↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の閣下  作者: テディ
本編
104/186

第103話 気苦労

 ルークは真っ赤になったリリーを部屋に送り届け、

ヴェルデの執務室へ向かった。


ヴェルデと婚約と結婚に関する書類の詳細を

確認するためだ。


ヴェルデの執務室も、主人に似てシンプルだが

ダークブラウンの重厚な家具をしつらえていた。


2人で全ての書類に目を通し、婚約に関しては

クアドロとリリーの署名があるのも確認し、

本日の業務はやっと終了になる。


ヴェルデはおもしろそうに笑いながらルークをねぎらった。


「ルーク殿、気苦労の多い日だった事でしょう。

ワインがお好きと、お聞きしたので用意させました。

この部屋で申し訳ないが、いかがですか?」


「ヴェルデ殿、貴方も長い1日でしたね。

お言葉に甘えて、頂戴したく思います」


それはヘイネシア王国の山の斜面で栽培している

特定の種類のブドウを使ったワインだった。

もう3年も寝かしており、色にはルビーのような深みが出ている。


ルークはグラスを回し、香りを楽しんだ。

「ああ、豊潤な香りがしますね。美味しそうだ」


「さあ、今日のお互いの活躍を労いましょう」

ヴェルデは、茶目っけたっぷりでグラスを傾けた。


ルークは1口、ワインを含んだ。

空気を含ませ、口の中でワインを転がす。


「ああ、ヴェルデ殿。1日の褒美にふさわしい……」


ルークはヘイネシア王国と、様々な共通点を見つけられて

満足していた。王族の婚姻は難しい。

例え聖動物が関与していてもだ。

だからこそ、リリーの幸せのためにクアドロが本気で良かったと

心から想っているのだ、

そして、クアドロには将来国を支えるであろう優秀な部下が揃っている。


ヴェルデは、そんなルークの思いを知ってか知らずか

自身の想いを打ち明けはじめた。


「殿下が運命を見つけられる事が、家臣にとって悲願だったのです」


そう言ったヴェルデは、柔らかな表情だった。

「家臣の多くは、幸運なことに適齢期で自分の運命を見つけられた。

殿下の弟殿下も早くに運命を見つけられた。

幸運なことに、弟殿下達はクアドロ殿下を心底尊敬なされていた。

だからこそ、殿下の幸福を心底願ったのです」


「クアドロ殿下は、貴方達にそう想ってもらえるだけの

人格も人徳も、お持ちでいらっしゃった」


ルークは、素直に感想をのべた。

実際、カイが寄越した報告は、どれも感心するものだった。

あの歳まで独身で、浮いた噂の1つもなく政務に励み、

休日は静かに心休まることだけを、淡々と繰り返す。

王族の見本のような人物、それがクアドロだった。


あのカイが調べたのだ。漏れはあるまい。

ルークは、そう判断していた。


ヴェルデは、嬉しそうにルークの賛辞を聞いていた。


「殿下は、我が国の奇跡なのです。幼い頃から

浮ついたところもなく、静かに実力をつけていらっしゃった。

弱き者をいつでも助けられるようになりたい。

それが殿下の口癖だったのです。国民として

これ以上幸せなことはありません」


「ヘイネシア王国は、豊かな国になりますね。

人も物も、心も」

ルークは、優しく微笑んだ。


ヴェルデは、満足そうにうなずいた。

「ルーク殿、ありがとう。我々も慢心せずに努めましょう」

そして、急に砕けた感じに表情を変える。

「ルーク殿、殿下の本気は見ものですよ?」


ルークは苦笑した。

「そうですね……。正直な所、いつもの殿下の印象と違われていて

情熱的で驚きました。でも、リリーのために喜んでいます」


ヴェルデは、時々グラスを回しながら、味も会話も楽しんでいた。

「我らも驚いています。特に陛下は……。

殿下が実力を存分に発揮なさるので、仕事を増やそうかと

冗談までおっしゃっているのです」


ルークもグラスを回して、ワインの色を楽しんでいた。

「あの速さでは……。ヘイネシア国王陛下も、どんどん

政務を任されるのでは?」

ルークは笑っていた。前代未聞の速さなのだ。


「殿下が、お断りされておりました。

これから妻を迎えるので、もう少し待って欲しいと……。

先ほども、どうなることかと思いましたが、

無事にリリー殿に、殿下の愛情をご理解いただけたようで

ホッとしています」

ヴェルデも笑っていた。

「実際、殿下には運命を逃されては困りますからね」


「ヴェルデ殿、1つだけ伺いたい事が」

「なんですか?」


ふと視線をあげたヴェルデに、ルークは切り込んだ。

「殿下に最初、ソフィア閣下を勧めたのは何故ですか?」


ヴェルデは、おもしろそうに答えた。

「貴方はそこが気になるのですね。簡単ですよ?」

「簡単?」

「ええ。簡単な理由です。まず国内に殿下の運命はいないと思われた。

では他国を見てみましょう。1番信頼できそうな国を見つけた。

ソフィア閣下は、国民のために骨身を惜しまない尊敬できる方だ。

殿下の運命になっていただけたら、どんなに嬉しいか。

でももし、殿下の運命ではなくても友人にはなれる。友人が増えれば

交友関係が広がる。運命を見つけるチャンスも広がる。

臣下として、賭けたのです。殿下のチャンスを。

これは……、不敬に当たりますかね……?」


ヴェルデは少し心が痛む表情になっていた。

「結婚が幸せの全てではありません。

それはよく分かっています。でも我らは

殿下に家庭を育む幸せも味わっていただきたかった。

誰よりも運命を望んでいたのは

殿下だった事を皆が知っているのです」


「殿下はよく運命以外を受け入れようと

決意なさらなかったですね。殿下のお立場であれば

さぞ外野も騒がしかった事でしょう」


ヴェルデは笑って、首を横に振っていた。

「殿下は、王族が運命以外と連れ添うのは

不幸の初まりだと、断固として受け入れませんでした。

歴史が、そう教えているだろうと」


ルークは、いつものように優しく微笑んだ。

「やはり殿下は、お優しいのですね」


「そうですね。ですからリリー殿は殿下だけではなく

我ら臣下も、心して支えさせていただきます。

さあ、ルーク殿。貴方は何件も婚姻のための仕事を

抱えていらっしゃるのでしょう?忙しくなりますね」


「本当に。でも、幸せのための忙しさなら

乗り切る事ができそうですよ」


2人は和やかにグラスを鳴らしたのだった。

友人達の恋模様が続きますが、もう少しでジョシュアの本領発揮となります。

しばしお待ちを……。楽しみにしていただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。