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俺の閣下  作者: テディ
本編
31/186

第30話 出立

 今朝は快晴だった。

ジョシュアは、もはや慣れた手つきでソフィアの頬を撫で

朝の目覚めの儀式を行っている。ちなみに目覚めの儀式と

侍女達が名付けたらしい。


「ソフィ、ソフィ…」


どこか遠くから聴き慣れた声がする。

ソフィアは、その気持ちの良い所へ頬を擦り付けた。


……ああ……あったかい……。

もう一眠り……。


今度は、もっとハッキリと囁く声がする。


「ソフィ、朝だぞ。ほら、朝食だ。今日は何か好物があるか?」


……そうだ……シェフが、ベリーのスムージーを作ってくれると……


「そうか、ソフィ。いらないのか。残念だな。

もったいないから俺が頂こう」



「ジョシュ、だめだ!!ベリーのスムージーは私が飲む!!」



ソフィアのやっとのことで開いた目の前に

ジョシュアの瞳があった。


ああ、綺麗な漆黒だな。中に光が見える……。


「ジョシュ……、お前 日に日に近くなってるぞ?」

「そうか?」


ジョシュアは笑って、ソフィアの額にキスを落とした。

自分の腕に抱き起こし、挨拶する。


「おはよう、ソフィ。今日はベリーのスムージーなんだな?」


ソフィアはジョシュアの胸に頬を摺り寄せ、あったかいなと思っていた。


「おはよう、ジョシュ。そうなんだ。

シェフが、だいぶベリーも実が大きくなってきていると

話していた。これから甘酸っぱくなるそうだ」

「そうか、良かったな。さ、急ぐぞ。今日は陛下にも

挨拶せねばならん。オーリー達も、もうすぐ来るぞ」


そう言って抱き抱え、相変わらず身悶えしている

侍女の脇に座らせる。


「さ、ソフィ。目覚めの時間だ」


そう言って浴室を下がった。


ソフィアは隣の侍女を、心配そうに見ていた。

そして周りも見る。


……皆、具合が悪いんじゃないだろうな……?


侍女長だけは、いつも冷静に見えるが、大丈夫だろうか?

首を捻ったところに、侍女長から声がかかった。


「ソフィア様、ご心配なく。湯あみの時間です」


ソフィアは、寝る前も湯あみするのだが、目を覚ますために

朝も湯あみすることになっていた。

皆が面倒だろうから、どちらかで良いと言ってあるのだが、

皆が、なんの手間でもありませんと力説するので、

こうなっているのだ。


さっぱりして、デイドレスを着せてもらった。

ソフィアは現地では馬で移動したいから、乗馬用の服が良いと言ったのに、

ルークに却下された。

いくら転移魔法を使うとはいえ、村人に姫と思われないのは

安全上困ると言うのだ。

確かに、刺客も心配だが、田舎町で村人は住人の顔を全員知っている。

ソフィアがいることを周知させ、不審者の情報が

すぐにオーリー達に上がるようにしないと、警護の面でも困ると言う。


……ルークめ……手強い……。


結局、髪も化粧もしなければならない。

ソフィアは納得するしかなかった。



ベリーのスムージーを飲み、

ご機嫌になったソフィアは、ジョシュアのもとに帰ってきた。


ジョシュアは留守の間、他の近侍に預ける仕事を確認して、

戻ったところだった。


「ソフィ、今日は身軽だな。まあ、いつもよりは身軽なんだから、

そう悪いことばかりでもないぞ」

「良いんだ。現地に行ったら、もっと身軽になる」


父に挨拶を済ませ、自身の執務室に皆を集める。

見送りの筆頭、ルークが王族の礼を持って深々とお辞儀した。

「魔法大臣閣下、どうぞお気をつけて。

無事のご帰還を皆で祈り、お待ち申し上げております」

「あい分かった。皆、留守中のことは頼む」


それを聞いて、ジョシュアは手を高くあげ、手のひらを下にむけた。

皆と荷物の足元に、紋様がいくつか浮かび上がり、下から光が差してきた。


「ジョシュ、頼んだぞ」

「分かった」


ジョシュアがそう言うと、音もなく つむじ風が巻き起こり、

光の粒が、シャワーのように降ってきた。


転移魔法。これがジョシュアの転移魔法だった。

残ったのは、小さな風と、光の粒。


こうしてソフィア達は、視察に出かけたのだった。

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