第8話 休日①ー3
休日――
俺は最悪の形で清水りんの家に上がり込んでいた。
そのうえ、清水の爺さんが現れて、道場に行くことに――。
なぜか手合わせ、俺が清水りんの恋人と勘違い。
「「違!!」」
清水も俺も同時に言う。
「なんじゃ…ワシはてっきり」
勘違いに気づく爺。
「あら、あなた」
そんなことをしていると後ろから婆さんが来ていた。
「おう。幸恵」
婆さんの名前「幸恵」
「どうしたの?りんのお友達まで連れて?」
(いえ、友達じゃありません)
「んーなんじゃ…そのー」
困ったかのように言葉に詰まる爺。
「ワシの勘違いで迷惑かけての…」
「あら、そうなの?」
婆さんに爺さんは正直に言った。
「ごめんなさいねー」
「いえ。大丈夫です」
婆さんに謝られた。
爺さんに言いたいことはあるが――
清水と事を荒立てたくないので流そう。
「ワシはてっきりこの男が孫のボーイフレンドと――」
「違うからね!」
「そうだったの――」
婆さんは何か思うことがあるのか考える仕草をする。
少しした後――。
「――この子なら私は良いけどね」
「ほお?」
「「はぁ!?」」
この婆さんも何言ってんだ。
「私、この子に助けられましてねー」
「ほお、今時の子にしては殊勝な心掛けじゃのう」
「それにこの子からりんちゃんのこと聞きましてねー」
「ほおほお」
「ちょっと!お婆さま!」
爺さんと婆さんの間に清水が入る。
「私と彼はそんなじゃありませんから!」
少し顔赤らめながらもそう言う。
「えー、そうなのー」
婆さんは残念そうな声を出す。
「婿としては良いんじゃがの~」
「お爺さま!」
いかん、このままでは延々と続くぞこの話。
「あ、みんなここにいたの」
そんな話の間に清水の母が来る。
「おー雪さん、どうした?」
「どうしたじゃ、ありませんよ」
清水の母の名前「雪」と判明。
「昼食の時間なのにみんな来ないから探してたんですよ?」
(そういえば、そろそろ昼か)
「あらーそういえばそうだったわねー」
婆さん、話していて忘れていたらしい。
「王守くんも食べていきなさい」
「え?でも……」
「そうよ!腕によりをかけて作ったんだから!」
婆さんも作ったのらしく、一気に断り辛くなった。
清水の方を見る。
「いいんじゃない?食べていきなさいよ」
(マジかよ……)
昼食を頂くことになった。
机に置かれた料理は――
卵焼きに肉じゃが、焼き魚、酢の物、みそ汁、そして米である。
清水の弁当が、和食のメニューなのはこの家からか。
「えーと、いただきます」
席につき、食事の言葉を言い、みそ汁から頂く。
「……うまい」
思わず、声が漏れていた。
清水の婆さんと母親は嬉しそうだ。
「おいしい?」
そう笑みを浮かべて婆さんは言う。
「はい。うまいです」
(いつ以来だろう、こんな温かい他人の飯を食うのは)
そんなことを考え、俺は料理に舌鼓を打つ。
どれもおいしく、あたたかい料理だった。
「ごちそうさまでした」
(――敵の家で飯、食べちゃったよ)
「足りた?」
婆さんが口を開く。
「大丈夫です」
「そう、よかった!」
料理に満足してくれたからなにか嬉しそうだ。
「じゃあ自分はそろそろお暇します」
料理を食べ終え、俺は帰ろうとする。
「あら!もう帰るの?」
「ええ、長居してもなんなんで――」
というか、これ以上居て、また婿だなんだ言われても困る。
(敵の拠点でもあるしな)
「なんじゃ~もうちょいゆっくりしてけば、ええのに」
(爺…あんたが一番面倒なんだよ)
「たまたま来ただけですから」
「そう……ならちょっと待っててね!」
婆さんは何かを取りに行く。
「じゃあ、これ持って帰りなさい」
婆さんが何か持ってきた。
「え、いやそんな」
「いいから!いいから!持っていきなさい!」
そう言われ、渡された袋には、ミカンが入っていた。
「ありがとうございます」
俺は礼を言い、玄関に向かう。
「また来てね!」
笑顔でそう言われ、悪い気はしなかった。
「……ええ、ぜひまた」
玄関から出た。
「ありがとうございました」
「こちらこそありがとね」
礼を言い、この屋敷の出口に向かう。
「ねえ」
後ろから清水が来ていた。
「どうした?」
(何か言いに来たのか?)
文句だろうかと身構えているが――
「お婆さまを助けてくれて――ありがとう」
意外な言葉に思考を停止する。
「お…おう」
「あ…あと!」
一瞬、言葉に詰まってから――
「私の事「りん」って呼んでいいわよ」
「――!?」
「それじゃ!」
驚きすぎて、その時は何も言えなかった。
(何が起こったんだ…)
今回のことは俺にとっては大分凄い一日だった。
(…本当に、厄介な一日だった)
~清水家サイド~
清水りんが、大牙に「りん」呼びを許し、家に戻ってきた。
「何を言ってきたんじゃ?」
「別に!!」
祖父にそう言い、家の中に入っていく。
「なんじゃ、あんなに急いで――」
「ふふ」
そんな姿を見て、笑う祖母。
「どうした?」
「いえ、昔の自分を思い出して――」
「昔の?」
「ええ、まだあなたに好きになる前のね――」
それを聞いて祖父は照れる。
「ん!ん!それじゃあ何か?」
咳払いをし、質問する。
「あれは惚れる前兆ということか?」
「さあ…それはわかりませんけど」
そう、それはその時が来るまでわからない。
そんな二人を見て、楽しそうに笑う祖母であった。




