの店の話し。

どれも行ってみたくてしょうがない。


ソフィアは早くこの件を片付けて、日常に戻ってやると

意気込んでいた。


 そんなソフィアの湯あみが終わり、

侍女長に呼ばれてジョシュアはソフィアの髪を乾かしていた。

ジョシュアは、指先をならすとソフィアの髪がフワッとたなびく。

出来上がりだ。

あとは香油をつけて、たんねんに梳かして行けば良い。


その間に侍女長は、ソフィアの部屋を整えていた。


ソフィアは、ジョシュアにおねだりをした。

「ジョシュ、皆、もう寝るだろう?

そこのベランダで、ジョシュのコーヒーが飲みたい」

ジョシュアは笑って答えた。

「コーヒーは刺激が強いから、ハーブティなら良いぞ。

どうする?」

「そうか、じゃあそれにする」


ジョシュアは、台所に行きポットを用意した。

ハーブは……。

少し考えて、リラックス効果があると言われている

ハーブにする。


ポットに入れ、お湯を注いで少し蒸らせば完成だ。

トレイにティーセットを乗せ、ソフィアの元に戻った。


ソフィアはブランケットを羽織り、準備万端だった。


ベランダのテーブルに、クロスを引いてやり、

ランプを灯す。

ソフィアをゆったりと座らせた。

近衛はジョシュアの指示通り、

ベランダでソフィア達を背に、

部屋からの侵入者に対応するため、待機していた。


「ソフィ、ほら入れてきたぞ」


ソフィアはジョシュアからカップを受け取ると、

胸いっぱいに香りを取り入れた。

「良い香りだな」

そう言うと、一口飲む。

「味は、普通のお茶に近いのだな。飲みやすい」


ジョシュアはソフィアの隣に座り、自分もハーブティを飲んだ。

ゆっくりと飲むソフィアを眺め、微笑んだ。

嬉しそうな顔をするジョシュアをみて、ソフィアは首を傾げた。


以前より、はるかに笑顔が増えたジョシュア。

幸せそうに見えるが、果たしてそうなのだろうか?


グリフォン以外は、感情を読むのが大変だな……。

ソフィアはそう思って、ジョシュアに話した。


「ジョシュ、お前がグリフォンだったら私はお前のことが

もっと分かるのにな」


ジョシュアは、一瞬固まり、クスクスと笑い出した。

「ソフィ、俺のことを理解してくれるのは助かるが、

グリフォンでは結婚できないだろ?それは困る」

「そうだな、確かにグリフォンでは結婚できんな……」

ソフィアは真剣に悩み出した。


オーリーが見ていたら、盛大なため息をついただろう。

ジョシュアは、それを考えると可笑しかった。


「もっとお前が何を考えて、どう感じているのか知りたいのだ。

グリフォンは話さずとも分かる。私には、それがとてもラクなのだ。

人によっては根掘り葉掘り聞くわけにはいかんだろ?

推察すると言うのは、しやすい者と、そうでない者がいる。

苦手なのだ」


それを聞いたジョシュアは、カップを置き微笑んだ。

「ソフィ、心配するな、お前は推察が得意だ。

ちゃんと色々な人を見ている。

グリフォンに近づいてもらえるお前は、きちんと人の気持ちを

考えているよ」

「そうか?でもジョシュが考えている全ては分からない」

「大丈夫だ。お前は俺の事も、きちんと考えている。

ソフィ、全て分かるのは無理だ。だって人も個性というものが

あるからな。それを尊重すれば、全てが分からずとも

気持ちの良い関係になるだろう?」

「うん……、そうなんだが……」


珍しく、ソフィアは歯切れが悪かった。

ジョシュアは、優しく頬をなでた。

「そうだな、でも……それでも知りたい時は

聞けば良いんじゃないか?

ソフィ、お前は何が聞きたい?」


「……ジョシュ、お前、私が怖くないのか?」

「怖い……??……ソフィ、なぜそう思った……?」

「グリフォンと意思を疎通させることができる私を

怖いとは思わないのか?」


そう聞いたソフィアを、ジョシュアは自分の膝の上に

優しく抱き寄せた。

「なぜそれを怖いと思うのか、俺にはさっぱり分からん。

ソフィ、俺がグリフォンと話せたら怖いのか?」

「いいや、怖くはない。むしろどうやって話すのか

知りたい」

キッパリと言い切ったソフィアに、ジョシュアは笑い出した。


「俺も同じだ。グリフォンが許してくれるなら

俺も話してみたい」

そう答えたジョシュアを、ソフィアはジッと見ていた。

「お前、……本当に怖くないんだな……」

「そうだな、怖くない。怖いと思う意味が分からん」


ジョシュアは、ソフィアの頭をソッと自分の胸へ抱き寄せた。

このまま腕の中で抱き留め、離したくない。

……でも、それではソフィアの息が詰まってしまうだろう。

我が愛しの姫は、自由が誰よりも似合うのだ。

ソフィアの髪を、しばらく撫でて言った。

「ソフィ、これからも何でも答えてやる。

分かったな?」


ソフィアは、自分が怖くないと言われ安心したのだ。

ジョシュアの胸にもたれかかり、ウトウトし始めていた。

「うん、分かった」


警護の近衛は、自分の背後で起きる甘い時間に

生真面目な表情を崩さぬよう必死で耐えていた。

王都にいて会えない自分の恋人を思い出しそうになり、耐えに耐えた。


クソッ!!朝になったらオーリー隊長に、目一杯褒めてもらおう。

隊長はガタイに似合わず優しいから、俺の忍耐力を褒めてくれるはず……!!


近衛は、それをご褒美に何食わぬ顔で警護に励むのだった。

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