第71話 よろしくお願いします
イエロー兄さんの恋愛講座を聞き、それなりに恋愛について知れた。
そして、僕は現在、部室にいる。
部長の万奈美さんや、楓さん、橙と恋人になった…。
はずなんだが…。
「……」
万奈美さんは遠くにいるし――
「……」
楓さんは、学校に来てからこっちをジーっと見ている。
「グ~…グ~…」
――橙は……机の上で寝ている。
考えてみれば、急に付き合うことになったから…みんな(橙以外)気まずくしている。
「――あの~すいません。万奈美さん、楓さん、……あと橙?」
「!!」
「……」
「…フガッ」
万奈美さんはビクッとし、楓さんは平静のまま、橙は寝ながら挨拶?している。
「一応、みなさんと…恋人…になったわけなんで…」
「~~~」
「……」
「…グア」
万奈美さんは顔が真っ赤になり、楓さんはフードで少し顔を隠す。
橙は寝言で返事しているよ。
「これから…よろしくお願いします…」
他人行儀ではあるが、これが今の僕たちに距離感と言うことなのだろう。
「は……ひゃい、よろしくお願いしましゅ…」
万奈美さん…緊張のせいで噛み噛みになっている。
「……よろしく」
楓さんは、フードで顔を隠しながらそう言った。
「グググ…ガガガ…グガウガ…」
…『よろしくお願いします』と言っているのかな?
聞こえているかは知らないけど…。
とりあえず…今言いたいことは言えたから…
今回はこの辺で帰る…。
「――…ねぇ」
「!?」
いつの間にか、楓さんが僕の傍まで来ていた。
相変わらず顔を隠したままだが…。
「どうしたんですか?」
「…一緒に……」
ぼそぼそと何か言っている。
「?」
(なんだろう?)
「一緒に…デート…しよ?」
「………え?」
楓さんからデートに誘われると言う、異常事態が発生し――
――思考がフリーズしていた。
「――えっと……デートですか?」
ようやく出て来た言葉がそれだった。
「うん…」
フードで隠れてわかり辛いが…
「……」
照れていることが何となくわかった。
「ハワワ……!?」
それを見ている万奈美さんは、さらに赤くなり、言葉が上手く出せていない。
「グ~…グ~…」
橙は相変わらず…。
「え~と……」
この場合はどうしよう?
不意打ち…その言葉がふさわしい…。
まさか楓さんからデートの誘いがあるなんて思いもしなかった。
これを断ったら楓さんとの距離が開くかもしれない…。
そうなると…今後の任務にも支障が…。
「――じゃあ…行きますか?」
考えた結果、行くことに決めました。
「それで…どこに行きます?」
「……行きたいところがある…」
どうやら楓さんは、行きたいところがあるらしい。
「それ…いったい?」
「……『妖怪博物館』」
『妖怪博物館』――
どうやらそこが楓さんが行きたいところらしい…。
「妖怪博物館…」
オカルト部っぽいと言えば、そうだけど…万奈美さんや橙とは別のベクトルだ。
「妖怪に興味が?」
「そのことも話すから…来てね」
妖怪博物館に行けば、楓さんが妖怪になぜ興味があるかわかる。
「うん…わかった」
「じゃあ、またね」
そうして僕は部室を後にする。
~オカルト部サイド~
「――思い切ったすね~楓ちゃん」
「え!」
「起きてたんだ…オレちゃん…」
九朗が部室を去った後――橙が起きる。
「いや~寝てたんっすけど、ちょうど九朗君が話す時に起きてたんっす」
「結構前に起きてたんですか!?」
九朗が話している時に起きていたことを知って、万奈美は驚愕した。
「…よく眠れてたね?」
「起きるに起きれなくて…」
眠ったふりをして聞いていたが、九朗が三人に対して大事な話をしていたので、起きるに起きれなかったらしい。
「でも、部長…九朗君から離れすぎっすよ?」
「いや、その~…」
橙の言葉に、恥ずかしがる万奈美。
「それで…楓ちゃんは何で九朗君と一緒にデートを?」
「……」
遠くを見つめながら考える楓――
「――彼なら…」
「…信じてくれると思ったから…」
そう言う楓は、確信めいたものを持っていたが――
――どこか寂しそうな顔でもあった。
「…あの事ですか?」
「……うん」
万奈美の言葉に頷く楓――
楓の秘密…それはいったい――




