閑話 オカルト部怪奇報告書『紫陽花屋敷』ー①
オカルト部に入った僕…ブラック・リザード。
そのオカルト部の活動の中で――
報告書の中でとんでもない話を紹介しよう。
「――…ここが…」
じめじめとする梅雨の半ば――
雨がシンシンと降り、湿気を感じる。
僕たちオカルト部は、古い建物の前にいた。
「ええ…ここが…」
見た感じは普通の古びた木造建築の屋敷だ。
異様なのは――
「本当にたくさん咲いてますね!」
「……」
そう、この屋敷の周りに…というか、この屋敷の広い土地全てに咲いている――
――紫陽花。
青や紫、ピンクと言った当たり前によく見るものや…
赤や白、黄色などのあまり見ない種類の紫陽花を見た。
土の性質で紫陽花の色が変わるらしいが…。
「本当にすごいね…」
「…ええ、まさか……ここまでとは…」
全ての土地、屋敷を覆いつくす様な紫陽花。
狂気染みた何かを感じる。
「…いくら紫陽花好きといっても…これは…」
一帯が全て紫陽花だけ。
他の植物や木なんかもない。
本当に……紫陽花だけを植えている。
だから、ここはこう言われている――
――「紫陽花屋敷」……と。
「なんでこんなに紫陽花ばっかりなんですか?」
歩きながら、当然の疑問を万奈美さんに聞く。
「ここは元々、そんなに紫陽花どころか植物はなかったそうなんです」
「え!そうなんっすか!!」
その言葉に驚く橙。
(まぁ、当たり前か…)
植物がなかったと言われても――
この紫陽花だらけの風景を見ても信じられない。
「…なんでこんなに咲いたの?」
「あー、それは娘さんが原因らしいです」
「娘?」
「はい。病気で倒れた娘さんの為に大金を使って植えたらしいです」
この屋敷と土地は、あるお金持ちの持ち物だったらしい。
それだけなら僕たちオカルト部には、依頼は来ない。
その娘さんのために植えた紫陽花は、父親が紫陽花のことを調べて、地面の性質を変えながら紫陽花を植えたらしく、それで一般的に見る色からあんまり見ない色の紫陽花が咲くようになった。結局、娘は病気で亡くなり、紫陽花はそのままになり、父親もこの屋敷で息を引き取ったらしい。
問題は――
その後、この土地を買った金持ちが紫陽花を片付けようとしたが、紫陽花は抜けもしなければ、枯れもしない。それどころか、そう言った行為をした人はいなくなった。
紫陽花を取ろうとした人、駆除しようした人は、老若男女、直接、間接関係なく、悪意をもって片付けしようとした者は、行方不明になっている。
――だから、僕たちに依頼が来たのだ。
「今回は、異形の者が関わっていることは間違いないです」
オカルト部に入って、こういうことを何回か経験したが、基本は簡単な除霊か、お祓いである。
地域と社会、あと…国に貢献している感じでやっている。
「今回は、いつもより危険なので注意してください」
(そんなになんだ…)
いつも笑顔な万奈美さんも今回は真剣な顔でそう言っている。
相当ヤバいみたい。
「…とりあえず、中に入れば良いんっすか?」
橙は、そんな呑気なことを言い、空気を読まず進んでいく。
「まあ…そうなりますけど、気を付けて下さいね」
結局は、屋敷に入らなければ解決しない。
どうやら屋敷の中に‘‘何か‘‘いるみたいだ。
――どこかは不明だが…。
ガチャ――
土地の管理者から貰ったカギを使い、開ける。
古い屋敷の独特な匂いが鼻に来る。
キツイ…というわけではないが――
何だろう…部活動で行ったところより空気が淀んでいる。
「なんか…気持ち悪いですね…」
僕や、万奈美さん、みんなは――
「うん、これは…」
「経験上ヤバいのがいるっすねー」
「ええ…心してかかりましょう…」
全員、真剣な顔をしてそう言った。
ギシギシと鳴る床を歩き――
僕たちは、いくつかの部屋を見ることにする。
「お邪魔しまぁーす!」
そう元気よく扉を開け、突進する橙。
「…あれは大丈夫なんですか?」
さすがに無防備すぎると思い、万奈美さんたちに聞く。
「大丈夫…」
「問題ありませんよー」
問題ないと言う万奈美さんと楓。
「彼女なら何かあっても対処可能ですから」
実際、ある依頼でポルターガイストがあった時、飛んでくる食器や道具なんかを壊したり、破壊したりしていたからね。
反射神経は、三人の中では群を抜いている。
「ぶちょー、なんかありましたよー!」
橙は、どうやら何かを見つけたらしい。
「何かありました?」
「これなんですけどー」
橙が持っていたのは、古いノートのようだ。
「何か手掛かりがあるかも…」
「そうですね」
そうして僕たちはそのノートを開く。
〇月×日――
娘のために紫陽花を植える。
娘に色々な紫陽花を見せるため、土壌を変えたりして、花の色を変えることに挑戦してみる。
喜んでくれたらいいが…。
「日記のようですね…」
どうやら、この屋敷の紫陽花を植えた父親の日記らしい。
「何かこの屋敷の秘密が!?」
「もう少し見よう…」
そうして僕らは、そのまま日記を進める。
〇月△日
紫陽花は、様々な色に咲く。
しかし、何か変だ。気のせいだと思うが――
一応、調べておこう。
〇月□日
調べたが、異常はなかった。
ただ…何か変だ。紫陽花がまるで……いや、気のせいだろう。
「――…なんだか不穏な感じになってますね」
「ええ…」
この屋敷の主人は、紫陽花が咲いた時から異常を感じていたらしい。
〇月〇日
数日後――
紫陽花が見たことない色を見せる。
何と言えば良いか…言葉で表すことができない。
虹の様な、宝石の様な……輝いている。そうとしか言えない。
私も絵画や宝石、陶器など…様々な芸術作品を見て来たが――
ここまで綺麗なものは見たことない。
娘も喜んでくれるだろう!
「綺麗な紫陽花……」
「それが何かしらの原因の一部なんでしょうか?」
「わかりませんが、何らかの関係性はあるかもしれません」
虹の様な、宝石の様な綺麗な紫陽花……気になる単語が出て来た。
…これがこの屋敷の異常と関係があるのだろうか?
僕たちは日記の続きを読んでいく。
そこには――
僕たちは想像もしなかったことが書かれていた。




