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俺の閣下  作者: テディ
本編
33/186

第32話 揺らぎ

 ソフィアは、村を少し歩きたいと言った。

村のはずれにある、林の前まで行きたかった。


その林の奥は、聖動物が暮らしていると言われている山があり、

その林の道を抜けると、さらに山道がある。


ソフィアは幼い頃から、やたらとグリフォンに好かれた。

王族の中でも、類を見ないほどだ。


グリフォンは大きい。そして高地で暮らしている。

誰の手も届かない所だ。

食べ物はよく分かっていない。伝説では家畜を襲うと言うが、

実際にふもとの村では、そんな事実はなかった。


「グリフォンが何を食べているかなんて、

気にしたことがなかったな」


そうソフィアはポツリとつぶやいた。


ジョシュアとオーリーは、黙ってついてきていた。

グリフォンに関しては、ソフィアに任せるしかない。


ジョシュアは1回だけ、小さい頃にソフィアの脇にくっついていて

見たことがある。毎回、ソフィアの側にいる為に遠征にきていたが

それでもその1回だけだった。

あれはまだ5歳くらいの時だった。

ソフィアは驚いたジョシュアの手を引き、

動くなよと言って笑って立っていた。

それだけでグリフォンが寄ってきたのだ。


それはジョシュアを感動させた。

グリフォンは嬉しそうにしたのだ。

もうグリフォンがどんな表情だったか正確には思い出せない。

でも、笑った、グリフォンが笑ったと思ったのだ。


それ以来、ジョシュアはグリフォンに会えていない。

オーリーは一度も会えていない。

俺はガサツだからイヤなのだろうと笑っていた。


実際にグリフォンに会えたとして、安全を守れるのはソフィアだけだ。

いつもとは正反対の事態が起こる。下手に動いては

ソフィアの安全にも関わるのだ。


ジョシュアはオーリーにつぶやいた。

「ここに来ると不思議な気分になる。

少し空気が違うんだ。……気のせいか?

自然と口数も少なくなる」

「……そう言えば護衛で来るとは言え、

俺もあまり話さなくなるな」


2人でそんなことを話しているそばから、ソフィアが何かにつまずいた。

何事もなかったかのように、ジョシュアはソフィアを片腕で抱き抱え、

体勢を立て直してやった。


それを見てオーリーは少し気分が軽くなった。

そして笑ってジョシュアに言った。

「ジョシュ、大丈夫だ。ソフィは変わらん」

それを聞いてジョシュアも笑った。

「そうだな」


村を歩いていると、子供達がソフィアを見つけて

喜んで手を振っていた。

「姫姉様ーー!!いつ来たの?!」

「お土産はある?!」

「姫姉様!!今度の休みに遊んでーー!!」


親が慌てて止めるのも聞かず、皆嬉しそうに手を振っていた。

ソフィアは喜んで答えていた。


「今日、来たんだ!!土産もあるぞ!!

次の休みはいつだ?!勉強はしてるのか?!」


そう言って、休みができたら遊ぶ約束をしていた。


村人は、その声につられて仕事の手を止め、

嬉しそうにお辞儀していた。


その楽しい声を通り過ぎ、15分ほど歩いただろうか。

人の気配もなくなり、もう少し行くと林の入り口だ。


急に、ソフィアは立ち止まって2人を静止させた。


オーリーはソッと剣に手をかけ、ジョシュアは魔力を高める。

ソフィアは、その行為を止めるように言った。


「2人ともダメだ。攻撃の気配を消せ」


ソフィアの表情は、静かで、そして困惑したものだった。


ジョシュアは、静かに尋ねた。

「ソフィ……?」


ソフィアは、大きくため息をついた。

「林の奥に集団がいる。……山奥にもいるはずだ。

なぜこんなに大群が……?」


ソフィアは哀しそうだった。


オーリーとジョシュアは顔を見合わせた。


ソフィアは王族の顔に戻った。普段ジョシュアがいなければならないとは

思えないほど冷静に判断していく。


緊急事態だ。


「ジョシュ、今日は戻る。少し気配を感じられればと思ってきたのに、

それどころではなさそうだ。戻り次第、ルークと話す。

スゥァフェ・ドォの準備をしてくれ。父上とも話す」


そしてオーリーを見た。

「近衛でも騎士でも良い。魔力が高く、

戦闘できるが感情的でないものを5名、選出してくれ。

至急、そしてその手配が気取られぬよう、こちらへ来るように。

王都の警備に不備が出ぬように。不備が出るようなら

3名選出だ。村人の安全に問題はないと思う。

今の所、ただの備えだ」


ソフィアは、まっすぐ前を見て元来た道を

戻り始めた。


ジョシュアとオーリーは、静かに主人の後を

ついて行った。

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