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第33話 彼女たちと

「――久しぶりだな…」


 俺は1週間ぶりの学園を懐かしむ。

 怪人だから傷の治りが早く、治療はほぼ完全だ。


(あの戦いから1週間…か)


 四天王の命令違反、新たな魔法少女と神獣、神獣との闘い――。

 色々あり過ぎて精神的にも肉体的にも疲れた――。


(生きてるのが不思議なくらいだ)


 まあここも敵地には変わらないが、あの戦いより千倍マシだ。


(あいつらいるしなー)


 自分の彼女三人を思い浮かべる大牙。


「――大牙くん?」

「!」


 聞き覚えのある声が耳に入る。


「よう…桜」


 久しぶりに会い、挨拶をする。


「――おはよう」


 桜は挨拶をされるが、そこにはいつもの笑顔はない。


(え……桜?)


 話をせず、そのまま行く桜に戸惑いを覚える。


「大牙…」


 また聞き覚えのある声――りんの声だ。


「お……おう…りん」

「おはよう…」

「なあ…桜、どうしたんだ?」

「……」


 りんも挨拶だけして行ってしまう。


(え…えーー!?)


 どうなってこうなったかわからない俺に――


「大牙さん…」


 めぐみが現れる。


「よ…よう…めぐみ」


 まだ戸惑いが隠せてはいないが、めぐみに挨拶をする。


「おはようございます…」


 めぐみもいつものめぐみじゃない。


「なあ…」

「はい…」



「桜とりん…あと、めぐみ…お前ら…どうしたんだ?」



 めぐみに三人の異変を聞く。



「……」



 めぐみは黙ってそのまま俺の横まで来る。


「……屋上に――」

「!」

「今日の昼食に屋上に来てください…」


 そう言って、そのままめぐみは行く。

 教室にも行くが、桜は声をかけてくれない。

 りんもめぐみも通り過ぎるだけで何も言ってくれない。


(――辛い)


 怪人なんだけど辛い。自分の彼女たちに無視されるのは辛い――。

 そうして昼食まで続く。




~昼食~

 めぐみに言われた通り、屋上に来た。

 桜、りん、めぐみの三人もそこにいた。

 ――なんというか…いつもより空気が張り詰めた感じがする。


「――大牙さん」

「!」


 そう考えているとめぐみが口を開く。


「そこに正座してください…」


「…え?」


 言っている意味がわからない。


「な…なんで?」

「いいから正座!!!」

「はいーーー!!!」


 めぐみが凄まじい迫力で言い、瞬時に正座する。


「大牙さん…」

「はい…」


 なぜか正座させられて、話は続く。


「この一週間何をしてましたか?」


(…何をしていた?)


「い…家の用事で――」

「それは知っています」

「じゃあ…一体?」

「彼女に初日以来、何の連絡も無いとはどういうことですか?」


 そう言われるが――


(こっちは死にかけで三日寝てたからなー…)


 さすがにそれを言う訳にもいかない。

 第一、怪人で神獣と戦ってましたって、信じるか?


(疑いたくはないが…こいつらが魔法少女の可能性もある)


「――じ…実は」


 俺は頭をフル回転させ、噓ではない嘘を思いつく。


「スマホが壊れてしまってな…」


 スマホが壊れ、連絡する方法がなかったとことにする。


「そうですか……で・も!」


 めぐみは一瞬理解を示すが、まだ不満がある様だ。


「連絡手段はあった!はず!ですよ!?」

「…はい…すいません」


 鬼気迫る勢いで言われ、彼女たちより大きな体の俺が小さくなってしまう感覚になる。


「こちらがどれくらい心配したと思っているんですか!?」


 三人の顔を見ると悲しい顔している。


(心配してたんだな…)


 女三人を心配させるとは、何とも言えないが――


(こっちも死にかけていたからな)


 三日も生死の境を彷徨って、ようやく学園に来れるまで回復したからな。

 そんなことを考えていると桜とりんが近くまで来ている。


「大丈夫だった?」


 桜は優しくそう言い。


「本当に心配したんだから…」


 りんもそう言う。

 男としては、何とも言えないが――


「…すまなかった。心配かけて」


 とりあえず、コレは言わんとな。


「……次はちゃんと連絡してください」


 そう言われたが、俺は何も言えない。

 次も同じことが起きない――とは言い切れないしな。


「――監禁しようかしら?」

「勘弁してください!めぐみ様!」


 めぐみがボソッとそう言い、思わず敬称で呼ぶ。


(ヤバい!こいつならやりかねない!)


