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俺の閣下  作者: テディ
本編
37/186

第36話 観客

 ソフィアは、満面の笑みで晩餐にありついた。


確かに美味しい。素材を獲れたてで使うと

こんなに味が違うものなのか。


食卓についた全員が、感じるほど素材の味が引き立っていた。


「おかみ、皆、美味いぞ!!」

ソフィアが台所に声を掛けると、中から笑い声が聞こえる。

料理自慢の者達は、満足そうに顔を出した。


「姫様、良かった!!明日も楽しみになさってください。

今、仕込みをして片付けたら、お暇いたしますね」

「手数をかけるな。すまない。

でもとても美味しいのだ。悪いが頼む」

「もちろんですよ!!そんなことおっしゃらず

楽しんでくださいませ、姫様」


警護の者達には、美味しい料理の他に、

もう1つ呆気にとられることがあった。


ソフィアの隣にいるジョシュアが、甲斐甲斐しくソフィアの世話をする。


いつも聞けない世間話に、ソフィアが夢中になっている。

それは話す者にとって、とても嬉しいことだが、

ソフィアはグラスから手を離したり、カトラリーが

飛んでいきそうになっているように見える。

ひょっとしてソースも垂れた気が……。


気のせいか……??


いや……気のせいではなさそうだ……。

チラッと給仕に回ってくれている侍女長を見たが、

どうも気にしていない気がする。

それどころか、ソフィアの世話をジョシュアに任せっきりで

自分たちの給仕に集中している気もする。


そう思っていると、またソフィアのグラスをキャッチした

ジョシュアを見た。


「ソフィ、楽しいのはわかるがグラスは持ったら離すな」

そう笑ってソフィアの手にグラスを持ち直させる。


「ん??離したか??」

「離したぞ」


ジョシュアの優しい眼差しに、誰もが思った。


あれは、影の魔王なのか……??

同一人物か……??


今度はチラチラとオーリーに視線をやり、

助けを求めた。


オーリーはニヤリを笑い、ほっておけと

顎をクイッっと動かした。


どうやら、ジョシュアが求婚したというウワサは

本物らしい……。破天荒と聞いていた

魔法大臣閣下もウワサ通り、良い意味での破天荒だ。


さすがオーリーが選出した、感情の出ない優秀な

騎士と近衛。表情には出さず、食事を楽しむようにした。


ただ後日談としては、相当な努力が必要だったようだった。



 何事もなく一夜が明け、ソフィアは散歩と言って

今日は林の奥まで行くことにしていた。


相変わらず、目覚めの儀式が行われており、

侍女長は、ジョシュアの手助けをするべく

脇で控えていた。


交代で引き継ぎを終えた、オーリーが顔を出し、

そして瞬時に固まった。


オーリーは普段、ドアの外で待機、または外を向いて

警護する。だから室内や、警護対象をマジマジとみる職務ではない。


初めて見た、目覚めの儀式に固まったのだ。

脇の侍女長をみる。


「おはようございます、オーリー様」

「お……おはよう、侍女長殿……。

あの……つかぬことを伺いたいのだが……」

侍女長は、首を傾げた。

「何でございましょう?」

オーリーの口は開きっぱなしになっている。

「……ジョシュは、毎朝、ああやって起こすのですか……?」

「さようでございます。でも……」

「でも……??」

「僭越ながら、先日ジョシュア様に個人的ではございますが

私の意見を述べさせていただきました」

「……意見……?」

「ソフィア様相手では、溺愛の度合いが足りのうございます。

もっと存分におやりくださいませと進言させていただきました」

「……足りない……?」

「はい。さようでございます。最近侍女達が、

お2人の様子を拝見し身悶えしますので、仕事に差し障りますが

仕方ありません。私の大切なご主人様はソフィア様ですので」


オーリーは2人を、もう一度見た。

ジョシュアは、ソフィアを抱き起こし

自分の腕の中に納めて、もはや額やら頬やらへ

キスを落としまくっている。

ソフィアはムニャムニャと、ジョシュアの胸へ

くすぐったそうに頬擦りしている。


「……侍女長殿……あれでも足りないのか……?」

「ええ、足りのうございます」


侍女長は、あっさりと言った。


分かってはいたが、ソフィアは手強い……。

オーリーは友人達の顔を思い浮かべた。

女性陣は大笑いしそうだ……。

まあでも、過去最強力の援護者は

ここに見つけたが……。


オーリーは、ここぞとばかりに幸せと独占欲を満たしている

ジョシュアの幸せそうな顔をながめた。


……まあ良いか……。


驚愕しながらも、そう思うのだった。

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