閑話 オカルト部怪奇報告書『紫陽花屋敷』ー②
僕たちオカルト部は――
「紫陽花屋敷」と呼ばれる屋敷の怪現象を解決すべく、やってきた。
探索途中で、ここの主人の日記と観られるものを発見し、閲覧している。
〇月●日――
『娘をあの輝く紫陽花のところに連れて行き――
あの紫陽花の輝きを見せれば、奇跡が起こるような気がした。
紫陽花を見せて、娘はとても喜んでくれた!
『こんな美しい紫陽花は初めて見た』と絶賛していた。
使用人たちも『万歳』と叫んで喜ぶほどだ。 』
「――すんごい喜んでいるっすね」
橙が言うように、屋敷全員が喜んでいて嬉しそうなことがわかる文章だ。
「ええ…娘さんに「例の紫陽花」を見せるまでは、何の問題がないようですね…」
――コクン
万奈美さんも楓さんも動揺らしい。
「オレちゃん、次に行って」
「はい!」
〇月▲日――
『昨日――
あの紫陽花を見せて、喜んだ娘は――
ベットの上で――
――静かに息を引き取っていた。 』
「「「「!?」」」」
その言葉を見て、僕たちは驚愕した。
「――急に…」
「ええ…」
「……」
――僕らは娘さんが死んで………何となくわかった。
人間は、昨日と今日で…急に逝くことは大いにある。
この文章と「例の紫陽花」で直観はしていた。
だが、誰も言わない。直観はできていても確信はまだなのだ。
「――…続きを見せて…」
「わかったっす…」
万奈美さんの言葉で、つぎのページを開く。
◇月■日――
『娘が亡くなって――私は悲しみに支配されていた。
毎日欠かさず書いていた日記だが――
娘の息を引き取った、あの日から…書けなくなっていた。
――月日が経ち、ようやく今日…日記を書けるように 』
日記の月が替わっている…
日記も書けないほどに娘の死を悲しみ――
息を引き取ったと書いたページには…水がしみ込んだようなあとがあった。
書けないほど、娘の死を悲しみ――その悲痛さがあふれ出ていたのだ。
『いや…書くしかなかったと言うべきか…。』
(あ…これヤバいやつだ…)
『娘の葬式をしても納得がいかなかった。
なぜ、急に娘は死んだのだ?
重い病気だったのは確かだが…そんなに急に逝くものなのだろうか…。
本当に娘の死は自然死だったのかと…
その謎を解くため、自分が納得するために――
娘のかかりつけだった医師に聞くことにした。 』
『――するとどうだ。
医師が言うには、娘は、あと三年は生きれるはずだったことがわかった!
医師もあの死には不信感を持っていたらしく、個人的に調べていたらしい。
安静にしていれば、生きれていたはずの人間が、どうして急に死んだのか――
病気の急な進行は見られなかった。急に動き回っていたわけでもない――
そんな不信感を覚えて、医師も娘の死を調べていたらしい。 』
どうやら屋敷の主人も医師も不信感を覚えるほどの異常事態だったらしい。
さて…ここからどうなる?
『私は感激した!
医師も娘の死を追っていたことに!
私と同じ不信感を持ってくれていたことに!
だが、医師とよく調べてみても…わからなかった…。
八方塞がりになりかけ…私はあることを医師に提案した――。
――娘の死体を調べてみようと…
実は…秘密裏に娘の死体を防腐処理して、屋敷の地下に残していたのだ。
これがどれだけの重罪なのは百も承知!
娘の死がわかるならば…たとえ罪を背負っても…私は真実を知りたい!
――そうして医師も私の覚悟を知り、了承してくれた。
そして、屋敷の地下に案内し、娘の身体を見せる。
そこからは私も手伝い、死体の状態や、メスを入れ、脳や内臓などの臓器を調べた。
娘の身体がバラバラにされていく――
そんな光景に吐き気を催しかけたが――
――それでも私は調べ続けた。
全ては真実を知るために―――
――そうして調べてから、数日がかかった。
外傷はなく、内傷でもない…薬や毒の類のせいでもない――
ただ――まるで精気か、魂でも取られたかのような…
そんな感じを覚えるほど綺麗だったと医師は言った……
……やはり自然死だったのだろうか?
私が悲しみを受け入れられず、そう考えられないだけで、そう決めつけていたのだろうか…?
私は――あの紫陽花の咲いているところに向かう。
娘が喜んでいた場所に向かう。
数日……地下にいたので気分を変え、落ち着かせたかったのだ。
紫陽花は使用人たちに面倒を見てもらっている。使用人たちも喜んで面倒をしている。
使用人たちも観たいというのもあるかもしれないが…
娘が喜んでいたあの紫陽花をできるだけ長く咲かせていたいのだろう…。
娘はそれだけ家の者に慕われていた…。
――さすがに…もうそろそろ枯れる頃だろうと…
最後に一目……見ようと思った。
しかし――
最初に目に飛び込んできたのは――
使用人たちが倒れている姿だった。
私は彼らに声をかけたが、誰も返事はしなかった。
身体は温かいのままだし、呼吸はしていた…。
地下にいる医師を呼び、状態を見てもらう。
しかし、やはりわからないと言う結果が出た。
寝ているようにも見えるが…そうではないとわかってしまう…。
――これはまるで娘と同じだ。
確認したが――
体温以外は、魂が抜き取られて様な状態も同じだ。
医師と地下でずっと調べていたから、確認しただけで状態がわかった。
どうして娘以外に…
…と混乱している私を尻目に何か気配を感じた。
『誰だ!?』
使用人の誰かと思い声をかけたが…
返事はなかった…。
変わり…来たのは―― 』
――ガタッ
「「「「!?」」」」
そこまで読んだところで、後ろの扉から音が聞こえる。
ギシ…カタ…
古い廊下の床を歩いている。
そして、段々こちらに近づいていることがわかる。
この屋敷には、僕たち以外にはいないはず…
依頼人からもそう言われた。
「…万奈美さん、橙、後ろに」
「はい」
「わかったっす!」
ギシ…ギシ…カタ…
止まった。
どうやら扉の前に止まったみたいだ。
どうやら…この屋敷での1日は長くなりそうだ…。




