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第62話 『ツチノコ捕獲作戦』

 『ツチノコ捕獲作戦』


 まず、僕たちはターゲットの補足をすることを始める。


 逃げて行った方向とその身体の跡――


 跳ねた跡、転がった跡、蛇の腹の跡、木々の折れ方を見たりして――


「――発見したわ」


 桃五兄さんの声が聞こえる――。

 作戦開始前にもらったインカムを使い、全員に情報を共有。


「――こっちの準備もできましたよ」


 紫七兄さんの準備完了の声も聞こえる。


「――じゃあ……」




 ――始まる。


「…作戦開始よ」


 ツチノコとの追いかけっこが――!!




「楓ちゃん、やって…」


 シュ――!


 桃五兄さんの言葉で、楓さんが石を投げる。


 ガサッ――!


 それに驚いたツチノコが跳ねる。


「行ったわ!」


 それと同時に僕と兄さんも森を駆ける。


「現在、北に向かって進んでいるわよ!」


「――了解、そのまま追い込んで下さい」


 ターゲットの位置と僕たちの位置を確認しながら、オペレートする紫七兄さん…。


「待てや!ゴラァーーーー!!」


 桃五兄さんが大きな声を出し、走る。

 兄さんの足なら追い付くことはできずともついてはいける。

 そして、兄さんの派手な防具の恰好で、そいつの目は兄さんにくぎ付けになる。


「――九朗、方向修正!」

「はい!」


 僕と楓さんはツチノコに近くにいるようにしながら、石を投げたり、急に現れるなどして、方向修正を担当する。


 それに加えて――


「――ちっ、逃がした!」

「追うわよ!」

「はい!」


 たまに捕まえに行こうとする。もちろん方向修正をしながら――

 その効果で、罠があるとは気づかせない。


(――ここまでは順調…)


 ターゲットには、気づかれた様子もない。


「――…そろそろよ。紫七…」

「了解、兄さん」


 そろそろ目的地の場所だ。桃五兄さんが、紫七兄さんにも声をかける。


(……ここまでは良い)


 問題は……失敗した場合だ。

 ここまでは来た。恐ろしく順調だ。

 順調だからこそ予想外なことは起こり得る。


(最悪の事態も考えないとな…)


 …と言っても、ここまで来たら、やれることは限られてくる。


(やれることをやろう…)


 最悪の事態が起きないように…。


「――…距離1000………900………800……」


 ――紫七兄さんが距離を数える。


「…700………600………500………400……」


 ――半分を超えた。


「…300………200………100……」




「…今!」

 

――バッ!!


 目的に到達したツチノコ――


 そこに向かって、多方向から網が発射される。


 匂いを消したお陰か、ツチノコはそのまま真っ直ぐ行っている。


 これで捕まえられると思った……。




 …しかし――


 ツチノコは、跳んでいる途中で身体を縮め――


 尻尾を前に出し――


 後方に跳んだ!


 

(――マジか!?)


 まるでばねの様に縮んでから、後方に跳ぶなんて!


 知恵があるのか、本能から来る行動なのか…今はそんなことは良い!

 

 まだ、僕たちが後ろから近づいてる。


 そこで捕まえれば…!


「チャンス!」


 桃五兄さんがそれに気づき、捕まえようとする。





 ……しかし――


 ツチノコは体を丸め――


 後方に行く勢いのまま――


 超高速で回転する!!



 バッッッッッ…チーーーーーーン!!!



 兄さんの手を超高速の回転で弾く!!


「ッ……!?」


(嘘でしょ!?)


 兄さんの手をあんな方法で弾くなんて!!


(まずい!このままだと逃げられる!!)


 あの回転速度の勢いだと遠くまで行ってしまう!!


 ……だが、そのせいでツチノコに触れられない。


 失敗した……そう思った……。





 しかし――


「――狙い通りですね!!」


 ツチノコの進行方向に――


「ええ!そうっすね!!」


 部長とおれんじがいた!!


「「――ふん!!」」


 部長と橙は――


 手に持っていた虫取り網で、ツチノコを同時に入れる!!


「「えい!!」」


 そのままツチノコが入った網を地面につける!


