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俺の閣下  作者: テディ
本編
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第13話 一歩

 午後の休憩の時間、訓練がうまくいったのもあって

ソフィアはウキウキしながら歩いていた。


夢中になって、さっきの出来事を話すソフィアに、ジョシュアの腕が伸びてくる。

サッと腕の中に閉じ込められて、柱に激突するのをまぬがれた。


「閣下、前をみて歩いてください」

ジョシュアの柔らかい声が、頭の上から降ってくる。

恐る恐る見上げると、ジョシュアは怒ってはいなかった。


「すまん、つい夢中になった」

ジョシュアが怒っていなかったことにホッとして、ソフィアは答えた。


ジョシュアは、多分ご褒美のつもりだったのだろう。

珍しく、テラスで休憩しましょうか?と聞いてきた。


「いいのか?!」

大喜びで答えるソフィアに、少し笑ってジョシュアは答えた。

「しばらく、あそこで休憩していませんでしたからね」


ソフィアは、そのテラスが好きだった。

基本、ソフィアは部屋にいるのが好きな方だ。

本さえあって、魔法のための実験道具があれば何時間でもそこに居られる。

でもそこは、幼い頃 駆け回った庭が見られる。

思い出に浸るなど、自分らしくないと思うのだが、

そこは自分にとって特別な場所だったのだろう。

ソフィアが、魔法以外のことを考える唯一の場所になっていた。


ジョシュアの指示で、テラスにテーブルと椅子が用意され

ソフィアの好きなコーヒーと、小さなショコラが用意される。

ジョシュアは、他の近侍達もを呼ぶつもりだったのだが、

ソフィアは、今日は呼ばなくとも良いと話した。


「閣下、珍しいですね。先日聞いた花屋の話を詳しく聞きたいと

おっしゃっていたのに……」

「それもそうなんだが、なんとなくな」

そう言うと、ソフィアはショコラに手を伸ばした。


「閣下、お取りしますよ」

そう言って、ジョシュアは小さな皿に乗せてくれた。

「ありがとう、ジョシュ」

子供がおやつを貰って喜んでいるかのような笑顔で

ソフィアは素直に受け取った。


やはり、コーヒーとショコラは相性抜群だな。

ソフィアはニマニマしながら、楽しんだ。


「ジョシュ、先日聞いた花屋に行きたい」


ジョシュは、やはりそう来たかと笑った。

「週末の休みに、時間を確保します。実際に見てみたくなったのでしょう?

仕方ありません。抜け出されるよりは、安全でしょう」


ソフィアは、とても喜んだ。

朝の一件以外は、今日は良いことづくめだ。

ジョシュアも笑ってくれたし、楽しみだ。


そこで ふと思い出し、ジョシュアに聞いてみたかったことを

聞くことにした。

「ジョシュ、この間の恋愛小説、また読んでみたいか?」


ジョシュアは、コーヒーを吹き出しそうになった。

「……っっ?!……閣下……?」

「私はな、ああいった本は苦手だ。皆は楽しめるのだろう?

読めば疲れるし、その後自分の感情がなんだか変になる。

ジョシュは変にならないのか?」


ジョシュアは目を丸くして、ソフィアを見つめていた。

……これは……?……ソフィが思春期に入った……?

しばらく考え込んで、ジョシュアは答えた。


「また読んでみたいとは思わないですよ。私も、苦手なのです。

でも考えることはありました。ですからそういった意味で

読書後の感情が変になると言う感覚は、閣下と一緒かと思います」


ソフィアは固まっていたジョシュアが動き出してホッとした。

ちょっとドキドキして答えを待つなんて、自分らしくない。

ジョシュアは自分と一緒だと話したことも、ソフィアをホッとさせた。

ずっと小説くらいで落ち着かなくなる自分が変なのではと思っていたのだ。


ソフィアはニコニコとしていた。

「そうなのか、ジョシュと同じで良かった」


その笑顔に、ジョシュアは理性を引っ張り出して堪えた。

一体、ソフィアに何が起こっているんだ……?


休憩を終え、書類に向かい出したソフィアは、

もういつものソフィアだった。


だいたい5件こなすと飽きてくる。

スキあらばジョシュアに休憩をせがみ、却下されて次の書類。


「閣下、ダメですよ。その手には乗りません。

終業後に場所を聞いておきます。ああ、その件は報告が来ています。

確認してください。その書類については問題がなかったとのことです。

さすが閣下、もう3件片付きましたよ。後少しです」


ソフィアは、ふくれていた。

「ジョシュ、疲れた」

「そうですね、ほらこちらを読んでください。これが済めば

コーヒーを入れて差し上げますよ」


なんだかんだと上手く言いくるめられて、

ソフィアは、その日の仕事を片付けたのだ。


2人は、他の近侍が生暖かい目で見守ってくれていることに

今日も気がつかないのだった。

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