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第47話 無傷の黒竜

 新たな魔法少女『プリズム・ジュエル』――

 その為に金剛学園に潜入する怪人ブラック・リザード。


 今日がその初登校である。


「今日からこのクラスの仲間になりました――」


 先生らしき人物が転校生を紹介している。


「………戸影とかげ 九郎くろうです」


 フードを被り、顔ははっきりとは見えない。

 物静かで普通の青年に見える。


 しかし、その正体は――

 エル・ノトの怪人ブラック・リザード。


「とりあえず、九朗くんの席は一番後ろの…楓さんの隣ね」


 そう言われ、彼はそこに行き、着席する。


「……よろしく」

「あ、はい…」


 隣にいた人物に声をかけられ、返事をする。

 隣にいる彼女もあまり言葉を話さないタイプらしい。


(まあ…そのほうが助かる…)


 話すのが得意ではない彼にとってはありがたかった。


 一通りの授業を終え、昼休み――

 ブラックは、それを利用して校舎を回っていた。


(――…結構、人数いるな)


 ブラックは、決められた標的を狙うのは得意だが――

 見つけるという行為をするのは初めてだ。

 出てきて間もない魔法少女であれば、なおさらだ。


(…情報が少なすぎる)


 魔法を使って自分たちの姿をわからなくしているから、組織の情報網にも引っかからないのだ。


(…さて、どうしよう)


 校舎を歩いていると、あるものを見つけてしまう。


「オラァ!!」


 髪を金髪や自由な型をしている生徒たちが――


「ヒ…ヒイーーー!」


 一人の生徒に暴力を振るっている。


(――いじめ……か)


 それを見て、彼は思った。


(なんであんなことするんだろう?)


 組織でもそう言うのを見たことはあった。

 レスク・リザード(姉さん)にどうしてか聞いたこともあった。


 その答えは――


「自分が弱くないって見せたいからだよ」


 ――そう言っていた


 自分たちの「弱さ」を隠すには、それが効率的でやり易いから――

 それは強さを示したり、支配したりするのにも使える。


 それはわかる。


 でも、姉さんは見込みがあるやつ以外、自分から手を挙げなかった。自分から支配もしなかった。


 面倒くさかっただけと思うけど…。


 気に入らなければ、思いっきりぶん殴っていた。

 そんなことを続けていたら、人が集まった。


 姉さんは、四天王にまで上り詰めた。

 それは姉さんが「強い」から弱いものいじめをする必要はない。


 だから、いじめをするのは――

 実は、自分が「弱い」と言っていることと同じじゃないだろうか。


 まあ、大半の人間はビビるんだろうけど…。


「オイ!そこのお前!」


 そんなことを考えていると、いじめていた一人ががこちらを見ていた。


「何、見てんだ。コラ!?」

「……」


(…どうしよう)


 こちらからやる?


 いや、ダメ。めんどくさくなる。


 じゃあ、今は適当に相手しておこう。


「…いえ、どうして……」


 僕は素直に答えることにした。


「どうして、こんなことをしているのかな…と思って」


 そう言った。


「……あ?」


 怪訝そうな顔をしている。


(もう少し、わかり易く言ったほうが良いかな…)


 ずれた考えをしてしまうブラック。


「強い人が何で一人を殴っているのかな…と」


 不良たちは黙る。


(わかってくれたのかな?)


 彼はわかっていなかった。目の前にいた不良たちはわかってやっていたのだから。


 その瞬間――


 ブワ―――!!


 拳が来た。


 パシ――


 僕はそれを受け止めた。


「っ――!?」


 相手は驚いている。


(確か……姉さんは――)


『やられたらやり返せ!』


 僕は、暴力は嫌いだ。


 でも――


 ガッ――


 なめられるとさらに面倒になる。

 彼のアゴの先を人の目には見えないくらい素早く当てる。


「え………あ……」


 アゴを素早く殴ったから、彼の脳は揺れて身体を動けなくした。


「――てめぇ!!」


 一緒にいた二人も殴りにかかる。


 その拳を躱して――


 ガッ――


 またアゴに当てる。


「――あ……」


 その二人も倒れる。


「……」


 殴られていた生徒は黙ってこっちを見ている。


「…早く行きなよ」

「!?」


 そう言うと、生徒はそこから急いで立ち去った。


 僕は、そこに倒れている男たちを見て――。


「よわ……」


 そう言ってしまった。

 この時、気絶していると勘違いして、この言葉を言ったことがまずかった。



 そのことに気づかず、授業を受け、放課後になる。

 今回は、偵察より馴染むことが大切と言われている。

 だから、怪しまれないようにした。


 そして、拠点に戻ろうとした矢先――


「――おい!!そこのフード野郎!!」

「?」


 そこにいたのは、昼休みに倒した不良たちだった。


「昼は世話になったなぁ……」

「はぁ……」


 なんか人がいっぱいいる。たぶん不良たちの仲間だろう。


(50人くらいかな?)


 人数もいれば、武器も様々――

 金属バット、バール、ヌンチャク、鎖分銅――

 隠しているけど、刃物も何人かいるな。


「それで……何か?」


 僕はそう聞いた。予想はつくけど…。


「おうおう、この状況でよく涼しい顔してられるなぁ?」


 人間だったら焦るのかな?

 まぁ、僕はしないけど…。


「別に…焦る理由もないですし…」

「――へぇ…そうかい…」


 笑ってはいるけど、目が怒りを見せている。


「野郎ども!!」


 武器を掲げ――


「やっちまえーーー!!!」


 お礼参りとやらが始まった。


「「「「「うおおおぉぉぉーーーーー!!!」」」」」


 襲い掛かる不良たち――

 それでも、僕は――


(受けるのは…無理だな)


 冷静だった。

 先頭にいる彼には――


 ガッ――


「あ……」


 昼と同じようにした。

 武器を持っていても僕には同じことだから――

 そこから次々来る相手にも――

 

 ガッ…ガッ…ガッ…ガッ…ガッ…


 武器を躱しながら彼らを気絶させる。

 一人で集団と戦う心得はある。隠密部隊で囲まれた時に使う。


 …といっても訓練したのとは全く違う。

 ほぼ僕のオリジナルだ。


 敵が殴られない位置、殴れない位置、死角になっている位置などを確認したら、あとは単純作業と変わらない。


 ガッ…ガッ…ガッ…ガッ…ガッ…


 そうこうしてるうちに全員気絶させた。

 全員に大きな怪我をさせず、ほぼ無傷で終わらせた。


 僕も相手も…。


「―――終わったか」


 全員倒したこと確認して――


(――……最後に…)


 僕は、最初に倒した彼のもとに行く。


「あのー…」

「っ…」


 加減は難しかったけど、気絶しないようにした。


「…今回を最後にしてください」

「!?」

「もし…」


 近くに持った金属バットを持ち――


 ガシャン…


「次、同じことをしたら…」


 グシャン…バキン…


「…こうなります」


「!!?」


 僕は金属バットを――球体にした。


「…わかりました?」


 ブンブンブンブンブンブンブンブン――!!!


 すごい勢いで首を動かす。


(これくらいでいいだろう)



 そうして、周りをみると――


「……あらー」


 周りからの僕を見る目が、恐怖や驚愕、畏怖といった色々な目を向けられている。


(…やっちゃったかな?)


 その日は、先生から注意されるだけで終わった。

 全員、大きな傷がなかったかららしい。


 そして、この日から――


 『無傷の黒竜』と言われてしまう。


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