第68話 めぐみ(怒)の初対面
UMA騒動が終わって――
学園生活&任務に戻った……はずだった。
僕は、現在――
放課後に、部長の友人である『邑楽めぐみ』という女性に誘われ、部長と一緒に彼女のお屋敷にお呼ばれしている。
気品あるただすまいからお嬢様かと思ったけど、土地の大きさや大きな屋敷を見て、一つ頭抜けているお嬢様だとわかった。
そして、驚いたことに――
そこには、僕の隊長であるウルフマンがいた。
前に話された三人の彼女の一人であることがわかった瞬間だった。
「こちら、私の恋仲である王守大牙さんです」
紹介されたけど、もう知ってる。
だが――
「――初めまして、王守大牙です」
「戸影九郎です…初めまして」
僕たちは、アイコンタクトで連絡し、初対面のフリをした。
〜ウルフマンサイド〜
めぐみから――
『友人が人間関係で困っているので、一緒にいて下さい。もしもの時の要員として――』
――と言われたから、痴情のもつれかと、勝手に推理したけど……
まさか来たのが、部下だったとは思わなかった。
アイコンタクトで、初対面のフリする事にしたけど…。
ブラック…お前……何したの?
こいつは、確かにあまり話すのが得意じゃないし、暗い顔をしているから誤解されやすい。
それに加えて、不良五十人を倒したというのもある。
でも、最近は部活に入って、人間関係を築いているって、言ってたけど…?
(大丈夫って思った途端にこれか…)
めぐみは基本感情は表に出さない。
そのめぐみが、ブラックが入った途端…
直感でキレてる事がわかった。
うまく隠してるせいか、ブラックには全く気づかれていない。
付き合いのある程度長い俺だから気づけたくらいだ。
めぐみが怒るなんて――
本当に何したの!?ブラック!?
〜ブラックサイド〜
隊長が『何やったの?お前?』って――
目で訴えている。
隊長が、あんな目をしているってことは――
僕は、彼女に何かしたのだろうか?
邑楽めぐみとは初対面だし、道で顔を見た記憶もない。
それでも隊長が、あんな焦りを感じる目をしているということは、相当まずい事をしたという事だろう。
「――お茶をどうぞ」
「あっ…どうも…」
考えているうちにお茶を出された。
「九郎さんは、万奈美さんの部活の部員で合ってますか?」
「ええ…そうですが?」
世間話が始まった。
「中々優秀だと聞いていますわ」
「どうも…」
褒められた?
いや、褒めたというより確認に近いか…。
「さて――」
カップを置き、めぐみさんがこちらを見つめる。
「今日来てもらったのは、万奈美さんの相談で来てもらったからです」
部長の相談?いったい…何の?
「あなた――」
「万奈美さんと「ある件」でキスしたそうですね?」
「――…っ!?」
キスしたことを言われ、驚いてしまう。
(――なるほど…その相談か…)
キスしたことを言われ、部長の顔が真っ赤になっている。
「――…確かにしましたけど……」
僕は、部長とキスしたことを認めた。
「正直は美徳ですね…しかし――」
こちら見る目が、心なしか鋭くなったような…。
「――あなたはその時どう思いましたか?」
(どう思った?)
そう言われても――
「部長…万奈美さんを助けることに必死で…あとは何も…」
「…そうですか」
こちらとしては助けることに集中して、他のことは考えていなかった。
「言い方を変えましょう。あなたは万奈美さんとキスした時、動揺はしましたか?」
「動揺…」
「動揺したか?」と言われ、僕は考える。
(動揺していた……そんな感じはなかったな…)
「――そう言うのはないですね…」
あの時は、部長を助けることに集中していたから、そんなこと思う余裕はなかった。
(申し訳なさはあったけど…)
助けるためとはいえ、好きでもない男とキスしたわけだし……。
「――つまり…」
「…あなたは彼女の事を「女性」として見てないと?」
(……え?)
