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俺の閣下  作者: テディ
本編
35/186

第34話 方針

 ソフィアの様子は、いつもと違った。少し気分が沈んでいるようだ。

滅多に無いことだ。普段は好きなことを仕事にしているため

好奇心の塊で、楽しい話が好きだった。


「ソフィ、もう一杯コーヒーを飲むか?」

「いいや、もう良い」


ただ魔具をいじりながら、座っているソフィアに

ジョシュは、それ以上声をかけなかった。

隣に椅子を置き、座って本を読み出した。


10分ほど経った時、ソフィアがポツポツと

話し出した。


「ジョシュ、グリフォンが哀しんでいる」

「……そうか」

「あんなグリフォンは初めてだ」


ジョシュアはページをめくる手を止めた。

そしてソフィアの前に、もう一度ひざまづいた。

「お前は、グリフォンの感情も感じとるんだな」

そう言って、頬を撫でた。


「ジョシュ、グリフォンはな、明るい性格なのだ。

伝説にあるような、乱暴さは無い。

皆にそれを分かってもらいたい」

「……そうか。ではまず俺が信じよう。

そして信じる者を増やせば良い。

ソフィ、心配するな。今はグリフォンの気持ちに

連動しているんだ。お前の明るい気持ちを伝えてやれ」


そう言われたソフィアは、目を見開いてジョシュアを見た。

「私の明るい気持ち?」

「そうだ。お前がグリフォンの感情を感じるなら、

グリフォンもお前の感情を感じるだろう?

だからグリフォンに伝えてやるんだ。大丈夫だと」


ソフィアは急に視界が開けた気持ちになった。


ああ、そうだ。私がしっかりせねば……。


ソフィアは、顔をあげた。

「分かった。ジョシュ、そろそろ時間だ。

父上と話す」


そう言ったソフィアの顔に、もう迷いはなかった。


ジョシュはスゥァフェ・ドォを準備した。

ソフィアが水面を覗き込む。


「父上」

そう声を掛けると、父王が厳しい表情で姿を現した。

「ソフィア、ご苦労だった。側にジョシュアはいるのか?」

「はい、側にいます。父上、お聞きしたいことがあります」

「うむ、そうだな」

「ガザンは、いったい何が目的なのですか?」

「ルークから報告は?」

「概要は……。まだ憶測の域を出ないと聞いています。

他の国にも依頼が行っていたのですか?」

「どうやら何カ国かに依頼があったようだ。

ソフィア、我が国のグリフォンの生態を掴んでも

正直に相手国に伝えなくて良い。

ガザンが何を考えているのか分からないからだ。

我々が考えているよりも長い期間の計画かもしれん。

それに乗るわけにはいかぬ。分かるな?」

「はい。なんとしても自然のままに戻さねば。

我らはグリフォンが何を食すかも知りません。

そんなこと、考えたこともありませんでした。

父上はご存知ですか?」


聞かれた父王は笑った。

「ソフィア、私も知らぬ。いいか、別に知らずとも良い。

知らずとも良いのだ、ソフィア」


そう父に言われて、ソフィアはホッとした。


「ソフィア、調査は1週間。伸ばさずとも良い。

報告も城に帰還してからで良い。

情報は漏らすな。間者の人数は増やした。

お前達を守るというよりも、不審者が入国

していないかを確認するためだ。

どうなっているのか分かっても分からずとも

それで良い。グリフォンに任せるのだ。

彼らに、その意思があれば、お前は大体のことが

分かるだろう」


ソフィアは落ち着きを取り戻した。

良かった、やはり人はそのままで良いのだ。


「はい、父上」

「ソフィア、忘れるでない。

グリフォンは他意のないものしか会えぬ。

会う資格がないのだ。我らは、ただ自然のままに

歩けば良い。グリフォンの意思があれば

その恩恵に預かれるであろう。

国民を慈しみ、自然を慈しみ、困難があれば

立ち上がり、悪意には乗らないように努力する。

我らができるのは、ただそれだけだ」


ソフィアは、やっと微笑んだ。

「はい、父上。では散歩をすることにします。

運が良ければ、会えるでしょう」

「そうだ、それで良いソフィア。

ところでジョシュアと話がしたい」

「ジョシュと?はい……、ジョシュ

父上がお呼びだ」


ジョシュアは、静かに姿を現した。

「はい、陛下。ここに控えております」


国王は笑顔だった。

「ジョシュア、聞いておったな?

すまんが普段はお前の魔力が頼りだ。

ソフィの魔力は、いざというときに取っておかねばならん。

負担をかける。体調に気をつけてくれ」

「ご配慮、ありがとうございます。御意にございます」

「オーリーに、依頼を受け取ったと伝えてくれ。

午後には騎士を増やせるだろう」

「承知しました。申し伝えます」

「ソフィア、忘れるな。そのままで良いのだ。

それがお前の任務だ」

ジョシュアが一歩下がり、ソフィアは水面に写った。


ソフィアは笑顔で答えた。

「はい、父上。わかりました」

「では、1週間後」

「はい、父上」



水面から魔力が消えていく。

父からの助言でソフィアはしっかりと前を見ることができた。


ジョシュアを振り返り、奥に警護しているオーリーの背が見える。

大丈夫だ。大丈夫、大切な人たちがここにいる。

皆で守らねば。


そう思い、ソフィアは声をかけた。

「ジョシュ、まだまだ父上には敵わんな」

「そうだな、さすが我が国王。誇らしくなるな」


ソフィアは快活に声をかけた。

「オーリー、ジョシュの手が空くぞ。

休憩をとれ。コーヒーは冷めてしまったか?

私が入れてこよう」


今にもスキップしそうなソフィアを、

オーリーは慌てて止めた。

「待て、ソフィ!!大丈夫だ。コーヒーは入れなくて良い。

冷めてても気にするな。夜に交代で警護するから

その時に暖かいのは飲める。


ソフィアは、だいぶ前にコーヒーの粉を入れすぎて

誰も飲めなくしたのだ。


ソフィアは、いつものように膨れた。

「私にもできる!!」


そんなソフィアにジョシュアは笑うのだ。

「そうだなソフィ、お前にもできる。

でも警護の必要のない時に、俺と入れよう。

その時まで披露するのは取っておけ」


ソフィアはポカンとしてジョシュアを見た。

「分かった!!そうする!!」


やった、皆 見てろよ。私だって出来るぞ。


ソフィアは、チャンスを待つことにしたのだった。

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