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第35話 訪問 桜とーー

 ――現在、俺は臨戦態勢に近い、緊張に入っている。



 なぜなら、彼女が、桜が来るからだ。

 俺の自宅(拠点)に来たことがあるのは、知ってる限りデスピエロだけだ。

 親しい仲である桜、りん、めぐみの三人でもここに来たことはない。

 人付き合いも最小限にしているし、友人もあの三人以外いないしな。

 怪人とバレないようにするためにあまり人とは関わらないようにしていた。






――ピンポーン


 チャイムの音が聞こえ、とうとう来たと腹をくくる。

 扉に手をかける時には、緊張と心音が最大限になっていた。

 扉を開け、そこにいたのは――


「大牙くん、こんにちは!」


 お洒落をして、笑顔でこちらを見る桜だった。


「…おう、上がってくれ」


 最低限の挨拶をして、桜を家の中に入れる。


「へぇ~、これが大牙くんの…」

「何か…変か?」


 ネットで調べて、お洒落かつ現在風の無難な部屋にしてみたが――。


「ううん!兄弟以外の男の子の部屋初めてだから」

「…そうか」


 そう言えば、兄弟がいたな。


「適当に座ってくれ、今お茶入れるから…」

「あ、お構いなく」


 部屋に案内した俺はお茶を入れる。


「…ほい」

「ありがとう!」


 めぐみのより確実に劣るがパック茶を使った。


「緑茶だが、大丈夫か?」

「うん!平気!」

「そうか…」


 少し話して緊張は解けているが、まだ言葉が固いことに気づく。

 予想以上に緊張しているらしい。


「大牙くん、緊張してる?」


 バレている。


「…まぁな。俺も女子を……恋人を連れてくるのは…初めてだ」


 桜と俺の顔がほんの少し赤くなる。


「そ…そうなんだ~」


 あからさまに恥ずかしがっている。


「「……」」


 お互い恥ずかしさが出て、一分くらい黙っていた。


「――…ね、ねえ?」


 沈黙の中、先に口を開いたのは桜だった。


「な…なんだ?」


「…そっち行っていい?」


 そう言われ、俺は頷く。


 俺の傍に来た桜は、シャンプーのいい匂いがした。

 その匂いで、また少し赤くなる。


「……大牙くん」

「…桜」


 考えてみれば、二人きりなるのは久しぶりだ。

 最近は四人で過ごすことの方が多かった。


 だから――余計にお互いを意識してしまう。

 俺と桜は互いの顔見て――顔を近づける。




 もう少しでキスができる距離に来た――途端……。




――ピンポーン


 扉の方からチャイムの音が鳴る。

 その音で俺も桜もハッとした。


「「!」」


「だ…誰か来たみたいだね!」

「そ…そうだな!」


 キスは何回かして慣れているはずなのだが――

 お互いを意識していたせいか。恥ずかしさが勝ってしまう。

 俺は恥ずかしさを隠すように急いで扉の方に向かう。


「はーい!何方です…か……え……?」


 扉を開けた時、見知らぬ目つきが鋭いスーツ姿の女性がいた。


 しかし――その気配は覚えがあった。


「…久しぶりだな」


 そして、その声で確信に至る。


「~~~!!?」



 あまりの衝撃に声が出そうになったが、何とか噛み殺し代わりに心が――



(えええええーーーーーーーーーー!!!)



(えぇええぇえぇえぇえぇえぇえええぇええぇえええぇえぇぇええぇぇええぇぇええぇえーーーーーーーーーーーー!!!!!)



「――ね…」



 そう…そこにいたのは四天王であり、我が姉。



「…姉さん!?」


「久しぶりだな」


 改めてその言葉を言われるが、まだ混乱は続いていた。


「な…なぜ…ここに?」

「久しぶりに休日ができて、あなたの顔を見たいと思ってね」


(あ~なるほど~……じゃない!!!)


 いや、嬉しいよ!?

 姉さんが四天王になってから忙しくて業務上でしか会えなかったし、最後に顔を見たのはモニター越しだったし!!


(でも…今この状況で来る―?!)


 デスピエロは何も言ってなかった。


(口止めをされた?…いや、それはない)


(あいつはこんな重要なこと絶対隠さないし、ここに姉さんが来るなら前もって言ってくれるはずだ…ということは…)


 考えた結果出てきたのは――姉さんがここに来るのは予想外でかつ、知らなかった。

 そういう答えにたどり着く。


 この間0.5秒――。


「――大牙くん?どうしたの?」

「!?」

「?…誰かいるのか?」


(――さ……最悪だ)