その言葉に僕は固まってしまう。
女性として…その言葉はスゴく重い…。
部長を女性として見てないわけじゃない。
だから、僕なりに気を使ったつもりだ。部長も何となくそういったことは感じ取っているはずだ。
でも――
「――…わからないです」
「女性」として――
そう言われて、僕は違和感を覚える。
姉以外に気心を許した相手――のはずだ。
しかし――
部長が毒にやられた時、僕は少し焦りを感じた。
この人を死なせてはいけない――
だから急いで部長の現状を確認して、薬を急いであの方法を使い飲ませたのだ。
「――万奈美さんは良い人です。」
「短い間ですけど…家族以外で気心を許せた人でもあります…」
「だから……もう一つの「家族」…として感じているんだと思います」
めぐみさんは手を口に当てて、何かを考えている。
部長は、まだ顔は赤いけど――
恥ずかしいような…嬉しいような……そんな表情をしている。
隊長は驚いている。
「――…なるほど、わかりました」
時間にして1分くらい考え込んでから、口を開くめぐみさん。
「あなたが、彼女のことを大切に思っていることはわかりました」
どうやら理解はしてくれたらしい。
「今回、万奈美さんが相談された内容は、キスしたのにあなたが平然してモヤモヤしていたそうです」
「――あ…え…あ…」
めぐみさんの言葉に、部長は壊れた家電みたく煙が出ている。
「そうだったんですか…」
なるほど…だから部長はめぐみさんに…。
「あなたが動揺していない理由と、万奈美さんを大事にしている理由はわかりました…」
めぐみさんは優しい笑顔でそう言った。
「――しかし…」
(…?)
「それでも女性の初めてを奪ったのは変わりありませんし、動揺してないことは女性の一人としてムカつくので、許しません」
(あれ~…?)
許される流れじゃなかったの?
めぐみさんの先ほどまでの優しさが、一瞬で別の圧力に爆上がりした。
「――ですから彼女と責任取って付き合いなさい」
(え?……今…え?)
なぜか付き合う流れになっていることに思考が追い付いていない。
「万奈美さんに聞きましたけど――」
「あなた…彼女とあと二人と「運命の人」認定されてるんですよね?」
「いや…あの…そうです…けど…」
確かに入部する時言われたけど…。
あれは、もしかしたらそうなるかもよって…ことのはずだけど…?
「――だから早いか遅いかの違いなので、彼女とあと二人と付き合いなさい」
さらに――楓さんと橙と付き合うように言われた。
「ちょっと待ってーー!!」
「何ですか?」
「いや、何ですかじゃなくて!」
百歩譲って部長はわかる!
でも二人は関係ない!確かに親しくはなっているけども――
「――二人のことは…また別の話だと思います」
僕は、めぐみさんの説得を試みる。
「それに…二人がなんて言うか…」
「ああ、大丈夫です。二人には話を着けていますから」
すでに交渉していた!?
「二人もあなたなら良いと言っていましたよ?」
まずい…逃げ道がなくなってきた。
(こうなったら…部長に援護射撃を…)
そう考え、部長の方を見る――
「――…って!ぶちょーーー!?」
顔が赤く、湯気が出て――気絶している。
「大丈夫ですか!?」
「大丈夫です。気絶しているだけですから」
いや、確かにそうですけど…。
「彼女、恋愛は苦手で気絶するかもって言ってましたから」
いや…これ苦手って…レベルか?
茹でられたタコの如く気絶してるんだけど?
「万奈美さんも彼女たちが大丈夫ならいいって言ってました」
すでに手回し済み!?
使いたくなかったが…隊長に…。
隊長に助けてもらおうと、隊長の方を見たが――
『――すまん。無理だ』
とアイコンタクトで答えられた。
(ええーーーー!!)
部長に続き…隊長の助けも不可能となり――
「――で…どうします?」
――僕は陥落した。




