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俺の閣下  作者: テディ
本編
26/186

第25話 変化

 休憩を終える前にと、書類をパラパラしていたら、

何やらキナ臭い話が、ジョシュアの元に

報告として上がってきていた。

ジョシュアは1枚の書類に、目を止めた。



これは……。


ジョシュアは考え込んだ。

例のグリフォンの調査だ。

近々に国内調査をしなければならない。


おかしいな……陛下にも確認したが

できるだけ日数を稼ぐようにとの話だったはずだ。

……ルークに確認しなくては……。


そう思ったところに、ルークの方から部屋へやってきた。

ジョシュアは、もちろん入るように良い、

ソフィアはこれ幸いと、手を止める。


ルークは、ジョシュアに目配せした。


ジョシュアはさりげなく近侍達に告げた。

「皆、午前中は大変だったな。30分ほど休憩を伸ばそう。

外で少し気分を入れ替えてきてくれ。

ああ、その前にコーヒーを3人分くれるか?

大丈夫、閣下はこのコーヒーを飲んだとしても

残業なしで帰宅できるようにしてくれるはずだ。

そうですね、閣下?」

「んっっ?!そっ、そうだな!!頑張るから休憩してこい!!」


ルークは、顔を下にむけて肩を揺らしていた。


コーヒーを用意した近侍達は、はあ、助かったと

喜んで休憩に出掛けた。


ソファーに腰掛けたルークに、ジョシュアは結界を張った後、聞いた。

「ちょうど良かった。ルークに確認しに行こうと思っていた」

「相変わらず美味しいコーヒーだね。そう、グリフォンのことだ」


それを聞いてソフィアは、はて?と首を傾げる。

「待て、その件は時間をかけてとなっていたはずだぞ?」

そう言ったソフィアの前に、ジョシュアは例の書類を出した。

「……これは……?誰の差金だ……?」


ルークは優雅にカップを手にして答えた。

「宰相閣下がね、いたくこの計画に関心を示していてね。

陛下は、あまり賛成ではないらしいが、押し通したらしい」


ソフィアは、ポカンとして笑い出した。

「宰相が?……彼はとても優秀だが、グリフォンには近づけんのに?」


ルークは、真面目な顔をしていた。

「近づけないからじゃないかな?それか、隣国と関係があるか」

「ここまで真面目に勤め上げて、父上の覚えもめでたい。

さらに欲をかいていると言うことか?」

「まだ何も分かっていないんだ。表面的には

彼が更なる野心を持っている兆候はない。

純粋な好奇心の可能性もある。彼は真面目に王国のために

尽くしているし、成果もそれを示している」


ソフィアは、しばらく考えていた。

「ジョシュ、私は聖動物は自然のままがいいと思っている。

あれは人知が及ばぬ生き物なのだ。だから考えつかんのかもしれん。

聖動物を、思うがままに操れると考える人間がいるのか?」


ジョシュアは、静かに答えた。

「いると思う。ただ、そいつはただの阿呆だ。

見たことも、触れることも許されぬ人間だと言う証拠だ」


ジョシュアの答えを聞いたルークは笑い出した。

「その通りだね、ジョシュ。僕もそう思うよ。

ソフィ、君は国内調査を終えたら、

隣国に手伝いに行くことになっているね。

どこの国か知っているかい?」

「しまった!!聞いてない!!なんてくだらないことに

時間を費やすんだと思って、聞いてなかった!!」


ルークは朗らかに笑い出した。

「やっぱりね。ジョシュ、君はソフィに張り付いていてくれなきゃ。

その国はね、ガザンだよ」


それを聞いたソフィアは、瞬間的にとても嫌そうな顔をした。

「あの無粋な国か……」


それは、ソフィアが結婚はしないとふれまわっているのに

婚姻の申し込みをしてきた国だった。


「どうしよう、吐きそうだ。だって婚姻の申し込みも

聖動物を狙ってかもしれないじゃないか……」


ルークは、表情を引き締めた。

「ソフィ、隣国の王族関係のことを

僕たちはあまり知らない。と言うより噂が多すぎて

もう一度調べ直さないと、精査できないんだ。

僕たちが仕事についてから、隣国を調べる必要はなかったからね。

かと言って上の世代に聞くには、個人の好意や悪意が入って

良くない気がする。陛下には、内密に間者を使ったほうがいいか

お伺いしている」


話を聞いていたジョシュアの笑みは深くなって行った。

ジョシュアは、怒りが強いほど笑顔になるようにしていた。

それは密かに、魔法省の影の魔王と通り名がつくほど

他の部署の者も、恐るくらいの笑みだった。


ソフィを利用する……。しかも婚姻も利用して……?

万死に値するな……。


そう思っていた。


そんなジョシュアを見ながら、ルークは続けた。

「陛下は、この問題は大馬鹿者が企んでいる可能性があるから、

ソフィ達の世代で、片付けるようにとおっしゃっている。

上は上で動くが、実働部隊は僕たちだそうだ」


それを聞いて、ソフィアはウヘッといった顔をした。

「もう……父上ってば……。面倒なことをこっちへ回して……。

要するにそれって、企みがあるとするなら首謀者は

大馬鹿者だから、お前達で充分だってことだろう?」


ジョシュアは1つ疑問を持った。

「ルーク、お前が動いているってことは、宰相閣下も

ご存知なんだよな?」

「もちろんそうだよ」


ルークは、全てのことを統括したり、調整する

総務省にいる。幹部候補のうちの1人だ。


「陛下は宰相閣下について、何かおっしゃっているのか?」

「あれは自分の腹心なのだと……」


ソフィは間髪入れずに答えた。

「では父上は宰相を疑ってはいない。父上のことだ。

念のため、もう本人を調べているはずだ」

ルークは、ため息をついた。

「やはりそうなんだね。僕もそう思っていた」

「宰相は、私が思っているよりも聖動物への

憧れがあるのかもしれんな。

ただ、ルークとしては、

それを鵜呑みにして動くわけには行くまい?

厄介だな」

ソフィアはカラカラと笑い出した。


ルークは、微笑んだ。

「ソフィ、笑い事じゃないよ。今回の件の責任者は

君なんだからね?」

「……?!ルークじゃないのかっ……?!」


ジョシュアは思わず、怒りではない笑顔になった。

「ソフィ、王族が絡んでいる以上、お前が責任者だ」

「ええーー?!……いやだっ……!!

魔法にかける時間が減るじゃないかっ!!」


プリプリと駄々をこねるソフィアを放っておいて、

ジョシュアとルークは、当面の動きの打ち合わせをするのだった。

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