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第36話 姉さんの質問

 今週の休日はとんでもないことが多い――。


 桜が家に来て――姉さんも来た。


 正直生きた心地がしなかった。

 姉さんと桜が二人きりで話をして、どうやら仲良くなったらしい。


「――桜ちゃん、大牙は学校ではどう?」

「最初は誤解されていたけど、今はみんなから信頼されています!」


 姉さんはどうやら桜を気に入ったらしい。

 姉さんは気に入ったやつは、親しくなることが多い。

 だから、今の状況は――


(――とりあえず、修羅場は越えたと考えていいだろう…)


 そう安心する俺。しかし、桜も大したものだ。

 …いや、いつも通りだな。コレは――。


 桜の素直で明るい人柄がそうしているのだろう。


「お姉さん、お仕事は何を?」

「会社の秘書をやっているわ」


 さすが、姉さん。用意周到だ。


「すごーい!」

「そのおかげで大牙ともなかなか会え無くてね~」

「やっぱり、忙しいですか?」

「そりゃ、そうよ~。部下に命令や今日やることのスケジュール、その他にも色々あって忙しさ満載…お給料は良いんだけどね…」

「わあ~…」

「最近じゃ、同僚がやらかして大変のなんの――」


(――これは…レクス・リザード様の件だな。)


(あとは…うん…全部本当だな――)


 姉は、ナンバー2という立場だから忙しさは、俺が考えている予想以上だ。

 こういう話は中々、俺の前でも心配かけまいと話してくれない。


(そう言う意味では桜がいてよかった)


 少し嫉妬してしまうが…


「大牙もごめんね~」

「ちょ…姉さん…」


 姉さんは俺に見せたことない顔で、甘えた声でこちらに寄りかかってくる。


「お姉ちゃん…中々会いに来れなくてごめんね~」

「姉さん!」


 そう言ってくれたことは、正直嬉しいが…桜の前では…。


(――…いや、桜の前だからこそ…か)


 そう考えると桜はいてくれて、よかったと思う。


「――あら、いけない!」


 羽目を外し過ぎたせいなのを気づいたのか…ハッとする姉さん。


「桜ちゃん、ごめんなさいね。こんなはしたない姿見せちゃって!」

「いえいえ、むしろ私が邪魔しちゃったみたいで!」

「いいのよ~。こんな可愛らしい彼女と一緒のところを私がお邪魔しちゃったんだから!」



 しばらく、姉さんが楽しそうに話をしているところを微笑みながら見ていた。



 しかし――


「――…ここら辺には怪人が出るって聞くけど、大丈夫?」

「!」


 姉さんが桜にそう聞いて、俺はハッとする。


「そうですね…」


 桜の顔が一瞬だが、真剣な表情になった気がした。


「――意外に…町では出会わないんですよね~!」 

「そうなの?」


 次の瞬間はいつも通りになっていた。


「そうなんですよ~。テレビでしか怪人は見ないし、魔法少女も遠目から一度だけしか見たことしかないですね~」


「え、そうなのか?」


 前聞いた時はテレビでしかって――。


「ああ!大牙くんの時は、テレビでだったんだけど…」


(そうだったのか…)


「別の日に、たまたま遠目から見ちゃったんだよね~」


(あの後、見たのか)


 そう言われ、俺は桜が魔法少女ではないのではないかと考えた。



 だが――


(一瞬なった真剣な顔は…一体…?)


 少しの疑問が残るが、桜が魔法少女と言う可能性は下がったと考えて良いだろう。


「そう…ありがとう、桜ちゃん」


 姉さんは笑顔でお礼を言っていたが、何故だろう…。

 その目は、何か確信したかのような目に見えた。


(まあ…気のせいだろう)


 ――その時は、そう考えた。


「じゃあ…話は変わるんだけど…」


 姉さんが、また桜に質問をする。


「あなたが魔法使いで、大牙が怪人だったとしたら――」

「!?」


(ちょっ…姉さん!?)


