第27話 試み
ジョシュアは週の半ば、半信半疑ながらも
友人達の案を試すことにした。ソフィアに通用しないかもと思っているのに
皆の前で試すのがためらわれたのだが、カイもオーリーも
強く勧めるのだ。まあ、良いかと試してみることにした。
自分がカイたちと週末を過ごしている間、ソフィアは
リリー達と過ごしている。マイアの話では
気晴らしになっただろうと聞いているが、
詳しいことは教えてもらえなかった。
マイアはジョシュアに、諭すように指をふった。
「だめよ、ジョシュ。教えてあげるのは簡単だけど、
週末何をしていたのか自分で本人に聞きなさい」
マイアに、そう言われては、それ以上聞くことはできない。
迷った挙句、自分でやってみることにしたのだ。
その日は、例の如く朝からソフィアを起こすことになった。
さて、やってみるか……。
そう思い、ジョシュアはいつもと違う行動をした。
侍女が、何やら悶えている。
ソフィアはいつもの通り、すやすやとベッドの上で大の字だ。
ジョシュアはベッドに上がりこんだ。
ソフィアの頬を撫でながら、ゆっくりと声を掛ける。
「ソフィ、朝だぞ。もう起きる時間だ。ほら侍女が待っているぞ」
頬を撫でられたソフィアは、むにゃむにゃと気もち良さそうに
枕とジョシュアの手、交互にスリスリしていた。
ジョシュアはソフィアに覆いかぶさり、ソフィアの耳元で囁いた。
「ソフィ、起きろ。朝だぞ。お前のオムレツ、
俺が食べても良いのか?」
その一言に、ソフィアがガッと目を開けた。
「だめだ!!オムレツは私が食べる!!」
ジョシュアは笑い出した。
「そうだな、オムレツはお前の好物だからな。
目は覚めたか?」
そう言って微笑むジョシュアの顔は、ソフィアの顔の近くにあった。
「ジョシュ?なんだ?今日は顔がよく見える」
そう言われたジョシュアは、さらに笑い出した。
「そうだな、今朝はいつもより近いからな。
さ、目が覚めたか?」
そう言ってジョシュアは、ソフィアを抱き起こし
自分の腕の中に納めた。
「おはよう、ソフィ」
腕の中にいたソフィアは、ぽかんとして答えた。
「おはよう、ジョシュ。なんだ?今日は優しいな」
「そうか?たまには甘やかそうかと思ってな」
「……だったら、もっと寝かせてくれ……」
「それは難しいんだ。お前がいないとできない仕事があるんでな」
ソフィアは、笑っているジョシュアを見上げていた。
朝からジョシュアにくっついているなんて、不思議な気分だ。
ジョシュアの腕の中にいるのは、たいてい何かにぶつかる時だから。
……なんだか、暖かいな……。
そう想ってソフィアは無意識にジョシュアの胸に頬擦りした。
「ああ、ソフィいつまでもこうしていたいな。
……でもな俺の大切な閣下、そろそろ仕事の準備だ」
そう言って、ジョシュアはソフィアをかつぎ上げるのではなく、
自分の前に抱きかかえた。侍女達は、もはや悶えるどころではなく
歓喜の表情で、口をおおい身悶えしていた。
いつもの通り、浴室で控えている侍女の隣の椅子に
ソフィアを座らせる。
「ソフィ、目覚めの時間だ」
そう言って、浴室を下がって行った。
椅子に座らせられたソフィアはあっけにとられていた。
隣で、何やら小刻みに震えている侍女に聞く。
「おはよう。ジョシュは何か変な物を食べたのか?」
「……ソフィア様……!!……っっっ、愛です!!
愛ですよ!!」
ソフィアは、侍女を口を開けて見ていた。
……大丈夫か?……。
でもあたりを見回すと、お付きの者、全員が同じ表情をしている。
侍女長だけが、大きなため息をつき、首を降っていた。
ついに侍女長が、口を開いた。
「ソフィア様、湯あみの時間です」
そこからはいつも通りの朝だった。
支度を整え、朝食をとり、書類をチェックしている
ジョシュアの元に戻る。
うん、自分が寝ぼけていたのかもしれん。
ソフィアはそう思った。
「ジョシュ、待たせたな。支度ができたぞ」
そう言って笑ったソフィアに、ジョシュアは
書類をめくる手を止めて、顔をあげた。
……ん???……。
そのジョシュアを見て、ソフィアは少し驚いた。
……こんなに、精悍な顔つきだったか……???
その時のジョシュアは、窓から朝日を浴び、
いつもよりも力強く見えた。
……どちらかというと少年らしく、柔らかい雰囲気だった気が……?
ソフィアの中の、ジョシュアのイメージが少し変わって驚いたのだ。
背も手も、いつの間にか大きくなったしな。
また私が気がつかなかったのか……?
「ソフィ?どうかしたのか?」
動きを止めたソフィアを見て、驚いたジョシュアは声をかけた。
「いや……、お前、大きくなったんだなと思って」
それを聞いたジョシュアは、目を丸くしたかと思ったら、
クスクスと笑い出した。
「変か?」
「いや……、そうではなくて……、
さすが俺のソフィだ……」
ジョシュアは、まだ笑っていた。
ソフィアは、少し膨れた。
そんなに変なことを言ったのか??
でもジョシュアが笑っている。
その楽しそうな顔を見て、
まあ、いいか。
ソフィアは、そう思うのだった。




