第48話 入部
昨日の件で先輩たちに厳重注意をされてしまった。
『これからは気を付けろ』
確かに、昨日の件は、僕の不注意だった。
(…次は絡まれる前に避けよう)
そう反省をし、学園に向かう。
通学路を通ると生徒たちがヒソヒソと噂している。
「――黒竜だ」
「無傷の――」
どうやら昨日のことで、異名みたいなものが付いたらしい。
(――無傷の黒竜……か)
その異名に――
「……う~ん」
僕は、あまり納得いかなかった。
(素人相手じゃなぁ……)
自分は人間より強い。その自覚があったせいかもしれない。
あと、姉さんの強さを見ているせいかもな。
だからあまりうれしくない。
(まぁ…いいか、言わせておこう)
何か言っても面倒事になりそうだ。
そう判断して、俺は学園に向かうのだった。
「……」
「……」
隣にいる『葉隠 楓』…さん。
黙っているけど、視線を感じる。
(…どうしたんだろう)
昨日はこちらを全く見ていなかったのに――
(あ…昨日の件でかなー)
そう、昨日の件――
隣の席に‘‘あんなこと‘‘をしたやつがいたら、嫌でも気になるか。
そう納得し、僕は気にせず普通に授業を受ける。
その間も見られていたけど――。
「――あ…あの」
「?」
俺は机の前で誰かに声をかけられる。
「き…昨日はありがとう!」
(……あ!)
昨日、いじめにあっていた――
「昨日の…え~と…」
名前知らなかった。
「あ、ごめん。そういえば自己紹介がまだだったね」
どうやら、名乗ってくれるらしい。
「僕の名前は、『海連 裕也』、隣の1のBにいるんだ」
(隣の生徒だったのか)
「…戸影九朗」
僕も自己紹介をする。
「知ってるよ。昨日の見てたし…」
どうやら必要なかったらしい。
「…それでどうしたの?」
僕のところに来た理由を問う。
「昨日のお礼を言いたくて…」
(別にいいんだけど…)
しかし、無碍にするのもなあ。
「たまたまだったけど…まあ、うん、どうも」
慣れてないせいか、ぎこちない。
「でも、君には本当に助けられたんだ」
彼の目からは本当に嬉しそうな感じが出ていた。
「お礼も言えてなかったから気になっちゃって…」
あんなことがあったのによく僕の前に来たなーと感心した。
少し話して、困ったことがあったら来てねと言われた。
(…協力者を得られたってことで……いいのかな?)
「情けは人の為ならず」って言うけど…本当だったな。
ちゃんと自分に返ってきた。
「――君…」
「!」
隣の葉隠さんが、口を開く。
「…いい人だね」
少し微笑んで、そう言ってくれた。
「あ…どうも…」
協力者と準協力者を得れたし、よかったのかな。
(まぁ…たまたまだしねー)
結果的にはよかった…けど…。
もう一つ、問題がある。
――「部活選び」だ
この学校は、絶対にどの部活かに入らなければいけない。
(正直、目立つ部活はなしだよね)
悪目立ちすると大変だし…。
今でさえ、そうだしね。
「……どうしよう」
目立つ運動部はなし。
だったら必然的に文化部かつ裏方に、表にほぼ立たない部活がいい。
(…どれにしよう)
部活を選んでいると――
「――部活、選んでるの?」
「!」
隣にいた葉隠さんが話しかけにきた。
「まぁ…はい…」
隣にいたから僕の悩みの部活選びをみていたらしい。
「じゃあ…ウチくる?」
「!?」
そう言われて、少し動揺する。
「なんで……僕を?」
昨日の件を考えると、誘う理由が見つからない。
「う~ん……なんとなく?」
(ええ……)
なんとなくって…。
「――どうなの…それ…?」
「あはは…確かにどうかなって感じるだろうけど…」
葉隠さんは、笑いながら――
「あなたは大丈夫な気がして」
そう言った。
なんでか、その言葉には理由はわからないが説得力がある気がした。
「――…葉隠さんって…」
「楓でいいよ」
「…楓さんの部活って…何?」
「オカルト部だよ」
斜め上の部活が来た。
(オカルト部…)
楓さんの身体つきから、運動部だと思っていた。
「基本あまり何もしないから、どう?」
「……」
選択肢としては悪くない。目立つようなこともないし、幽霊部員として名を置けて、潜入する身としては悪くない。
「……いいかも」
「!…じゃあ、放課後に!」
「ああ、はい…」
そうして、楓さんが入部している部活に行くことになった
――放課後
「ここが……」
オカルト部と書かれた独創的なイラストのポスターが扉の前に貼られている。
「…すごいポスターですね」
「はは、そうだよね」
笑いながらそう言う楓さん。
「これね。今の部長が考えたんだよね」
「そう…なんですか」
イラストを見てもなんとも味が濃いと言うか、独特と言うか――
そんな言葉しか出てこない。
「とりあえず入って…」
扉を開けると二人の女子が入っていた。
「あー!楓ちゃんだー!」
「いらっしゃい楓さん」
一人は、元気のいいオレンジ色の髪をしている。
もう一人は、知的で眼鏡をかけた紫色の髪をしている。
「オレちゃん、部長…今日はお客様さん連れて来た」
オレンジは、「オレちゃん」で…。
紫は「部長」か。
(じゃあ…アレ書いたのこの人か)
……人間は欠点がある方が、可愛いとは言うが…。
(…あの絵はなぁ)
扉の絵を思い出していると――
「――その人がお客さん?」
そう言って部長が、僕の方を見ている。
「…初めまして、戸影九朗と言います」
僕は気持ちを瞬時に落ち着かせ、挨拶をする。
「見ない顔っすね!」
オレンジが、僕の顔をじろじろと見に来る。
「初めまして!私は日向 橙って言います!」
(…苦手なタイプだ)
こういうグイグイくるタイプ苦手なんだよね。
明るくて元気なのは、日向橙というらしい。
「最近…転校してきたばかりで…」
「私と同じクラスなんだ」
楓さんがフォロー入れてくれる。
「そうなんですか…あれ?」
「どうしたんっすか?部長?」
僕の方を見て、頭を傾けている。
「あなた、昨日…」
(あー…あれ見たんだ…)
昨日の事件を見られていたらしく――
(コレは、入部無理かな…)
普通の人間は、昨日の事件を見れば、僕のことを怯える。
「昨日、何かあったんすか?」
(え…知らないのこの子?)