 俺は驚いて、姉の顔を見る。


「えーと、その質問はいったい…?」

「もしもよ!もしも!ただの質問よ~」


 そう笑顔で答える姉さん。

 その質問に対し、桜は少し考え込んでいる。


「――…もし、大牙くんが怪人だったら……」


 その表情は真剣そのものだった。


「う~ん、う~ん、う~ん…??」


(……凄く迷ってる)


 即答で答えた俺とは正反対だ。でも……。


(――桜の答えは知りたい)


 もし、俺と同じだったら、それでいい。



 その時は――



「……諦めず、説得します!!」

「!」


 その答えに、俺は驚愕する。


「……どうして?」


姉さんは、その理由を問う。


「大牙くんが怪人でも…「大牙くん」は「大牙くん」ですから!」


 そう答えた桜には――迷いは微塵もなかった。


「……」


 コイツは俺の正体を見ても、そう言うのだろうか…。


(…いや、言うな…確実に…)


 俺はそう確信した。桜には、それくらいやると言う確信が持てる。




「…そう…ふふ…」


(ん?)


「はははははははははっはっはっはっーーーーー…!!!」


「!?」

「お…お姉さん?」


 大笑いした姉さんに驚く、桜と俺。


「…桜ちゃん!」


 笑いが止まり、桜の方を見る姉さん。


「は…はい!」


 笑顔で姉さんは――。


「大牙をよろしくね!」


 そう言った。姉さんが他人に「任せる」のは、親代わりのドンか、四天王、信頼できる部下くらいしかいない。


 俺は桜の凄さを改めて知ったのであった。


 その後の姉さんは、終始楽しそうだった。


 そうこうしている内に暗くなり、姉さんは帰るようだ。


「すまないな大牙、もう少し話したいんだが、明日も仕事でな」

「気にしないで良いよ姉さん…」


 四天王のトップの姉さんが、わざわざ俺のところに来てくれた――。


「今日は楽しかったよ」


(――…それで十分だ…それに今は…)


「お姉さん!気を付けて!」


(…コイツがいるしな)


 桜がいることに嬉しさを感じていた。


「ありがとう…桜ちゃん、また話しましょうね」

「はい!」


 ――そう言って、姉さんは帰っていく。




~ブラッド(姉)サイド~

 大牙…私は、今回「姉」として来たから――


 桜ちゃんがついた「嘘」は、黙っておく。


 だが――もし、お前がそれに気づいたなら、その時は…。


 お前の決めた方に行きなさい。


 ブラッド・ウルフ…彼女は最高幹部として、姉として、その時を待つのであった。




~大牙自宅にて~

「…はー、緊張した」


 どうやら桜は相当緊張していたらしく、俺のベットでぐったりしている。


「今日はすまなかったな…」


 俺の予想外で精神的に疲れてしまった。


「いいよ、いいよ。大牙くん」


 疲れ切った表情で大丈夫と言われてもな。


「…それでこの後どうするんだ?」


 桜も疲れてるし、このまま泊ってもいいんだが――。


「う~ん…少し休んだら帰るよ」

「…そうか」


 ――そう言われてしまった。

 コイツの性格なら、迷惑かけまいとそう言うだろうと思った。


 しかし、今回は――



 数十分後、桜は元気になり、帰ろうとする。


「大牙くん!今日はありがとう!楽しかったよ!」


 疲れた表情から休んだおかげか、また笑顔を見せる。


「いや、あまり構ってやれず。すまなかった」


 姉さんが来たのは予想外だったからな。


「いいよ、いいよ!お姉さんと話せてよかったし!」

「…そうか、それはよかった」


 そう言ってもらえてよかった。姉さんも気に入ってたし。


「それじゃ帰るね!また学校で!」

「…ああ」


 帰ろうとする桜。


 さよならと言葉を交わしたはずだが、俺は――


「…大牙くん?」

「……」


 気づいた時には、桜の手を取り、抱きしめていた。


「……?」


 桜が不思議そうな目で見ている。



 俺は「お願い」以外で初めて――



「~~~?!」

「……」



 桜にキスをした。



 そして――


「――帰したくないな」


「!!?~~~」


 ――その言葉を桜に言った。


 その後、桜は俺の家で泊った。




 …一応、言っておこう。何もしてないぞ!!




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