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俺の閣下  作者: テディ
本編
17/186

第16話 決意

 目的を果たしたソフィア、良かったような、物足りなかったような

今までにない感想を自分に抱いていた。


ジョシュアは、ソフィアが喜びそうな

新しいランチスポットをすでに予約していた。

が、いつもと違うソフィアに戸惑い、こう聞いた。


「ソフィ??今日は公園にするか?」


ソフィアが見上げるジョシュアの顔は、少し心配そうだった。

その顔を見たソフィアは、笑って首を振った。


「いいや、ジョシュ。私はお前が予約したところで食べてみたい」


そのソフィアの笑顔に、ジョシュアはホッとして予約した店について

話し始めた。


「マイアから聞いたんだ。今、巷で流行っていて

ソフィに食べさせたい店なんだそうだ。

クラッシックには、その伝統を守ってきた良さがある。

ソフィは、その良さは知っている。だから革新的なものに

触れて欲しいそうだ」


まるで、当たり前のことのように話すジョシュア。

それを勧める友人。

ソフィアは、実感するのだ。

自分は、とても恵まれている事を。

自分は彼らのおかげで、籠の中の鳥でなくとも済む。



ソフィアは、ゆったりと輝くような笑みを見せた。


「いいのだ、ジョシュ。お前の思うところに連れて行ってくれ」


そう言われてジョシュアは、ソフィが何を説明しなくとも

全てを理解したと、直感で想う。

……良かった。届いた……。

そして穏やかな時間が流れることを2人とも知っていた。


それは、奇抜な お洒落に感じる 現世界ではないような

レストランだった。どちらかと言うと最先端すぎる。

ソフィアでさえ、その新しさに背がゾクゾクするような

背徳感を覚えるくらいだった。


「ジョシュ、ここは……??」

「ソフィ、大丈夫だ。オーナー、シェフ従業員に至るまで

全て調べ上げた。ただの革新性を求める熱意ある連中の集まりだ」

ジョシュアは周りに聞こえぬように、ソフィの耳元で囁いた。


ジョシュアは個室ではなく、壁脇のテーブルをオーダーしていた。

初めての所で、個室は危険すぎると用心したのだろう。


バーガンディ色の絨毯。ダークブラウンの壁。

窓があり、そこからの光は外で感じるより

暖かく感じた。


ジョシュアはアルコールは避け、サイダーのようなものを頼んだ。

メニューは、もう決まっているようだった。


「ジョシュ、マイアはここへ来たのか?」

「1度、来ているようだ。あまりに斬新で

驚いたと言っていた。味は自分で確かめてと話していたぞ」

「そうなのか」


そう言ったソフィアの前に、前菜が出される。

「雲に浮かぶ、野菜の祭典でございます」

給仕の説明に、ソフィアは目を丸くした。


確かに、泡でできたような雪山のようなところに

色とりどりの野菜が乗っている。

「雲に見立てているのは、貝のエキスを使ったスープを

泡仕立てにしております。野菜も極薄いスープで煮込んでおります。

雲と一緒にお召し上がりください」

若いがしっかりとした給仕が、にこやかに説明して下がった。


ジョシュアはソフィアの顔を見て、クスクスと笑っていた。

「ソフィ、雲に見えたか?」

「私のセンスが問題なのだろう。雪山に見えた」

「なるほど、俺も一緒だ。気にするな」

そう言うとジョシュアは、グラスをとった。


「ソフィ、今日は新しいものずくめだ。新種の記念に」

そう言って、お互いのグラスを少し鳴らした。


ソフィアは、まず泡をすくってみた。

その泡は思っていたよりきめ細かく、弾力がありつぶれなさそうだ。

「なるほど、簡単に泡は崩れなさそうだ。だから野菜を乗せられるのだな」

ひと口味わうと、その泡は口の中で溶け出した。


「ジョシュ、溶けた……」

口の中には、しっかりとした貝の旨味が残っていた。

ジョシュアも同じように試し、笑顔になった。

「ソフィ、美味しいな」


その笑顔をソフィアは、ジッと見つめていた。

何だかジョシュアが大人びて見える。


その前菜に舌鼓を打ちながら、今日の花屋の話で盛り上がった。


次に来たメインは、ローストされた美味しそうな肉が、煙の中から現れた。


やはり目を丸くするソフィアに、給仕はにこやかに説明する。


こちらの煙は香り高い木をチップ状にして、薫製を作るときに使うものです。

その煙を閉じ込め、お客様の目の前で膜を割ると、

香りがお肉に残るようになっております。


ソフィアはまだ煙の残る皿から、ローストされた肉を1枚とった。

「ジョシュ、確かに燻した香りだ。

そんなにキツイ香りではない。ちょうど良いかもな」


ジョシュアも口に運び、メイン料理を楽しんだ。

デザートも2人の好みだった。

とんがり帽の形をしたチョコケーキを割ると、

中からトロトロの生チョコが出てくる。

小さくてカラフルなマカロンが彩りを添えていた。


ソフィアはコーヒーを口にしながら、とても満足そうにしていた。

ジョシュアもコーヒーを飲んで、食事の余韻を楽しんでいた時、

ソフィアが突然、質問し出した。


「ジョシュ、お前 花屋のおかみに旦那さんと言われただろう?

イヤじゃなかったのか?」


突然の事に、ジョシュアはカップを持ったまま固まった。


「旦那さんというのは、結婚した相手のことだろう?」


ーーそこからなのかっ!?


慌てたジョシュアは、混乱していた。


「まあ、そうだな」

「では、お前は、私の結婚相手に見えるという事だ」

「……ん……まあ、そうだったのだろう……」


ーーダメだ、ソフィアが何を感じたのか、さっぱり分からん……。


ジョシュアは、まだ混乱していた。


「お前、イヤじゃなかったのか?」

「……イヤではなかった……。ソフィ、お前は?」


返事を聞いたソフィアは、あからさまにホッとしたような笑顔になった。

そして元気に答えた。


「そうか!良かった!!私も、驚いたがイヤではなかった!」


そう言って、ニマニマしながらコーヒーを飲む。


ーーそれだけなのかっ?!


ジョシュアは、まだ固まっていた。


「ソフィ……、ひょっとしてお前、喜んでいるのか?」


ソフィアは、ん?と言った顔をし、

笑顔で答えた。


「そうだ、嬉しい。ジョシュがイヤじゃなくて嬉しい」


ジョシュアは天井を見上げたくなった。


……………前途多難だ……………。

これは俺にもチャンスがあるかもしれないと言うことか?

やはり俺から言う事を考えよう……。

ソフィの自覚を待っていたら、じぃさんになっている気がする……。


ジョシュアは助言してくれたカイの顔を思い起こし、

密かに腹をくくったのだった。

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