第65話 帰り道
ピンク兄さんと二人きりで話し――
部長が目を覚ました。
「――うん、体力はまだだけど、もう完全に解毒されてるわね」
「ありがとうございます。桃五さん」
部長の身体に異常がないか、兄さんが検査をした。
その結果、毒は完全に解毒されてるらしい。
「よかったすね!部長!」
「よかった…」
楓さんも橙も嬉しそうだ。
「それじゃ、私が万奈美ちゃんを背負って、駅まで連れて行ったら…私の仕事はとりあえず終了ね」
「悪いですよ。自分で歩いて行きますから…」
そう言う部長だが――
「まだ体力が回復してないんだから背負われときなさい!」
「でも…」
「いいから……年長者の言葉には言うことを聞くものよ?」
優しく微笑まれ、説得する兄さんに――
「……わかりました」
部長は折れ――背負われる。
「重くないですか?」
「平気よ。女の子一人くらい」
そうして僕たちは山を下り、駅まで行く。
「――それじゃあ、九朗」
「はい…」
「万奈美ちゃんをちゃんと親御さんのところまで連れて行くのよ」
「わかった…」
駅に到着し、兄さんから僕に部長を任される。
「それと……身体に気を付けてね」
兄さんは優しく微笑んで、そう言ってくれた。
「…兄さんもね」
「ええ…」
姉弟の中で世話焼きなところは、昔から変わってない…。
「万奈美ちゃんも当分は安静にしてね」
「はい。何から何までお世話になりました」
「気にしないの。こっちの仕事はアナタのお陰で早く終わったんだから、むしろこっちが感謝したいくらいよ」
「姐さん!またどこかで!」
「お世話になりました」
「ええ、またね。橙ちゃん、楓ちゃん…」
「九朗のこと、よろしくお願いね」
最後に兄さんは、お節介ものらしく…そう言った。
「任せてください!姐さん!」
「ええ、任せてください」
「…大丈夫」
三人はそう言い、兄さんはゆっくりその場を去る。
僕たちは、電車がくるまでホームのベンチに座っている。
「――いや~…今回は色々あったすね~」
橙はベンチに座りながら、今回のUMA騒動を振り返っている。
「……ホントにね」
楓さんも同じらしい…。
「ツチノコより珍しいもの見たっすね」
「うん…」
この二人が言う珍しいものとは――
「九朗君のお兄さんが現れるんっすからね~」
そう……僕の兄だ。
「…人の兄弟を「珍獣」呼ばわりしないでくれません?」
これは……さすがに言っとかないと…。
「そうですよ。九朗君やお兄さんたちに失礼ですよ?」
――部長も言ってくれた。
しかし、橙は――
「だって、いきなりガタイの良いピンクの全身タイツのガスマスクの男が現れたら、そう思っても仕方ありません!?」
「……」
そこに関しては――
(……まぁ、確かにアレは…)
そう思われても仕方ないな…と僕は橙に同意する。
「まぁ…確かに…アレは…」
部長も同意しちゃったよ…。仕方ないけど…。
「それに十人姉弟だったんすよ?九朗君!」
「はいはい、十人姉弟……十人?」
その単語が出てきて――
部長は少し……フリーズしている。
「――マジですか?」
「はい!」
「昨日言ってたんっすよ!姐さんが!」
話している間眠っていて、体力が減少していた部長にとっては――
「……」
すごい情報だったらしい。
「――……九朗君?」
部長が確認するかのようにこっちを見る。
「…本当ですよ」
「――…すごいですね」
やっと出て来た言葉がそれだった。
「でしょ!?それに九朗君の兄弟、UMAにも関係してるんっすよ!!」
正確には、UMAじゃなくて、「こっちの世界」の生き物なんだけどね…。
「こっちの世界」の生き物が、生態系…いや…。
世界を壊しちゃう前に捕らえたり、管理するのが、組織のやるべきことの一つ…。
支配する世界が壊れちゃったら、まずいしね。
姉さんのせいで、こっちの世界がピンチで……それを助けるって…
――もはや、魔法少女の役目だよね…。
「――…そういえば、私が気を失う前のこと聞いていいですか?」
「!!」
(――ついに…来てしまった…)
部長が起きた時は、体調を考慮して言わなかった…。
「私、その時の記憶なくって…」
(――どうしよう…)
一晩中、考えたけど――
言い訳できる理由は、いくつか思いついたけど…。
(どう言い出したものだろう…)
どう言い出しても今後の関係が変わっちゃうよ!
いや、確かにあの時は部長が危なかったし、飲める状態じゃなかった…。
ああするしかなかったんです~~。
そう――心の中で悶えていると…。
「ああ、あの時のキ――」
「!?」
言い出しそうになった橙に――
「――ん!?」
凄い速さで口を塞ぐ……楓さん。
「それは…九朗君から…」
楓さんは昨日……「僕が自分からと言う」という言葉を覚えていたらしく…。
その言葉を実現させるために、橙の口を塞いだ。
「…九朗君?」
「あー…そのー…」
もう覚悟を決めて、事実だけを言おう…。
「部長が…倒れた時にですね――」
――僕は、ありのままを部長に話した。
ツチノコの捕獲する時、部長が身体を張って捕まえた時、毒にやられ…
その時に――
「――…っと言う訳でして……」
話を終えて――
解毒薬の飲ませる時にした行為まで言った時、部長は――
「………」
平然としているが、耳が赤くなっていた。
「その……」
「すいませんでした!」
部長に全てを言い終え、僕は全力で頭を下げ――謝罪する。
それに対し、部長は――
「…いえ、九朗君は私を助けるためにそういった行動してくれたのですから、私がとやかく言うつもりはありません」
平然と、冷静に、淡々と――そう言ってくれた。
「……ただ」
「電車では少し…いえ……」
「かなり離れてくれると…ありがたいです」
そう言って――
身体と顔を反対方向に向けて、自分がどんな表情しているかを隠している。
「…わかりました」
僕はその言葉に従い――
部長と僕は、四両ある電車の端まで行き……
そのまま町まで帰るのであった。
~組織サイド~
「――もしも~し、私よ~」
九朗たちから去った桃五は、ある人物に連絡していた。
「――ピンクか…パープルから事情は聴いている」
冷静に淡々と言葉を言うのは――
「あら、それはよかったわ……『ブルー』――」
レクス・リザードの右腕であり――
リザード兄弟の長兄――
――『ブルー・リザード』
「まさか、ブラックに遭遇するとはな」
「ええ、あの子元気そうだったわよ」
ブラックのことを話すピンク――
「…そうか」
それに対して、ブルーはそれだけしか言わなかった。
「相変わらずね~」
「……あとで礼の言葉を連絡する」
「そうじゃなくて、もう少しどうだったか聞くものよ?」
「善処する」
冷静にそう言うブルーに、ピンクは呆れた表情をする。
「3日後に会議だ。遅れるな」
「はいはい」
そう言って、兄弟の通話は終わる。
「ブラック……」
家族写真――
まだ、両親が生きていた頃に姉弟全員で撮った写真。
何を思っているかはわからないが――
ブルーは、ただじっと…それを見ていた。




