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俺の閣下  作者: テディ
本編
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第14話 珍事

 ソフィアは、その日をとても楽しみにしていた。

珍しく自分で起きるくらい、楽しみにしていた。

カーテンからもれる陽の光で、計画通り出かけられると確信し、

ベッドを降りる。嬉しくなって伸びをした。


ジョシュがくる前に……。

そう思い、侍女に声をかけて支度を始めた。


顔を洗い、町娘風のドレスに着替え

髪をとかしてもらう時、やはり思った。

やってもらうならジョシュがいいな。


侍女に、やはり髪はジョシュにやってもらうと告げ、

朝食をとりに行くことにした。

いつもは寝坊するので、朝食を取るのはジョシュアが登城してからだ。


家族の部屋に、ソフィアが現れると

父も母も、弟までも、口を開けていた。

「父上、母上、おはようございます。

テオドア、おはよう」


侍女や給仕が大慌てで、ソフィアの食卓の準備をする。

先触れを出しておいたのに、信用されなかったのか?

首をひねるソフィアに、テオドアがやっと口を開いた。


「あ……姉上……おはようございます。

す……すみません、少し驚きました。

前回朝食をご一緒したのは半年前だったから……」

テオドアはソフィアと同じ紫の瞳を、目一杯開いて話した。


「そうか?そんなに前だったか?

ああ、急に来てすまない。そうだな、果実のジュースをくれ」

給仕に話しながら、着席した。


母が、目をパチパチさせながらソフィアを見た。

「おはよう、ソフィア。今朝はもうジョシュアが来てくれたの?」

「いいえ、母上。今日は街中に行くので楽しみで目が覚めました。

顔を洗って、着替えておけば、髪をジョシュにやってもらって

すぐに出かけられるので」


ソフィアは、ゆっくりとジュースを飲んだ。

テオドアは、母と同じように目をパチパチさせながら聞いた。

「髪はジョシュア殿にやってもらうのですか?」

「そうだ、ジョシュが良いんだ」

そう言って、ソフィアはフルーツに手を伸ばす。

給仕があわてて、動き出した。


「姉上、今日はどちらへ?」

「今日は近侍から聞いた、花屋へ行くのだ。なんでも新種を育てるのに

成功したらしい。見てみたいと思ってな」

「よくジョシュア殿が、許可しましたね」

テオドアが笑っていた。


「ん?今回はすんなりだったぞ。抜け出されるよりは安全だと言っていた」

「良いな、僕もジュードと行けないかな?」

ジュードは、ジョシュアの1番下の弟だ。ジョシュアは5人兄弟で、

賑やかな一家だ。ジュードとテオドアは同い年で、幼馴染。

その内、ジュードはテオドアの腹心になるだろう。

世話焼きなところがジョシュアにそっくりだが、テオドアは

ソツなく色々なことができるのでジュードは戦略と警護に専念できるだろう。


「ジュードに聞いてみたらどうだ?ああ、でもお前達では

警護の問題が出るな。まだ学生だからな」

ソフィアは、やっと前菜に取り掛かりながら考えた。

「そうだな……やはり近衛兵についてもらうしかあるまい。

しょうがないテオドア、まだ学生なのだから窮屈なのは諦めろ」


テオドアは、しょうがないと言うように笑った。

「僕も早く自由に出歩きたいな」

「気持ちはわかるが、こればかりは諦めろ。

私でさえ、学生時代は窮屈なのに我慢したのだ。

お前ならできるさ」

爽やかに笑う姉に、テオドアは納得した。


「それにしても姉上、よく我慢できましたね」

「そうだな、私はジョシュがいたからな。

それに魔法に没頭できたのが良かったのやもしれん」

「ジョシュア殿がいなければ、我慢できなかったと言うことですか?」


静かに核心をついたテオドアに、母はニコニコと笑っていた。

ソフィアは真面目に考えた。

「う〜ん、そうだな。そもそもジョシュがそばにいることが普通だから

居ないことを考えたことがない」


姉のあっさりした返答に、あっけにとられたテオドアは

しばらく口を開けた後、思わず母を見た。

母は、ニコニコしながらテオドアにウィンクした。

面食らったテオドアはジッと姉を見つめ、小さくため息をついた。


「どうしたんだ、テオドア?具合が悪いのか?」

見当はずれな姉の心配に笑って、大丈夫ですと答えた。


これは……我が姉ながら……手強そうだ……。

そう思いながら、ジュースを飲み干した。


そこにジョシュアが登城したと連絡が入った。

ソフィアは喜んで、両親にお伺いを立て

ジョシュアを呼ぶように言う。


少しするとジョシュアは現れた。

「陛下、女王陛下、テオドア殿下、おはようございます。

申し訳ありません、少し早く着きました」


父も母も満面の笑みで、ジョシュアを迎え 日頃の礼を言っていた。

特に母はコロコロと笑いながら話していた。

「良いのよ、ジョシュア。ソフィアがまだ寝ていると思ったのでしょう?

ほんと、朝食時に起きてくるなんて、年に何回あるかどうかの奇跡ですもの。

今日もよろしくね。お土産話を楽しみにしているわ」

「はい、女王陛下」

ジョシュアは否定もできず、苦笑いしながら頭を垂れた。


ソフィアは喜んで立ち上がった。その瞬間、ジョシュアの手の中に

グラスとカトラリーがある。

テオドアは目を見張った。ものすごいスピードで見えなかった。


ジョシュアはいつも通り話す。

「閣下、ゆっくり立ち上がらないと色々こぼれる事になります」

そう言って、手の中にあるものをテーブルにセットし直す。

ソフィアは笑いながらジョシュアを見た。

「すまん、お前が来たのが嬉しかったのだ。許せ」


姉の輝くような笑顔を見て、テオドアは面食らうのだった。

母は何故、ジョシュアとの関係に口を挟まないのか?

謎の残る朝食となった。

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