第24話 調整
いつも通りの日常が戻ってきた。
ソフィアはすっかり熱も下がり、湯浴みして身なりを整えた。
「ジョシュ、お前今日は休め。昨日私の看病で
寝ていないだろう?近衛総隊長にもオーリーに、
休みを出すように頼んだんだ。お前も休んで良いぞ」
そう言われたジョシュアは、身なりを整え
仮眠するために午前休をとることにした。
ソフィアに、厨房に礼を言っておけと言い
下宿へ戻ろうとした時、ソフィアがジッと
自分の手を見ていることに気がついた。
「ソフィ?どうかしたのか?」
「……いや、何でもない。あとで話す」
「そうか……?」
少し考えるそぶりをしたジョシュアは、結局何も言わず
部屋を下がって行った。
ソフィアは、珍しく魔法のこと以外を考えていた。
一体いつからジョシュアの手は、あんなに大きくなったのか……?
背丈もそうだった。いつの間にかジョシュアを見上げることになり
とてもビックリしたことがある。
……そうか、ジョシュは異性なのだな……。
ソフィアは、自身が持つ膨大な魔力のおかげで
日常で男女の差を感じることは、
ほぼないと言っていい位、意識をしたことがない。
重いものを動かすなど、ソフィアにとっては簡単だ。
自分でも変だなと思うのだが、初めて実感したのだ。
ジョシュアが異性だったのだと……。
ふむ、次の機会にリリー達に話してみよう。
そう思って、頭を仕事へと切り替えた。
ジョシュアが頼んであった近侍を伴い、
いつもの通り、颯爽と廊下を歩いて行ったのだった。
ジョシュアが仮眠を取り、午後の訓練の時間にソフィアのところへ戻った時
案の定、仕事はいつもの半分も終わってなかった。
近侍達は、苦肉の策で1時間ごとに10分の休憩を入れていた。
が、そんな短い休憩時間でソフィアが満足するわけもなく、
予定は、ずれにずれていた。
顔を出したジョシュアに、近侍達は大喜びした。
「ああーー!!副閣下!!はあぁぁぁぁ、
よくいらしてくださいました!!」
「ジョシュア様!!良かった!!」
「ああぁぁぁ!!ジョシュア様!!良かったぁぁぁぁぁ!!」
大歓迎されたジョシュアは苦笑しながら、書類を確認し、
チラッとソフィアを見る。
ソフィアは、窓の景色を眺めていて、明らかにごまかそうとしていた。
さて……。
予想通りの展開に、ジョシュアは思った。
……甘い時間は終了だ。
とてもいい笑顔で、ジョシュアはソフィアに話す。
「閣下、侍医から昼食時も熱はなかったと伺っております。
ご快復なさったと安堵しておりましたのに、
この残っている書類が……。まだ体調に差し障るようでしたら
もう1日、おやすみいただきましょうか。
侍医が薬を用意すると、申しておりましたよ」
恐る恐るジョシュアを見たソフィアは、観念した。
……うーん、これはマズイやつだ……。
ジョシュが魔王に見える……。
そして……侍医の薬はマズイから飲みたくない……。
「ジョシュ、大丈夫だ。体調は悪くない。
あれだ……ほら、病み上がりだろう?だから……
だからゆっくり進めたんだ」
モゴモゴと言い訳するソフィアに、ジョシュアは片眉をあげた。
さらに深い笑みで、ソフィアを見つめる。
「ほお、閣下。様子見をなされたと?
で、体調はいかがでしたか?」
「……っっ!!だっ……大丈夫だった!!
もういつものペースに戻すっ!!」
「そうですね、閣下。残業が多いと部下から嫌われますよ」
「わっ……分かった!!」
諦めたソフィアは、猛然と仕事をし出した。
ジョシュアは午後の訓練を、他のものに任せ
書類のチェックを始めた。
近侍達がニコニコしている。
やれやれ……。
その気になれば、すぐに片付くのに。
ジョシュアは、色々確認しながら
ふと笑いを漏らした。
案の定、2時間もかからないうちに全て片付き、
午後の休憩の時間には余裕で間に合う時間だった。
早いが休憩するか……。
ジョシュアは、いつもの通り皆にコーヒーを入れ
今日はマカロンを用意する。
ソフィアの好きな味は、ピクルーと言うナッツでできた
クリームをはさんだ物だった。
その日は、近侍達が新しい魔具の話をしていた。
少量の魔力で使用できる万年筆で、色も変えられる。
最近は魔力が弱くても使える魔具が流行っているようだと。
また連れて行かねばならんな。
自覚はないが、ソフィアに甘いジョシュアは
いつ連れ出すか、頭で計算を始めていた。