「オレちゃん!あとはお願い!!」


 橙は虫取り網を押さえたまま……そして、部長は――


「ええーーーい!!」


 ――網の上に身体を乗せる!!


「コラ!暴れないの!!」


 部長は網越しとは言え、毒蛇に掴みかかるとは……。

 その度胸に感銘を受けてしまった。


「…よくやったわ!万奈美ちゃん!」


 感銘は受けながらも兄さんや僕、楓さんもそこに向かう。









数分後――

 何とか、捕獲用の箱に入れることに成功した。


「――みんな、お疲れ様」


 桃五兄さんがそう言い、僕たちを労う。


「特に橙ちゃんと万奈美ちゃん…ありがとね」

「いえいえ」


 兄さんも部長と橙が取ったあの行動に感心している。

 特に、部長の毒蛇に臆することなく、その身を投げ出す行動に……。


「でも、さすがに危ないから、次は絶対やめなさい」

「…あはは、そう…です…ね」


(ん?)


 部長の様子がおかしい?


「あれ……おか…しい……な…」


「なん……だか……から…だ…が……」




バターーーン……


「!?」

「部長!?」

「どうしたんすか!?」


 いきなり倒れた!?


「ハァ……ハァ……」


 息が荒い。これは……。

 僕は、部長の身体を見る――


「――…っ」


(コレは!?)


「兄さん!部長が毒にやられてる!!」

「!?」


 腕のところに噛まれた跡があった。つまり毒を貰ってしまった。


「紫七!」

「はい!」


 桃五兄さんが、紫七兄さんに言葉をかけ――

 紫七兄さんが、トランクボックスの中から何かを取り出す。


「九朗、コレを!!」


 紫七兄さんが投げて来たのは――

 透明な入れ物に?緑色の液体?


「その薬を飲ませてください!」

「!?」


 そう言われた僕は、すぐに蓋を開け――

 部長の口元にその薬を持っていく…が…。


「――ハァ…………ハァ…………」


 想像より毒の進行が早く、飲み込める状態じゃない。


(…仕方ない)


 こんなところで迷っている場合じゃない。


(恨まないでくださいね…部長)


 ゴッ――!!


「ちょっ!?」

「何やってんっすかーーー!!?」


 僕は薬を飲み、それに驚く楓さんと橙…。


 ――説明してる暇はない。


 薬を口内に含み――


 そのまま部長の顔に近づけ――


「なっ…!」

「はわわわわわわ…!?」

「あら~~」

「おお……」


 後ろから楓さんたち以外にも兄さんたちの声が聞こえるが…今は無視。


 お互いの唇をつけ――


 部長の頭を飲み込みやすい体制にし、薬を投入する。




数分後――

 なんとか薬を飲ませ終わり、一息つく。


「「……」」


 楓さんと橙がこちらをまじまじと見ている。


「九朗……あんた、中々大胆ね~」


 桃五兄さんが、ニヤニヤと笑みを浮かべている。


「正直、驚きましたねー」


 紫七兄さんは、素直にそう言う。


「部長があんな状態だったんだから…仕方ないでしょ…」


 ああでもしないと飲み込めないほど、毒の進行が早かった。

 正直、あんまり他意はない。


「でも、あんたがキスするなんて思いもよらなかったわ~」


(楽しそうだな…)


 あそこまで、信頼関係を築いたのに死なせるのは…。


「まあまあ…からかうのは、このくらいにしましょう」


 紫七兄さんがそう言い、捕獲したツチノコが入っている入れ物を持っている。


「とりあえず…僕はツチノコを下で待たせている人たちに渡して、そのまま本社に帰るよ」

「わかったわ…私は万奈美ちゃんの体調を見てから行くわ」


 紫七兄さんはツチノコを組織に渡して戻り、桃五兄さんは部長の体調を見てから戻るらしい。


「状態を確認したけど、明日には元気になっているとは思うわ」

「わかりました。では…」


 そう言って、紫七兄さんは森の方に消えていく。


「じゃあ…九朗、楓ちゃん、橙ちゃん…」


「キャンプの準備、するわよ!」


「了解」

「…はい」

「わかりました~」



 こうして……『ツチノコの捕獲作戦』は終了した。

 最後の方で冷や冷やしたが……誰も死ななかったからよかった…。


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