第37話 大切な――
昨日は桜が俺の家に遊びに来て……。
――姉さんも来た。
もう……死を覚悟したね。
最終的に桜と姉さんは仲良くなり、事なきを得た。
そして――
俺は桜と一緒にベットで寝ている。
深い意味はない!!
――……本当にただ寝ていただけだ。
現在、俺は桜の寝顔を見ている。
「……」
――相変わらず、可愛いと思う。
今まで彼女なんてできなかった。
いや――
できる環境じゃなかった…と言うべきか。
俺もそうだが姉さんも――孤児だ。
両親はいたが、どちらとも俺が物心つく前に亡くなっていた。
そんな俺たちを拾ってくれたのが、当時の四天王筆頭――ドン・ハシビロだ。
ドンは俺たちの親の友人だったらしく、本当の子供の様に育ててくれた。
迫力のある目つきだったが、その目には優しさが確かにあった。
厳しくも優しい父という印象だ。
――俺が「父」と呼べる人がいるならば、あの人以外いない。
――ちなみにドンは結婚している。
…奥さん(あの人)にもだいぶせわになったなー。
子供もいる。
姉さんと俺より歳が下で、弟の様に思っていた。
――話が逸れたが……。
…俺は戦闘訓練やサバイバル訓練など、色々やった。
何度か死ぬかと思ったこともあったが、ドンに応えるため必死にしがみつき――
現在の上級怪人の地位にまで着くまでになった。
潜入して、桜やりん、めぐみに会うまで恋愛というものを全くしなかった。
もちろん、怪人の中には女はいる。
しかし、そこにいるのも――というか、周囲はライバルだったし、友人はいても、恋人ができる環境じゃなかった。
俺は――
――桜が好きだ。
今さらかもしれないが、桜は俺を受け入れてくれた最初の人間で――
――恋人だ。
最初は乗り気ではなかった。
桜は良い友人という認識だったし、りんは厄介な人間、めぐみに至っては――
――うん…まあ、そこは置いておこう。
とにかく、三人とも恋愛対象とは考えていなかった。
変わったのは、三人ともアピールし始めた頃だったな。
桜とりんとデートして、三人と付き合って、イチャイチャして――。
付き合って、三人の色々な顔見て、もっと見たい、知りたいと思うようになった。
正直、こんな風に異性と付き合い、夢中になるとは思っていなかった。
めぐみは、押しは強いが押されるのは弱い。
屋敷に拉致られた時からそうだったなー。
策略と財力で俺を付き合わせることをやって見せるほど、行動力もある。
しかし、好きな人には甘えたいのか、さらに積極的になる。
りんは、最初の頃は警戒を見せていたが――
――信頼を得ることに成功して、そこからはドミノ倒しみたく恋愛に発展した。
――正直……チョロすぎないかと思った。
すんなりいきすぎて、何か罠にかかっているのかと勘繰るほどだった。
桜は――
――よくも悪くも桜だ。
人のことを自分の直観主体で信頼し、その明るさで人からの信頼を得る。
…姉さんともすぐ仲良くなるくらいだからな。
――本当にすごい奴だ。
「――…ん……大牙くん?」
そんなことを考えていると、桜は目を覚ました。
「おはよう…桜」
こんな幸せな生活がいつまで続くかはわからない。
もしかしたら明日壊れてしまうかもしれない。
そう考えたら怖いものもある。
だが――
俺は、この可愛い恋人を――
――恋人たちを任務が終わるその瞬間まで幸せにしよう。
俺は桜の額にキスをし――
そう決心した
――俺は今日も彼女の、彼女たちのために生きるのだ。
~翌日の学校(桜サイド)~
私は、宙に浮いているような幸せなホワっとした浮遊感を昨日から感じていた。
「……」
りんちゃんやめぐみちゃんの二人から屋上に来るよう呼ばれていた。
でも、私は――
「……さく…ら……桜!」
「!」
りんちゃんの声で、私は正気を取り戻す。
「――な…なに!?」
慌てて聞き返す私は、二人から呆れたと言わんばかり顔をされる。
「はぁ…だから、大牙との家では、どうだったのって聞いてるの!」
「あ~…そうだった?」
「はぁ…」
りんちゃんは、またため息をつく。
「もう、これで何度目?」
「コレは重症ですね~」
そう…昨日のことを思い出すと浮遊感に陥って、そのせいで二人の言葉を聞き逃してしまっている。
「ごめ~ん!」
「まったく…そんなに良かったの?」
そう聞かれ、またホワっとした。
私は首を振り、必死に現実に戻ろうとする。
「良かったというか…驚いたというか……」
頑張って伝えようとするが、色々あり過ぎて何から話せばいいかわからない。
「では~、思い出しやすい方からお願いします~」
めぐみちゃんにそう言われて、私は――
「じゃあ!驚いた方で!」
「では~、それで」
昨日、驚いた方を話すことにする。
「昨日……大牙くんの――」
息を吸い、吐いてから――
「――お姉さんが来ました!!!」
「……」
「……」
二人はお互いを見て――
私の方に――
「「――えええエエぇぇェェ~~~~~~~~~~~~!!!!!」」
その大きな声が響いた。
その後、二人の質問攻めは激しく、落ち着くまで時間がかなりかかった。
「「…ハァ…ハァ…」」
一気に質問したせいか、二人は息切れを起こしていった。
「…二人とも…落ち着いた……?」
二人にそう聞くと――
「「すうーーーはあーーーーー……」」
二人は深呼吸をする。
「…ごめん…今、落ち着いたわ」
「…ええ……とんでもない情報に…はしたない姿を見せましたわ」
落ち着いた二人を見て私は安心をした。
「それで…大牙のお姉さんとは、仲良くなったのね?」
「うん…私の事、気に入ってくれたみたいで……」
「そう…」
何か不服そうな顔を見せるりんちゃん。
「どうしたの?」
「別に…」
そう言うが、私の目を見ず、背ける。
明らかに不機嫌になっている。
「そりゃ、羨ましいですわよね~」
「!」
めぐみちゃんの言葉にりんちゃんは反応する。
「たまたまとは言え、桜さんだけ、お姉さんに気に入られたわけですし~」
「~~~」
「………あ」
めぐみちゃんにそう言われ、私はハッとする。
そうだ。私たち三人で大牙くんの彼女なのに――
私だけ二人より先に――
「…りんちゃん…あの」
私はりんちゃんとめぐみちゃんに謝ろうとしたけど――
「謝らないで!」
「!!」
そう言われ、止められる。
「…わかってる」
涙目になりそうなりんちゃん。
「桜は悪くない…けど…」
悔しそうな悲しい顔で涙を見せる。
「この悔しさを…どうすればいいかわからないの……」
泣くりんちゃんにどう言えばいいかわからず、私は立ち尽くすのみだった。
そんな彼女に――
「よしよ~し、辛かったですね~」
めぐみちゃんが抱きしめ、頭を撫でながら慰める。
「…桜さんもりんさんも悪くありません――」
私とりんちゃんに、そう言うめぐみちゃん。
「――悪いのは…」
めぐみちゃんは後ろドアの方を向き――。
「そこに隠れている‘‘女泣かせさん‘‘?」
「「!?」」
私たちはドアの方に目を向ける。
「盗み聞きしてないでこっちにきなさい?」
ドアが開き、そこに現れたのは――
「……」
顔に汗をかき、何とも言えない表情でいた――
――大牙くんだった。




