第40話 りんの家、訪問
「――お邪魔します」
「…いらっしゃい」
俺は約束通り、りんの家に訪れている。
「いらっしゃい!大牙ちゃん!」
(大牙ちゃん…)
初めに玄関で迎えてくれたのは、りんの祖母。
「お久しぶりです」
「ゆっくりしてってね!」
りんの祖母とは、前に商店街で助けた縁だ。
その時、初めてりんの家に来たんだが――
(また来ることになろうとは…)
「おー来たか。小僧!」
(この声は…)
その奥から来たのは、りんの祖父である。
「…お久しぶりです」
「ははっ…んな堅苦しいのはいらんいらん!」
相変わらず、ただの爺ではないな。
久しぶりに見たが、相変わらず普通に歩いているはずなのに隙が無い。
道場で手合わせした時に感じたが――。
「あなた!」
婆さんに怒られてる爺さん。
「ははっ、すまんすまん!」
相変わらず、掴みどころがねえな。
「なんせ、孫の恋人が来るんじゃ!」
「!」
どうやら…爺さんも婆さんも俺とりんとの関係は知っているらしい。
「~~」
りんも顔が赤くなっている。
「そうですけど、もう少しちゃんとしてください!」
「ははっ!まぁ、ココではなんじゃ。入りなさい」
喧嘩はしていたが、仲が良い夫婦だ。
二人とも笑顔で俺を迎えてくれている。
「ゆっくりしていってね」
「また、手合わせしてやるぞ?」
「あなた!」
意外にこの二人には好感度が良いらしい。
そんな問答があったが、俺はりんの家に入る。
「ん?」
俺は歩きながら、前に来た時との違いに気づく。
「今回は居間の方じゃないのか?」
「……」
りんは黙ったまま、前を歩く。
だが、その顔は少し赤い気がする。
「…今日は、私の…」
「え?」
小さい声で言うりんの言葉が聞き取れなかった。
「――私の部屋よ!」
「!?」
そう、大きな声で言い放つ。そのまま、りんは真っ直ぐその場所に向かう。
「あとはお若いお二人でどうぞ」
「あなた、からかうモノではありませんよ?」
そう、後ろからニヤついている爺さん。
注意はしているが、楽しそうに笑っている婆さん。
(…楽しんでるな)
爺さんはそうだが、婆さんは若い二人をニコやかに見守っている感じだ。
「ごゆっくりね」
二人はそうしてどこかへ行き、俺はりんの方へ行く。
りんの部屋は少し奥の方にあるらしい。
「…ここよ」
ようやく口を開くりん。
目の前には、片引き戸ある。
しかし、りんの家は全体的に和と言う感じだが、それにしてもお洒落な柄な戸だ。
モダンってやつか?白いが花の様なものがある。
りんはそれを開ける。
「……入って」
そう言われ、入る俺。
りんの部屋は、和室と洋室の間って感じの部屋だ。
全体的に明るい青が広がっている。
部屋の中を見ている俺に、りんは顔を赤くしている。
(恥ずかしそうだな…)
「……ふっ」
「な…何よ!?」
(おっと、いかん――)
「すまん…可愛くて、ついな」
「~~~」
――本当に可愛い奴だ。
「――初めてだから」
「?」
また、何か言っている。
「家族以外の男の人が入るの……初めてだから」
「!…そ…そうか…」
俺は顔をポリポリとかき、顔が少し赤くなる。
「「……」」
二人とも少しの間、黙ってしまう。
「た…立っているのもなんだし…座って!」
「あ…ああ!」
俺たちはお互いの恥ずかしさを隠すため、部屋にあったちゃぶ台の前に座る。
「「……」」
しかし、また黙ってしまい、膠着状態になる。
(…埒が明かない)
俺はこのままでは、ダメだと感じ――
「――…なあ」
「!」
俺は自分から口を開く。
「な……なに?」
「そっち行っていいか?」
「~~~!?」
キスやデートをした仲だというのに、りんは初心な少女の様に狼狽える。
「…い……いいわよ…」
俺はりんの傍に行き――
「――りん…」
「~~~」
――その目を直視する。
綺麗な青だ。空を連想するような澄み切った青。
最初はあんなにお互いを警戒していたはずが、いつの間にか信頼を得て――
――恋人になった。
りんの勘の良さは、まだ注意すべきところもあるが――
俺は、りんと一緒にいると桜やめぐみと違った安心感を得ている。
それと同時に――彼女の可愛らしさを知ってしまった。
「……大牙」
りんは目を瞑り、唇を前に出す。
――俺はそれに応えるため、りんの顎を掴み…
「お茶とお菓子持ってき…ま…した…よ?」
「~~~!!?!」
「~~~~!?!?!」
菓子を持ってきてくれた婆さんにキスする瞬間を見られた。
「あら~あらあら!いけない!」
「いや…あの…」
「そうよね!今時は二人きりになったらすることと言えばね~」
「いや…その…」
(やばい、言い訳が効かない分、厄介だ!)
(おい、りん!お前もなんか――)
「ぐうぁjにぱいんbkmbmヴぉp?」
(なんかバグってる!?)
恥ずかしさのあまりバグってる!?
「ごめんなさいね!じゃあ、ごゆっくりー!」
「ちょっ――」
婆さんはそのまま部屋を後にする。
「……りん?」
――バタン
「りんーーーーーーー!!?」
数十分後
「…………ん?」
「――あ、りん」
「……私、確か…?」
あの後、りんが気絶して――
「!…そうだ私…って……アレ?」
――介抱するために、膝枕をしていたのだ。
「~~~」
「おい!また気絶するなよ!」
赤くなるりんに、俺は気絶させないように声をかける。
「…悪いな、こんな固い枕で」
「…ううん、ありがとう」
りんが起き上がる。
「迷惑かけてごめんなさい…」
「別にいいよ…」
俺は謝るりんに――。
「…彼女の面倒見るのも彼氏の…役目だしな」
――恥ずかしながらもそう言った。
「ふん……大牙のくせにかっこつけちゃって」
「なっ…それはお前が…んぐ…」
俺が何か言おうすると、りんに唇で塞がれた。
「っ……」
「ふふ…お返しよ。王子様?」
そう笑顔で言うりん。
今日は、この可愛いお姫様にしてやられたらしい。
「――なかなか、楽しそうなことをしているね。りん?」
「「!?」」
不意に声をかけられ、俺とりんは声が聞こえた戸の方に目を向ける。
(…誰だ?)
俺は、りんを庇いながら目の前に立っている‘‘男‘‘に目を向ける。
(…ただもんじゃないな)
あの爺とは別の威圧感がありやがる。
「――お…」
(ん?)
「……お父さん」
「!!?」
(お父さんーーーーーーーーー!!?)
目の前にいたのは、りんの父「清水 泰三」であった。
「初めまして、大牙くん」




