第107話 癒し
ソフィアは、釣りに行くために今日の午前中の分の仕事まで
終わらせていた。
ジョシュアの言う通り、早寝して翌朝はジョシュアが来ると
すぐに目を覚ました。
「ソフィ、早く寝れば早く起きれるんだぞ?
分かっただろう?」
いつもの様に腕に閉じ込められて、額に口づけが降ってきた。
「さぁソフィ、準備だ」
そこからはいつも通り、浴室で侍女達に磨かれ、
今日は野外に行くので、侍女長の出した乗馬服を身につけ、
ジョシュアに髪と化粧をしてもらい、あっという間に準備ができた。
「さ、朝食をとって来い。陛下達に今日の休暇のお礼を
お前からも伝えてくれ」
ジョシュアは、愛おしそうに微笑んでソフィアの頬をなでた。
ソフィアが朝食をとる間、ジョシュアと侍女長は
手早く出かける準備を整えた。夜番の近衛と引き継ぎを終えた
オーリーと、例の案件に関わっている騎士と近衛が1名ずつ
ジョシュア達のもとに現れた。
戻ってきたソフィアとともに転移魔法で向かう。
……グリフォンの地、ふもとの村に……。
転移魔法の先は、遠征で訪れた小屋だった。
侍女長は、素早く片付けを始め、近衛が警護の意味もあり手伝っていた。
オーリーは、表玄関の扉を開けると、明るい朝日が部屋にいっぱい差し込んできた。
外には、村の長や、村人がズラッと待っていた。
「ソフィア様、お越しいただけてありがたき幸せ。
こんなに早い時期に、またお会いできるとは……」
長が、代表して王族への礼をとると、ソフィアが渋い顔をした。
「おはよう、皆。迎えてくれてありがとう。嬉しいが、
堅苦しいのは無しにしてくれ。休暇にきたのだ。
王宮にいる様で、休暇にならん」
その顔を見て、皆が笑い出した。
子供達は喜びのあまり、次々に話し出した。
「姫ねえさま!!いらっしゃい!!」
「釣りに行くんでしょ?!僕も行きたい!!」
「俺、この間、5匹釣ったんだぜ!教えてやるよ!!」
「餌も釣竿も持ってきたよ!!」
「俺たちの穴場があるんだ。姫ねえさまなら教えてやっても良いよ!」
口々に話し出した、腕白坊主に次々と親からのゲンコツが落ちていた。
「いてっ!!」、「アウッ!!」、「グワッ!」
「イタッ!」、「いてーよ、母ちゃん!!」
「お前達、今日は学校だろ?!特別に来てるんだからね!!」
子供達に雷が落ちて、ソフィアは笑い出した。
「まあまあ、私に免じて許してやってくれ。
出迎えてくれて嬉しい。でもお前達、学校へはいかないとダメだ」
「ええーーっっっ!!!!!」
ソフィアの一言に、子供達はがっかりした。
「いいや、そんな顔をしてもダメだぞ。学校は大切だ。
今のうちに勉強して、遊んで、たくさん食べて、たくさん寝るんだ。
それがお前達の仕事だからな?」
「……はぁい……」
ソフィアに言われては諦めるしかない。子供達はしぶしぶ返事をした。
大人達の笑い声の中、長の妻がジョシュアに大きな籠を渡していた。
お昼ご飯が入っていると言う。
釣竿も餌も受け取り、コントヌールに仕舞い込んだ。
女の子が1人、珍しそうにコントヌールを覗き込んだ。
「ジョシュアさま、これいっぱい入るの?」
「そうだ。コントヌールで遊んではダメだぞ。
中に入ったら、迷子になってしまう」
「本当?!なんだ……かくれんぼに使おうと思ったのに……」
「俺のは人間は入れない様に魔法をかけてあるから大丈夫だが、
他のコントヌールは分からない。だから、絶対にいたずらしちゃダメだぞ」
ジョシュアは、優しく教えていた。
「さ、皆。手を止めさせてしまってすまなかった。
夕方に戻ったときに、皆に分ける分がある様に祈っててくれ」
ソフィアは、嬉しそうに話ていた。
では……、と言い、皆は自分の仕事に戻って行った。
ソフィアは、輝かんばかりの笑顔で部下を振り返った。
「用意はいいな?!では、行くぞ!!」
腕をブンブン振って、やる気満々のソフィアなのであった。




