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俺の閣下  作者: テディ
本編
109/186

第108話 歓談

 子供達から教えてもらった穴場とやらは、以前グリフォン に会ったところとは

別の林の中にあった。山から流れ込む川の上流近くまで行くらしい。


大人達は、そんなところまで行っていたのかと、さらにゲンコツを落としていた。


「結構、上流までくるな。沢の様に草が

生い茂っていないからいいようなものの……。

早い時間に家に帰るよう子供達に言わねばならんな……」


ソフィアは、周りの様子を観察しながら

独り言のように話ていた。


結局、お供について来たのはジョシュア、オーリー、

そして侍女長だった。


騎士は、街中を散策(見廻りとも言う)させ、

近衛は小屋の付近の警備にあたるようにしたのだ。


すまんな、連れて行ってやれなくて……。

そう言うソフィアに、2人は笑って、当然のことですと答え、

楽しんでいらしてくださいと送り出してくれた。


ソフィアは、侍女長も気にかけた。

野外で遊ぶことを苦手とする女性は多い。

でも侍女長は意外にも、お邪魔でなければお連れいただきたいと

答えたのだ。


「無理はしていないか?」

「いいえ、ソフィア様。無理ではございません。

足手纏いになるようでしたら、こちらで待たせていただきます」

「いや、足手纏いなどではないが……。侍女長、あなたは

釣りをしたことは?」

「恥ずかしながら、ございます。私は田舎者ゆえ、

小さな頃から、なんでもいたしました。

畑の収穫も、釣りも。

淑女を目指すには、お恥ずかしい限りでございます」


スッと視線を下に向ける侍女長に、ソフィアは

目を輝かせて両手を握り、ブンブンと握手しながら喜んだ。

「いや、恥ずかしくなんかないぞ!!すごいな、釣りをしたことが

あるんだな!!だからあなたは色々なことができるのだな……!!

素晴らしいことだ!!」


ソフィアは、興奮してジョシュアを振り返った。

「ジョシュ、彼女も連れて行きたい!!」


ジョシュアは、やはり優しく微笑むのだった。

「お前の望むように……」


侍女長も手早く、街中の少年のような格好に着替えて来た。

ソフィアは、感心していた。

「あなたはズゴイな……。本当に少年のようだ。

ジョシュ、次のお忍びはこの格好にする!!」

ソフィアが、そう言うくらい見事な変身だった。


 たどり着いた場所は、水がとても澄んでいた。

上流なのにそこで1回流れが穏やかになるくらい

川幅が広くなっており、水底が見える。まるで砂のようにサラサラした

土が川の流れでコロコロと転がっているように見えた。

水草がそこかしこにあり、確かに魚が隠れるには絶好の場所だ。


「ヤツラめ、こんな隠し場所を見つけておったのか」

ソフィアは、いつでも最上のものを見つける子供達に笑っていた。


「ソフィア様、本当にいつの時代も子供達は天才ですね」

少年のような侍女長が話し、皆は、なんだか変な気分だ。

……特に、オーリーは……。

声だけ侍女長と言うのも、なかなか面白い。


「さ、ソフィ。釣るぞ」

コントヌールから色々なものを出し、ジョシュアと侍女長は準備を整えた。


オーリーは、ジョシュアと順番で釣るので今はいいと言い、

それとなく警護にまわる準備をしていた。


「侍女長、釣りにはコツがあるのであろう?教えてくれ」


そう言ったソフィアに侍女長は微笑んだ。

「ソフィア様、簡単なコツがございます。

まず1番大切なのは、この場に魚がいるか見極めることです」

「どうやって見極めるのだ?」

「まず、小魚がいるかご覧になってください。そして、水が澄んでいるのか、

鳥は近くにいるのか観察するのでございます」

「なるほど、その条件が揃えば魚はその場に止まりたくなるな……」


「そして、風も重要でございます」

「なぜだ?」

「ここは川ですから、水に風が空気を送り込まずとも

新鮮な流れになります。でも湖は風がないと空気を含みません。

凪と言うのは、水の中の生き物にとっても重要なのです」


皆、侍女長の説明を聞きながら舌を巻いていた。

ただ単に子供の頃に釣り遊びをしただけではない。

きちんと理論立てて確率を上げているのだ。


ジョシュアは、侍女長に尋ねた。

「あなたは田舎育ちと言いましたね?

どなたか、そう言ったことを教えてくださる方がいらたのか?」


「いいえ、ジョシュア様。皆、教わらなくとも知っています。

私は経験を言葉にしただけなのです。ここの子供達も

言葉を知っていれば、同じことを言うでしょう」


ソフィアは、嬉しそうだった。

「侍女長、あなたの表現力は、もっと誇って良いものだぞ。

とても分かりやすい。そうだな、皆が経験で体感するのであろう。

でも言葉にできるかは別だ。侍女にしておくには惜しいな」


「ソフィア様、もったいないお言葉、ありがとうございます。

でも僭越ながら、お願いが……。どうぞこのまま侍女長として

お側においてください。私の天職だと思っておりますので……」


「……そうだな、あなたが側にいてくれると頼もしい。

それに一緒に釣りもできる。他にも色々できそうだな。

他に、コツはあるのか?」


「今回、用意していただいた餌は小麦を練ったものです。

川魚には有効でしょう。場所によって餌を選ぶのです。

そして、今回は流れの中に餌を垂らします。

なるべく生きているように見せるため、水底には餌を付けないように

流れの中に垂らすのがよろしいでしょう」


「分かった!!よし、やってみるぞ!!」


ソフィアは、濡れても良いようにシャツやズボンをまくり

裸足になった。


水際で嬉しそうに足を入れ、仁王立ちになる。


「皆も一緒にするぞ!!」


こうしてソフィアの休暇は始まったのだった。

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