結構な大事件だと思うけど――
「彼、昨日、不良50人を倒しちゃったのよ~」
「ええ、そうなんすか!?」
「知らなかったの?」
「昨日はほぼ寝てましたし、何かみんな噂してたけど興味なかったんで!」
「「「ええ…」」」
その言葉に僕も楓さん、部長も絶句した。
あんな騒ぎあったら…といか噂してたんなら普通聞くんじゃ…。
「あのー…この子大丈夫ですか?」
「う~ん…」
部長、言葉に困ってるよ。
「能天気だけど、いい子よ!」
フォローなってない。
――というか悪口言ってる。
「フォローになってないっす!部長!」
「ええー、そう?」
急な部長の毒舌にツッコミを入れ、ギャイギャイと言いあっている橙。
僕は思わず、楓さんの方を見る。
「…いつものことだから」
「あ……そうですか」
(いつものことなんだ…)
それもそれでどうなんだろう。
数分言い合って、黙ってみていたが――
「ごめんなさい。はしたない姿見せて…」
「ああ……いえ、大丈夫です」
ようやく話が…言い合いが終わり、こちらを見てくれた。
「改めまして、私は部長の「紫水 万奈美」って言います」
「あ、よろしくお願いします」
部長は、自己紹介をしてくれた。
「――それであなた入部するの?」
「……え!?」
その言葉に思わず、驚いてしまう。
「…良いんですか?」
普通は入部拒否されてもおかしくない。
「構わないですよ~楓さんが連れて来たってことは~大丈夫ってことですし~」
「そ…そうですか…」
今回は、楓さんが連れて来たってことで入部ができた。
「…よかったね」
「楓さん…」
僕は、楓さんに――
「ありがとう」
お礼を言った。
その言葉にニコッと微笑む。
「とりあえず、これに名前を書いて下さいね~」
「あ…はい」
とりあえず、僕は入部届けを書いて、オカルト部に入部することになった。
「はい、確かに…じゃあ、戸影くんの入部祝いも兼ねて」
「占いをしましょう!」
(占い?)
「おお!部長、お得意の!占い!」
どうやら、オカルト部員とっては周知のことらしい。
「結構、当たるよ…」
「そうですか…」
正直、占いってやつは信じてない。
オカルトは――
(……僕がそれそのものなんだよな)
僕がそう思っていると部長が占いを始めていた。
使っていたのはカード…タロットか…。
「さて~戸影くんの結果は……あら?」
部長は占いの結果を見ると怪訝な顔をしている。
「どうしたんっすか?部長?」
「う~ん…ちょっと待ってね~」
部長は、また別の道具を取り出し、占う。
石を使った占い。魔法陣が書かれた紙、棒を使ったもの、僕の手を見たり、様々な占いをして、その度に何かを確認して、怪訝な顔をしている。
「――……あのー…」
僕のその言葉で、部長は急にピタッと占いをやめ、こちらの顔を見る。
「……」
そして、黙って考え込んでいる。
「…部長?」
「どうしたんっすか?部長?」
「………」
楓さんと日向さんの言葉にも反応せず、まだ考え込んでいる。
(…そんなに悪いの?僕の占いの結果…)
占いを信じてない僕でもここまで黙られると少し不安になってきた。
「――……戸影九朗くん…」
考えがまとまったのか、真剣な顔をしてこちらを見る。
「…おめでとう」
「……え?」
急に「おめでとう」と言われ、困惑する僕。
「あのー……どういうことで?」
部長に詳しいことを聞こうとすると――
「……」
…なぜか顔が少し赤くなる。
「…ここにいる……」
(ここにいる?)
「楓ちゃんと……」
(楓さん?)
「橙ちゃんと……」
(橙?)
「私の……」
(部長?)
「三人は………」
(三人は?)
そこまで言うと、部長の顔は更に赤くなり――
覚悟を決めたような顔をして――
「――あなたの…」
(僕の?)
「運命の人です!!!」
――そう言われた。
(はぁ?)




