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俺の閣下  作者: テディ
本編
36/186

第35話 恵み

 午後に騎士が5名到着したおかげで、先着隊の近衛は

警護が断然しやすくなった。皆で余力を持ってあたれるように

相談を重ねる。


ソフィアの警護は日中、オーリーが。

夜間は近衛2人が交代で受け持つことにし、

その他、侍女長と小屋の警護に交代で騎士達が当たることとなった。


村の長の妻と、料理を作るのが自慢の男が2人やってきて、

晩ご飯の準備に入ってくれた。


ソフィアはとても喜んで、作業を見たいといい、

台所のすみに椅子を置き、ニコニコ眺めていた。

オーリーが張り付いているので、

ジョシュアは2階の自室で、王宮内での仕事のチェックをする。

今のところ、魔法省はいつも通りだった。


下に降りると、和やかな会話が聞こえる。

「姫様、珍しい材料ではないのですよ?

お口に会えばよろしいけど……」

「そうですよ、姫様。ただ全部とれたてだから

新鮮さは自信があります」

「そうなのか?でもとても良い香りだぞ?

何か香辛料を使っているのか?」


ガハガハと男達は笑いながら説明していた。

「これはハーブ、薬草でさあ」

「なんの効果があるんだ?」

「ジビエはとれたてですからね、肉の臭みをとるのに

使うんですよ」

「そうなのか……。そんな役割もあるのだな」

「こっちの半分は漬けダレに漬け込んでおきます。

明日の晩ご飯の頃においしくなってますよ」

「残ったタレは、野菜を炒めるのに使うんですよ。

今日はサラダですけど、明日に野菜を炒めるのに

使えるんです。

もったいないですからね」


「こっちの削ぎ落とした肉は細かく刻んで、香草と混ぜます。

香草も刻むんですよ。塩と胡椒も入れて一晩寝かせます。

腸の皮につめてソーセージ にするんです。

酸っぱい果実のジュースを少し入れるとさっぱりと食べられます」

「残った骨は、もうこれ以上お肉をそげませんので、

ネギの青いところ、ハーブと一緒に水で煮込みます。

アクを丁寧にとるのがコツです。それをこして

ミルクを入れてジャガイモをすりおろせば

とろみのついたミルクスープの出来上がりです」


「……何日分もの食事が出来るのか?!

すごい量が獲れたのだな!!」

「姫様、ジビエは自然からの贈り物ですからね。

無駄にはできないんですよ。多い場合は

こうして日持ちするように加工して保存庫へ入れておくんです」

「次はいつ贈り物があるかわかりませんからね」

「今回はジョシュア様がいらしていますからね。

冷凍庫もできますから、大助かりですよ」

そう言って3人は笑いながら、あっという間に

野菜料理、メイン、スープ、パンを用意して行った。

「ジョシュア様、保存庫に氷をお願いします。

それから味見を」

長の妻は、ジョシュアが自然に毒味できるように

気を使ってくれた。


ジョシュアは笑いながら保存庫へ行った。

バケツに水を出し、凍らせると中にいれる。

これで自然の贈り物を無駄にせずに済むだろう。


「こんな美味しそうな料理を1番に食べて悪いな」

ニヤリとすると、全てを一口ずつ食べていく。

ソフィアが、我慢できないとばかりに目をキラキラさせていた。

「ジョシュ、美味しいか?!」


ジョシュアはもう一度、ニヤリとした。

「当たり前だ。美味いに決まっているだろう?」


それを聞いてソフィアは手を叩いて喜んだ。

「やった!!熱々の料理だ!!

おかみ、もうテーブルに並べても良いか?!」

「ええ、姫様。もちろんですよ。

食卓の準備をしましょうね」


そこで侍女長がやってきた。

彼女にしては珍しく柔らかく笑うと、ソフィアに言った。

「ソフィア様、お座りください。ここからは私の出番でございます」


ソフィアは天井を見て、少し考え笑った。

「そうだな。私がやってこぼしたらもったいない。

大人しく座っていよう」


食卓には子供達にもらった花が、可愛らしく生けられていた。


テーブルに並べられる料理に、ソフィアが目を輝かせていた。


やったっ!!熱々だ!!湯気が出ている!!


普段の料理、ソフィアは暖かいものを食べることができている。

シェフ達の努力の賜物だ。

でも、この地では料理を直に見て、出来立てを

すぐ隣の部屋で食べることができる。


ソフィアの幼い頃からの楽しみの1つなのだ。


ジョシュアは、そんなソフィアに笑って、

手の空いている者、皆に座るように声をかけた。

騎士も近衛も驚いている。


ソフィアは笑いながら言った。

「良いのだ。皆で席につける機会は少ない。

せっかくの機会だからな。色々な世間話が聞きたいのだ」


騎士も近衛も顔を見合わせ、困り果てたらしく、

オーリーを見た。


オーリーは笑いだし、気楽にしろという。

「悪いな、俺の友達はざっくばらんなんだ。

誰よりも王族らしくなく、誰よりも王族らしいんだ。

慣れるまで頑張ってくれ」


ジョシュアも助け舟を出した。

「戸惑うののはわかるが、これが大臣閣下でな。

魔法省の閣下の執務室は、皆で休憩を取る。

下町の流行っている店から、新しくできた料理屋、

屋台まで何でも話題に乗るのだ。

魔法省だけでしているのでな。知らなくて当然だ。

君たちも市井の話題を持っているだろう?

魔法省で武器屋の話が出ることは少ないし、

街中の酒場の話が出ることもない。

閣下は、嘘偽りない話が必要なのだ」


近衛達も騎士達も顔を見合わせた。

「では、大臣閣下、失礼して座らせていただきます」

「うむ、早く座れ。楽しみだ、料理がアツアツなんだぞ。

お前達の話も楽しみだ」


グラスには、獲れたてのフルーツのジュースが

並々に注がれていた。

さすがに遠征中に、アルコールは出ない。


ジョシュアが、オーリーを見た。

「オーリー、先に悪いな」

「俺はあとで、たらふく食ってやる。

ほら、ソフィがよだれをたらしそうだぞ」


オーリーは豪快に笑った。

ジョシュアがグラスを取る。


「大地の贈り物に」

グラスをあげ、ソフィアの待ちに待った

晩餐が始まったのだった。

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