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俺の閣下  作者: テディ
本編
102/186

第101話 相違

 今回のヘイネシア王国訪問に、リリーも同行するようにと

ソフィアから言われていた。ルークを伴って手続きをするらしい。


公爵と話したソフィアは、何か希望があるか問うた。


公爵はいつものように穏やかに、1つだけソフィアに頼んだ。

「閣下。ありがたいお話と重々承知しておりますが、

リリーの気持ちを聞いて、事を進める形を取っていただきたい。

願いは、その1つにございます」


ソフィアは、もちろんだと請け合い、リリーを伴って来たのだ。

侍女はジュシュアがいるので、侍女長だけに留めた。


到着した日、3カ国で色々な事ができた。

訓練もしかり、アイディアもしかり、打ち合わせもしかり。


その日の晩餐後、クアドロは手続きに入った。


クアドロの執務室に通されたリリーは、少し硬い表情をしていた。


それはクアドロらしい、シンプルだが重厚感ある家具で

しつらえてあった。


デスクではなく、応接用のソファに対面で座ると

クアドロは、とても嬉しそうだった。


「リリー殿、急いで申し訳ない。一刻も早く

貴方を迎えたいのです」


ヴェルデとルークがいるのに、クアドロは全開だった。


人前で気持ちを述べられたリリーは、真っ赤になった。


ーーしまった、人前でこの愛らしいところを見られた……。

クアドロは、慌てて話を続けた。


「お父上から、リリー殿のご意見を伺ってから

事を進めて欲しいとご要望がありました。

もちろん私も、そのつもりでおります」


そう言ったクアドロの言葉に、リリーはホッとした。

困ったようにルークを見て、どうしたものかと合図を送る。


クアドロは、理不尽だとわかっていながら嫉妬を抑えられなかった。


「リリー殿、どうぞ私に打ち明けてください。

大丈夫です。夫婦になるのならば、何事も分かち合わなければなりません。

そうお想いになりませんか?」


ルークは、クアドロの言葉に表情を崩さず驚いた。

……これはこれは……別人のようだな……。


リリーは迷った挙句、当初に思っていたように

打ち明け出した。


「クアドロ殿下、実はお願いがあるのです」


そう言われてクアドロの表情は輝いた。

「お願い?もちろん叶えましょう」


リリーは、この自分に愛情過多な婚約者の表情を見て

さすがにためらった。


「リリー殿、良いのですよ。何でもおっしゃって下さい。

できる限り貴方のご希望に答えたい」


リリーは覚悟して、話し出した。


「クアドロ殿下、実は私……、友人と商会を立ち上げる準備をしているのです。

その商会を軌道に乗せたいと考えております。

もし殿下が、婚約期間中に仕事をすることを良しとしないお考えであれば

はっきりそうおっしゃっていただきたいのです。

殿下に、ご迷惑をおかけしたくありません。

その際は、婚約を破棄していただいて大丈夫です」


リリーが冷静に話すと……クアドロは固まっていた……。


ーーやっぱり難しいわよね。婚約中でも色々な勉強があるし……。

それは愛想を尽かされてもしょうがないわよね……。


クアドロの後ろで、ヴェルデは下を向いて肩を揺らしていた。

ーーさすが……やはり、ただのご令嬢ではない……。

さて、殿下に諦めてもらっては困るのだが……。


「貴方は……、私にそう言えば……諦めるとお想いになったのですか……?」

クアドロは、衝撃で途切れ途切れに話していた。


リリーは、思いがけない質問に首を傾げた。

「いいえ、殿下。そんなつもりはありません」

「では……、なぜ私から婚約破棄などと……?」


「殿下には殿下の、長年培った譲れない点があると思います。

ですから、お尋ねしたのです。

殿下に望んでいただき、私も一歩進んでみようと思いました。

ですから、婚約の話を恐れながら受けさせていただいたのです。

でも、殿下の矜恃を曲げてまで、私のやりたい事を通すことはできません。

その時は、殿下が思うままになさっていただけるようにと……」


突然、クアドロが立ち上がった。

リリーは驚いて話を続けることができなかった。


「リリー殿、私は貴方を決してあきらめません。

やっと見つけた私の運命なのです。

どんな時も必ず私達の折り合いのつくところを見つけます。

ですから今後は2度と婚約破棄などと言わないでください」


クアドロの表情は、とても苦しそうで哀しそうだった。


ーー殿下を傷つけた……?


混乱の中で、リリーは謝罪した。

「殿下……、私の想いが至らなすぎました。

申し訳なく……」


クアドロは、大きく息を吐いて自分を落ち着けた。


ヴェルデとルークを見て、微笑んだ。

「ヴェルデ、ルーク殿。申し訳ないがリリー殿と

2人だけで話がしたい。そのあとで手続きをするので

どうだろう?誓ってリリー殿の名誉は守る」


ルークは苦笑して、礼をとった。

「殿下、仰せのままに。ヴェルデ殿、いかがでしょう?」

ヴェルデはうなずいた。

「もちろん、ルーク殿。こちらに否やがある訳がありません。

殿下、30分ほどでこちらに戻ってまいります。

それでいかがですか?」


「それで、かまわん」


2人は、静かに部屋を下がっていった。

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