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俺の閣下  作者: テディ
本編
29/186

第28話 切替

 ジョシュアはソフィアを溺愛することが、

自分自身も心地よく苦痛ではないことを悟った。

むしろ楽しい。


なんだ、俺は尽くして甘やかすタイプなのか……。


我ながら、ちょっとどうかと思う。


ソフィアの後ろを、同じように颯爽と歩きながら

そう思っていた。


執務室では、ルークがすでに待っていた。

他の近侍に、お茶を出され優雅に座っている。


それを見て、ソフィアがとても嫌そうな顔をした。


ルークは爽やかに、ソフィアにやり返した。

「おはよう、ソフィ。おはよう、ジョシュ。

ソフィ、僕が原因じゃないんだから、

その嫌そうな顔をやめて」


「そうだな。すまんな」

嫌そうに答えるソフィアに、ルークは笑っていた。

「……君、全然 僕の話を聞いていないね?」


ジョシュアも笑いながら、ルークに尋ねた。

「すまんな、ルーク。閣下はこの案件をとても嫌がっていらっしゃるんだ」

「分かっているよ。でもジョシュ、仕事は甘やかしてはいけないよ?」

「分かっている。気をつけるさ」


膨れているソフィアを見て、ルークは決定事項を伝えた。

「ソフィ、日程が決まったよ。国内視察だ」

「ええーー!!もう?!嫌だ、早すぎる!!ルーク、早い!!」

「ソフィ、ダメだよ。陛下からの勅命だからね?」


父のことを出されると、もう何も言えない。

ソフィアは、せめてもの表現で、思いっきりふくれていた。


「ソフィ、陛下からも話があっただろう?

もう伸ばせないんだ。できるとすれば、調査期間を長くするか、

早く仕事を片付けるかの、どちらかだよ?」


ソフィアは、往生際悪くつぶやいた。

「……どっちもイヤだ……」


つぶやいたあと、ジョシュアを見る。


……むっ……これはダメな方だ……。

ソフィアは、にこやかに見えるジョシュアの顔を見て、

やっと諦めた。


「……分かった。行く……行くよ、行く!!」


ジョシュアが、さらに笑顔になった。

何だか、重石が乗ってくるようだ。


「閣下、良かった。分かってくださったのですね?

では私が詳細を聞いておきますから、閣下は皆が用意してくれた

書類に掛かってください」


ジョシュアの笑顔に、近侍達は幸せそうな顔をしていた。


さすが!!副閣下……さすがです……!!

何も言葉を発せず、閣下に了解させられるなんて……!!

……さすが、影の魔王……!!見習いたい……!!


近侍達の気持ちがあふれる表情に、ルークは笑い出していた。

「……ジョシュ……、やっぱり君がソフィに

張り付いていてくれないと困るよ。

まあ、でも……これ以上 魔王が増えても困るけど……」


ルークの肩は、まだ揺れていた。

「笑い事じゃないぞ、ルーク。毎回これじゃあ困る。

そうですね、閣下?」


笑顔で振り返られて、ソフィアは、思わず後ずさった。

「そっ…そうだなっ!!私は書類に目を通そう。

あとはジョシュが聞いておいてくれっっっ!!」

「かしこまりました。では書類は、よろしくお願いしますね?」

「まっ……まかせろ!!」


ルークは、クスクスとソフィアに言い聞かせた。

「ソフィ?ね、最初からやる気を出してくれれば

仕事が増えずに済むんだよ?」

そう言われて、ソフィアは渋々自分のデスクについた。


……ルークめ、覚えてろよ……。こうなったら

物凄い早さで、すませてやる!!!


猛然と書類に向かい出したソフィアに、ジョシュアは

しょうがないなというように笑った。


「さて、ルーク。こちらで打ち合わせをしてしまおう」

「そうだな」


2人は笑いながら、執務室にある応接セットで

話し出した。


決定していたことは、実にシンプルだった。

責任者はソフィア。補佐はジョシュア。

警護の者はオーリーを筆頭に魔力の強いものを3名。

ソフィアの世話をするために侍女を1人。


来週から、とりあえず1週間。

生息地のふもとの村に寝泊りし、遠征を繰り返す。


期間に関しては、なんとも言いようがなかった。

いつ出会えるか、王族でも分からないのだ。

出会えなければ、しょうがない。

隣国には、そう言って伝えればいいだけだ。

ただ、諦めるとは思えない。その場合は

長期戦になるだろう。


ルークは、少し引き締まった表情でジョシュアに助言した。

「ジョシュ、間者はつけておく。心配ないと思っているが、

用心の意味でね。ここからは、やってみないと

どう進むかは分からない。充分気をつけて」


ジョシュアは、静かに答えた。


「……分かった、ルーク。きをつけよう」

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