 敵かもしれない人間を拠点に入れている。

 組織に極刑を言われる前に姉さんに殺されるかもな。

 頭の中はもはや諦めモードだ。もしそうなったら桜とあの二人は守らなければ――。


「大牙くんと…どちら様ですか?」


 そうこうしてるうちに桜が姉さんに対面している。


「――君は…」


今のところ姉さんの様子は落ち着いている。


「…大牙の彼女かな?」

「えーと……」


 姉さんは一瞬で状況を理解したらしく、冷静にそう聞いている。


「失礼、私は大牙の姉――「王守おうもり 千潮ちしお」だ」

「………」


 桜は無表情で黙ってしまった。


「……桜?」

「どうしたんだ、お嬢さん?」


 俺も姉さんもお互いの顔を見て、不思議そうに桜を見る。




「……はっ!」


 ようやく、桜が意識を取り戻した。そして――


「ええぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


 ――でかい声でそう言った。


「っ~~」


 俺も姉さんも思わず耳を塞いでしまったほどだ。


「大牙くんのお姉さん?!大牙くんお姉さんいたの!!?」


 叫び終わって、興奮気味に勢いよく問われる。


「あ…ああ、俺の姉さんだ」

「え…え~と!初めまして花園桜と申します!!」


 慌てて姉さんに自分を紹介する桜。


「初めまして、桜さん…」


 冷静に笑顔で姉さんはそう口を開く。


「改めて聞くけど……あなた大牙の彼女?」

「はっ…はい!!」


 姉さんは桜に彼女かと問われ、大きな声で「イエス」と答えた。

 ――戦々恐々だが、少し恥ずかしくなる。


「そう……大牙?上がっても?」

「ああ、どうぞ」


 今のところ姉さんは怒っているとかではない。

 姉さんのことは何となくわかるから、どちらかと言うと今は興味の対象として桜を見ている。


(それでも油断はできない)


 姉さんがいつ心変わりするかわからないからな。

 こればかりは――何事もなく終わることを祈るばかりだ。

 そう思い、姉さんを部屋に上げ、三人で部屋に座っている。


「……」

「……」

「……」


 三人とも部屋に入ってから、お茶を飲みながら黙っている。


「――…大牙」


「はい!」


 姉さんが口を開き、俺は一瞬で素早く返事を返す。


「そう緊張しなくていい。別にお前を叱りたいわけじゃない」

「そ…そうですか」


 そう言われ、姉さんは俺が気を張っていたことに気づいており、今回のことは咎めないと言われる。


「ただ…」

「!」


 姉さんは桜の方を見て――


「桜さんに聞きたいことがあるから、席を外してもらえるか?」

「……いや、それは――」

「大丈夫だ」

「!」


 姉さんに笑顔でそう言われ、俺は席を外す。


 組織での姉さんは冷血で残虐と言われているが、俺から見る姉さんは優しい普通の姉に見える。だから、今回はただ弟の彼女に興味があると言うだけ――だと思う。

 



~桜サイド~

 大牙くんが部屋を後にして、お姉さんと二人きりになっちゃった。

 お姉さんがいたことには驚いたけど…。


(よく見ると目つきが大牙くんと似ているなー)


「桜さん…」


「は、はい!」


 お姉さんが口を開いて、話しかける


「ふふっ…そんなに緊張しなくていいわよ?取って食べちゃうわけじゃないんだし」

「す…すいません。お姉さんの雰囲気に緊張しちゃって…」


 大牙くんのお姉さん、大人の女性って感じでなんか緊張しちゃう。


「ふふっ…可愛いわね。それに素直だわ」

「ど…どうも」

「大牙が好きになるのもわかるわ」

「へえぇ!?」


 思わず変な声出ちゃった。


「~~~」

「ふふっ、本当に可愛いわ」


(大牙くんと同じ優しい笑顔、本当に姉弟なんだなー)


「桜さんは、どうして大牙を好きになったの?」

「――…それは」


 私はお姉さんの質問に対して少し考えた。


 出会った時は怖い顔はしている人だなって思ったけど――


 それと同時に優しさを同時に感じた。


 お花を見る目が優しくて、この人は大丈夫って感じた。


 階段から落ちそうになった時も助けてくれた。


 妹や弟のお世話もしてくれて、懐いてもいた。


 この人となら大丈夫って思った。


 この人となら私がお祖母ちゃんになっても一緒にいれる。


 愛してくれるって思った。


 だから、私は――


「――…最初から好きだったと思います」


「?…それはどういう…」

「彼と会った時、見た時に好きになってたんだと思います」

「一目惚れってこと?」

「いえ、そう言うのじゃなくて…」


(…そう、そうじゃない)



「『運命』ってことだと思います」



 そうと言い切れるほどの予感があった。

 私の直観がそう言ってる。そう、思った。


「ごめんなさい。お姉さん…うまく説明できなくて…」


 お姉さんは口を手で押さえ、顔を下に俯いている。


「ふふ…」


「……お姉さん?」


 体が震えている?


「ふっ…はっはっはっはっはっはっは――!」

「お…お姉さん?」


 急に大笑いしたお姉さんに退く私。


「はは…すまない。」


一応、笑いが収まり、お姉さんは私に謝罪する。


「まさか…弟がここまで君を惚れさせれるとは…予想外で…ふふふ…」


 まだ、笑いが収まっていないけど、気に入ってくれた?と感じた。


「君は本当に弟が好きなんだな!」

「…!」


 そう言われ、私は――


「はい!!大好きです!!!」


 大きな声で、私はお姉さんに伝えた。

 恥ずかしいけど、言わなきゃいけないって思った。


「これからも弟をよろしく!」

「~~はい!」

「ふふっ…」


 お姉さんは笑顔でそう言ってくれた。認めてくれたと言うことなのかな?


――コンコン。


 扉からノックが聞こえた。


「姉さん、そろそろ入っていい?」


(大牙くんだ!)


「ああ、すまない入っていいぞー!」


 お姉さんがそう言って、大牙くんは部屋に入ってきた。


「大牙、いい子を捕まえたわね」

「…え?」

「ちょっ…お姉さん!」


 さっきあんなことを言ったから、まだ恥ずかしさが残ってる。


「?…何を話してたんだ?」

「いや、そのー……」


 大牙くんにそう言われたけど、言えないよー!


「?…姉さん?」

「女同士の秘密だ♪」


 指を口に当ててそう言うお姉さんはさすがと思った。


「そ…そう」

「まあ…とにかく彼女を大事にね」

「?…わかった」


 そう言って、この後お姉さんと一緒にご飯を食べた。



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