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俺の閣下  作者: テディ
本編
30/186

第29話 魔力

 あれからジョシュアは、仕事以外の時間

ソフィアを溺愛する事が楽しくてしょうがなかった。

あっという間に王宮中にジョシュアが求婚したことが広まり

好都合だった。


まあ、実家から呼び出され両親と長兄に

早く報告しろと、こっぴどく叱られたが……。


そして、人々が驚きを持ってウワサしていたのは、

ソフィアが断らなかったという点だった。

返事をしていないことは、もちろん皆が知っていたが、

断ってもいないことが人々を驚愕させていた。


……まったく……どのほどのスピードで縁談を断っていたんだか……。


返事を待っている身なのに、ジョシュアは楽しかった。

少し前まで、ソフィアを失うのではと怯えていた自分が

おかしいくらいだ。もっと早く溺愛すれば良かった。


一方のソフィアは、変わらずリリー達に助けてもらい

自分研究をしているらしい。


モリンが笑いながら言っていた。

「ジョシュ、焦っちゃダメよ。相手はソフィなの。

以前よりだいぶ良いように思うけど、

たぶん自分の気持ちに気がつくとしたら、

ソフィにしかできないような方法だわ」


ジョシュアはアテにせずに待つことにしていた。


そして視察の準備中に、めいいっぱい溺愛することにしていた。

手伝うのは侍女長だから、もう存分におやり下さいというくらい

達観していた。さらに侍女長は、それではソフィア様には足りませんと

いう始末だった。


当のソフィアは、魔法書と魔具をテーブルとデスク、挙げ句に

床までいっぱいに広げて

全てをコントヌールと呼ばれる、魔力が強ければ強いほど

沢山の物が入れられるという、小さなバッグに入れようとしていた。


ジョシュアは、笑いながらソフィアを後ろから抱きしめ、

魔具を入れようとする手をとった。


「待て、ソフィ。お前、

いくらなんでもその量はないんじゃないか?」


ソフィアは、ん??と下からジョシュアの顔を見上げた。

「昨日、半分に減らしたんだぞ?コントヌールを持っていくから、

もっと入れられるけど、我慢したんだ」

「そうか、我慢したのか。でもな、ソフィ。もっと減らせば

村で見つけた珍しいものを持って帰れるかもしれんぞ?」

「……ジョシュ!!そうだな!!実は欲しい魔石があってな!!

大きいんだ!!忘れてたっ!!」


ソフィアは床に座り込み、魔具を見比べて悩み始めた。


「ソフィ、床に座るもんじゃない。お前は姫なんだぞ?」


ジョシュアは笑いながら、両手に魔具を持ったソフィアを

抱き上げた。そしてソファーに座らせた。

「ソフィ、まずは目の前のテーブルから片付けるぞ。

左側は魔法書、右側が魔具だ。これを半分に減らす。

良いか?これがないと眠れないというものを選べ」


ジョシュアは、次々とソフィアに物を見せ

選択させた。次は床の上に広がっている物。

次は、ソフィアを抱き抱えデスク前の椅子に座らせ、

そこも選択させる。


あっという間に量は半分になった。


ソフィアは目の前の光景を見て、ジョシュアを見た。

「ジョシュ、お前魔法使いみたいだな。いや、

魔法を使わずにやっているんだから手品師か……?」

ソフィアの思考が迷走し出したので、ジョシュアは笑い出した。


ソフィアを抱き上げ、もう一度ソファに座らせる。

「ソフィ、お前 本当にこの量がないと寝られないんだな?」

「寝られない」

「分かった。ほら、コントヌールに入れろ」


ソフィアはパッと顔を輝かせて答えた。

「分かった!!」


ソフィアは座りながら、楽しそうに指先を動かした。

無詠唱で魔法を使える者は多くない。ソフィアとジョシュアを入れても

国内に数人。それほど難しいことだった。

ソフィアは入れたいものの全てを中に浮かせた。

するとコントヌールは小さなカバンとは思えないほど

大きな口を開け、それを綺麗に分類して飲み込んでいった。


これはソフィアにしかできない方法だった。というより、

マネができない。普通は1つずつ少量の魔力で入れていくのだ。

そして一般的な魔力では、こんなに量は入らない。

魔力の節約も、量も考える必要のないソフィアが、

一つずつ入れるなんて、めんどくさいからから編み出した方法だ。


昔、得意げにラクな方法を見つけたと

喜ぶソフィアに、オーリーが言っていた。


「……ソフィ……残念ながら、なんの参考にもならん……」


そして、なぜ参考にならないのかジョシュアが説明したのだ。

ソフィアの驚きようと言ったらなかった。

ジョシュアが、できるからだ。

なかなか信じないソフィアに、モリンが普通の入れ方をみせ、

中身を見せた。それは少し大きい要領のカバンくらいしかなく、

ソフィアは口をパクパクさせたのだ。


ジョシュアは、ソフィアがカバンにしまっている間、

持っていかない物をしまっていたので、

部屋はすっかり綺麗になっていた。


「ジョシュ、できた!!」

そういうソフィアにジョシュアは、苦笑いした。

「まだだ。お前、着替えは?せめて髪を整える道具くらいは

持って行ってくれ」

そう言って侍女長を見ると、もう一式をお盆に載せてやってきていた。


「ソフィア様、こちらはお着替え、寝巻きになります。

髪を整えるお道具は、こちらに。お化粧のお道具はこちらになります」

「ありがとう。動きやすい物を選んでくれたんだな。助かる。

化粧道具はいらない」


予想通りの答えだった。

侍女長はジョシュアを見る。ジョシュアは笑ってソフィアに言った。


「ソフィ、化粧道具は持っていくぞ。

急遽、誰かに合わねばならないときに必要だ」

「ええーー?!……でも毎日はいやだ」

「大丈夫だ。聖動物は香料が好きではない。

だから、毎日にはならないだろうと思っている」

「……分かった……」


しぶしぶ承知したソフィアに、ジョシュアは答えた。

「ほら、お前の着替えなどもコントヌールに入れてしまえ。

そうしたら完成だ。ほら、できただろう?

頑張ったな。その髪を解いてやろう。もう仕事はおしまいだ」


ジョシュアは、隣の部屋に行き、ソフィアを鏡台の前へ座らせると

髪をほどき出した。

ソフィアは、欲しいと思っている魔石がいかに

珍しいのかを、喜んでジョシュアに語っている。


楽しそうな自分の主人と、主人を心から思っているであろう人を見て、

侍女長は考えるのだ。

お付きは自分が行った方が良いかもしれない。


自分はジョシュアのやり方ではソフィアにとって

溺愛と言わないと思っているのだが、

最近の侍女達を見ていると、威力は充分らしく

身悶えして仕事にならない。


さて、ルーク様にもお伺いを立てないと……。


仲睦まじい自分の主人達を見て、お茶を入れることにしたのだった。

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