第64話 会話
食事を終え――
みんなが眠る時間が来て、交代で部長の看病をすることに――
最初は、楓さんと橙に――
次に、僕と桃五兄さんがすることに――
「やっと二人きりになれたわね。九朗…いえ…」
「…ブラック」
「……そうだね。ピンク兄さん」
兄さんと僕の番になり――
僕たちは、二人で話す機会を得た。
「今回のことはありがとね」
まず、兄さんから感謝の言葉が出てくる。
「事を荒立てないために私と紫七、部下数名の少数で来たんだけど…」
「正直、捕獲できるか不安だったのよね」
(確かに…)
基本、組織は身を潜めている。
だから、魔法少女に見つからないために少数で動くことが多い。
しかも今回のターゲットの「ツチノコ」は小さいし、早い、機転も効く。
そういったものを兼ね備えたやつだった。
「パープル兄さんを呼んだのって…」
「ええ…」
パープル兄さんを呼んだ理由は、僕の予想通りらしい…。
「最悪…最終手段であの子と…あの子の作った「毒」で対処するつもりだったわ…」
紫七兄さんは「パープル・リザード」……。
戦闘能力は中の下だが、「毒」に関しては右に出る者はない。
その毒の種類、攻撃力、殺傷能力はとんでもない。
部長たちが捕まえてなかったとしたら……
考えたくはないが、ここら辺一帯の生物がいなくなっていただろう。
人間も含めて……。
「……本当にうまくいってよかったよ」
「ええ…本当に…」
ピンク兄さんもそこは同意した。
兄さんは基本、無駄な殺生はしない人間だ。
パープル兄さんの毒を使いたくはなかったらしい。
「――しかし…」
「?」
「あんたの周りにいる女子……」
「肝が据わりすぎじゃない?」
「……」
(うん…たぶん……それは――)
「部長たち…いろいろ‘‘経験‘‘してるからね…」
「‘‘経験‘‘?」
「うん……実は――」
ピンク兄さんに今までのことを話した。
もちろん、オカルト部のことも――。
「………すんごいわね。あんたの部活…」
兄さんも驚いてる。
「幽霊」なんて単語が出たら、それは驚くだろうけど……。
その前に信じてくれたのは……。
「あんたがもう少し嘘つきなら、そんなこと信じられないんだけど…」
僕が家族に対して、嘘を一切言わないからだろう。
「でも、今回はそれに助けられたわ」
兄さんの言う通りではあるけど……正直、僕も驚いた。
「あそこまでとは…知らなかったけどね…」
毒持ちの未確認動物を追い詰めたり、身体を張るとは思わなかった。
「あの子たちが魔法少女の可能性は?」
そう聞かれて、僕は――
「――その可能性は十分にあると思うよ…」
あそこまで肝が据わっていると、そうとしか思えない。
「でも、まだ‘‘可能性が高い‘‘ってだけ…」
「そうね…そこら辺は慎重に行かないとね…」
(あの子たちが、そうとは思いたくないしね…)
ツチノコの捕獲に助けられたピンクは、そう考えたかった。
「でも…」
それでも……。
「ウルフマンとアンタが、組織の‘‘要‘‘よ」
組織の人間の一人として…下すべき判断はしなければいけない。
「そこは覚えておいてね」
「わかっているよ……兄さん」
――ブラックもわかっている。
それが自分の‘‘任務‘‘であることに…。
「それで……」
「話は変わるんだけど…」
(何だろう?)
また何か重要なことを話すのだろうか?
「あんた…」
「……」
「……どの子がタイプなの?」
「………………………………え?」
あり得ない言葉に…
少しの間、フリーズしてしまった……。
「――兄さん……何…言ってるの?」
言葉の意味が分からず、兄さんに真意を聞こうとする。
「だって、あんた…姉さん以外の女性に付き合いないわよね?」
「まあ…そうだけど…」
訓練の時も、組織にいた時も…そういった付き合いはなかった。
「『イエロー』みたく…女の子をナンパすることはないし…」
「……イエロー兄さんは、プレイボーイだからね…」
イエロー兄さんこと…『イエロー・リザード』はナンパが趣味な怪人だ。
良く誘っては、当たりハズレを繰り返していた。
……姉さんに飽きれられるくらい。
「それは、そうだけど…あんた基本人と関わろうとしないから…」
「今回は任務だから、関わっただけだよ…」
「それでも――」
「あの状況でキスするとは思わなかったわよ…」
「……」
そう言われて、黙ってしまう。
任務で人と関わっているのは、間違いない――
間違いないが――
「――…少なくとも死んでほしいとは思わなかったよ」
「へえー…」
兄さんが、なんかニヤニヤしてるけど…。
「他意はないよ…兄さん」
「はいはい、そう言うことにしてあげますよ」
「……」
少し兄さんを睨む。
「ふふ、楽しみだわ~」
それでも楽しそうにする兄さん。
――ガサッ
「「!?」」
テントの方から音が聞こえる。
(確か、あのテントは…)
「――……」
そこから出て来たのは――部長だった。
ツチノコの毒にやられていた部長の寝ていたテントだ。
「部長…」
「九朗君……」
(まさか…聞かれた?)
「――あっ……」
「!」
こちらに来ようとして倒れそうになり――
そんな彼女の身体を支えるように抱きかかえる。
「あ…ありがとう…九朗君」
「無理しないでください。部長」
「解毒したとはいえ、体力は回復してないんですから…」
まだ、体力が回復していない。
「――あれから…どのくらい経ちましたか?」
「…24時間も経っていないから大丈夫ですよ」
解毒してから12時間経ってない…。
さすがパープル兄さんの解毒薬と言うべきか…。効果抜群だ。
「そう…ですか」
体力が戻り切ってないせいか、立っているのも辛そうだ。
「無理しないで、休んでいなさい」
ピンク兄さんも部長に休めと言っている。
「桃五さん……」
「万奈美ちゃんのお陰でツチノコ捕まえれたんだから、功労者であるあなたには回復してもらわなきゃ困るわよ?」
兄さんは、部長を労いながら休むように言った。
「…はい……わかりました」
「それじゃあ…部長、テントに戻りましょう」
「はい……」
「兄さん、また後で…」
「ええ、また…」
――そうして、部長をテントの中に戻す。
「――…九朗君…ありがとう…」
「構いませんよ…部長のお陰で捕まえられたんですから…」
部長をテントにある布団で寝かせる。
(ん?…そういえば…)
「部長…なんであの場所にいたんですか?」
考えてみれば、部長が虫取り網で捕まえる時にちょうど良くいた。
まるで――
ツチノコが、そこに行くことがわかっていたかのように――
「それは……占いで…わかったからですよ…」
(え……あれ占いなの?)
予想外の答えに驚く僕。
「ふふ……言った…でしょ?」
「私の…占いは…よく…当たるって…」
疲れているはずなのに…笑顔でドヤを見せている。
「ふふ……そうでしたね」
その顔に思わず、笑ってしまう。
「…あと一つ…聞きたいん…ですけど…」
「なんですか?」
何を聞きたいんだろう?
「私…倒れた時の…記憶が…ないんですけど…」
「!」
「何か…ありました?」
「それは…」
――言うべき…か?
解毒した時のことを言うべきか、悩む。
「……部長が回復したら話します…」
「…そう…ですか……それじゃあ………スー…」
話すのが、限界だったみたいで、そのまま眠りについた。
「――…スー………スー………」
(今、話さなくて…よかった…)
部長の呼吸も正常で大丈夫そうだ。
(……とりあえず…部長が明日回復したら、話そう)
そう決める僕であった。
「――なんて言ったもんかなー…」




