第18話 熱情
ソフィアは、何か暖かいものが手に触れた事を、
自分のことではないかのように見ていた。
ジョシュは今、何と言った??
しばらくの間、ソフィアは呆けたように
ジョシュアを見つめ、今の場面を思い返していた。
ジョシュが私を愛してる??
「ジョシュ、お前……何か悪いものでも食べたのか?」
そう言ったソフィアにジョシュアは、
うろたえも落胆もしなかった。
優しく笑って答えるのだ。
「いいや、お前と同じものしか食べていない。
お前は具合が悪いか?」
「……いいや、具合は悪くない」
「では俺も変な物は食っていない」
「……ジョシュ、では私の耳が悪くなったのだ。
何か聞き落としたか、聞き間違えたのだろう」
「お前は、いま俺の話している事が
聞こえないのか?」
「いいや、きちんと聞こえる」
「では、耳が悪くなったわけではない。
でも、そうだな……聞き間違えた可能性はある。
お前は何と聞こえたんだ?」
「……お前が……お前が……
私を愛してると聞こえたのだ」
「そうか、では聞き間違えではない。
俺はそう言ったからな」
ジョシュアは、美しいソフィアの瞳を見上げた。
そして、とても愛おしそうに手をソフィアの頬に
寄せ、優しく触れた、
「ソフィ、もう一度言う。良く聞いておけ。
お前を愛している。お前だけ、お前だけだ。
俺を生涯、お前の側に置いてくれ」
ソフィアは優しく頬を撫でられて、
気持ち良いなと思っていた。
「ソフィ、俺に触れられるのはイヤではないか?」
ソフィアは、少し考えて答えた。
「イヤではない。少し気持ち良い」
それを聞いてジョシュアは優しく微笑んだ。
「そうか、良かった」
ソフィアは、ハッとしたようにジョシュアに尋ねた。
「ジョシュ、お前 私に癒しを求めているなら、
それは無理だと思うぞ」
ジョシュアは珍しく声を出して笑った。
「ソフィ、大丈夫だ。俺はお前に変わって欲しいと思った事がない。
むしろ変わって欲しくないんだ」
しばらく固まったソフィアは、
ポカンとしながら呟いた。
「……お前……変わってるな……」
ジョシュアは笑いながら同意した。
「そうだな、変わっているのかもな」
頬に寄せた手を、もう1度ソフィアの手に戻し、
ジョシュアは再び尋ねた。
「ソフィ、お前は この気持ちを持っている俺でも
側に置いてくれるのか?」
ソフィアは突然うろたえた。変わらなくて良いと言ってくれる異性が、
まさかすぐ隣にいるのだ。
しかもジョシュアだ。しばらく呆気にとられていたソフィアは、
ゆっくりと話し出した。
「ジョシュ、本当なんだな?私を女性として見ていて、
変わらなくても良いと思っているのだな?」
「その通りだ、ソフィ」
「お前……正気か?!この私に向かって、
本当にそう思っているのだな?!」
「ソフィ、俺はいたって正気だ。本当にそう思っている」
「お前、だって……だって……これはどう考えても
この間読んだ恋愛小説と同じ、告白だぞ?!
あれだ、お前疲れているんだな。
そうだな、連日私のために動くからな。侍医に見てもらえ!」
慌てるソフィアに、ジョシュアは優しく答えた。
「ソフィ、大丈夫だ。落ち着け。
これは告白なんだ。間違っていない。
落ち着け、ソフィ。お前の解釈は間違っていない。
だから医者は必要ない」
「ジョシュ、お前……」
口をパクパクさせるソフィアに、思わず笑ってしまう。
「ソフィ、俺の世話は もういらないのか?」
そう聞かれて、ソフィはピクっと反応した。
「ダメだ、世話をされるのはお前が良い」
「そうか、ではお前の側にいても良いのだな」
「それはその通りだ」
真面目な顔をして頷いたソフィアに、
ジョシュアは満面の笑みで答えた。
「良かった。ソフィ、今日はこの位で勘弁してやる」
ジョシュアは、そう言って笑い、ソフィアの頬にキスをした。
ソフィアは、ビックリしてソファの上で
ピョンッと跳ねた。
「ソフィ、また明日。陛下達と晩餐があるのだろう?
侍女を呼んでやるから着替えろよ」
そう言ってジョシュアは、優雅に部屋を辞したのだった。