 俺と付き合うと言った時もこんな脅しされたからな。

 実際こいつにはそれを可能にする力があるからな。


「うふふ~……本当に~気を付けてくださいね~?」

「………はい」


 そうニッコリと笑顔で言われるが、そこには有無を言わせない何かがあった。


 ――もはやめぐみに実権を握られている気がする。


(これが本当の嫁の尻に敷かれるか?…結婚はしてないけど)


 そんなことを考えていると、めぐみがまた口を開く。


「では~お説教はここまでにして~」


 ニコニコと俺の膝の上に乗ってくるめぐみ。


「めぐみちゃん!ずるい!!」

「そうよ!めぐみ!!」


 その行為に声を上げる。


「だって~ずっと会えなかったんですよ~?」


 甘える様な声で俺に寄るめぐみ。


「その分~甘えたいんです~」

「「それは私たちも一緒!!!」」


 ギャイギャイと言い合いしている三人。


(これ…長くなるな……)


 三人の話し合いは昼食が終わる瞬間まで続いた。

 めぐみはそれまで離れなかった。




~放課後~

「で……結局どうなったんだ?」


 放課後も四人で屋上に来ている。


「とりあえず~じゃんけんで私が一番で~す」

「「むう~~~!!!」」


 後ろ桜とりんの二人は頬を膨らませている。


「それでは~大牙さん座ってください」

「……またかよ」

「今度は普通でいいですよ~」

「……」

(普通って言われてもな)


 正座させられて、次は普通って――

 とりあえず、胡坐をかいて座る俺。


 そこにめぐみが――


「えーい!」

「!」


 座っている俺に飛び込んでくる。


「あぶねえだろ!」

「えへへ~」


 俺が受け止めると踏んでいたのか、笑みを浮かべる。


「このまま頭を撫でてくださ~い」

「はあ?」


 そう甘えた声で言うめぐみ。俺は言う通りに頭を撫でる。


「……これで良いか?」

「はい~」

 

 懐いたネコみたいに寛いでいる。


「うふふふ~」

「……楽しそうだな?」

「はい!楽しいです!」


 満面の笑みで言うめぐみに対して俺は――


「ふっ――」


 笑った。

 可笑しいから?違う――嬉しいんだ。こいつの嬉しそうな顔見て。


「――戻ってきたんだな」

「…大牙さん?」


 ボソッと口から言葉が出ていたみたいだ。


「なんでもないよ。俺のお姫様」


 そんな安っぽいセリフで誤魔化すことを試みた。


「~~~っ!!!」


 めぐみの顔が真っ赤になる。

 しかし、目には泣きそうな嬉しそうな笑みをしている。

 効果抜群だったみたいだ。


「「………」」


 前から視線を感じ、見てみると桜とりんの目に光がなかった。


(怖えーーーよ)


 そうしているとめぐみが知ってか知らずか、こちらに顔を近づけてくる。


「大牙さん……」


(マジかよ…)


 めぐみとのキスは初めてではないが、見ている二人の視線の圧がさらに強くなっているのを感じる。


(……生きて帰れるかなー)


 俺はめぐみが求めたようにキスをする。

 めぐみは俺の首に手を回し――

 

 深く唇を重ねる。


 その時――


「――ん?!」


 めぐみの舌が入ってくるのを確かに感じた。


「~~~めぐみ!時間よ!!」


 そう言うりんに我慢の限界と言わんばかりにめぐみは引き離される。


「あっ……」


 唇が離れたことに名残惜しそうに指を咥えているめぐみ。

 俺としてはこのままいったら、どうなっていたかと思うと安心した。


 

りんのターン

「次はあたしよ!」


 次はりんのようだ。先ほどの引っぺがしから興奮気味だ。


「…あ…はい」


 りんの勢いは凄まじいものがある。


「大牙…」

「……」


 こちらをじっと見ているりん。


「……立って」

「お…おう」


 そう言われ立つ俺。りんがどんなお願いするのか戦々恐々だ。


「……抱きしめて」

「え?」

「だから!…抱きしめて!!」


 りんが甘えることなど想像できていなかったから、そのお願いにすぐに対応はできなかった。


 いつも凛としているからな。


 ――駄洒落じゃないぞ?


 ――と、そんな誰に言っているかもわからないことを考えていた。


 その間に俺はりんを抱きしめ終わっている。


「……♪」


 りんも嬉しそうだ。

 顔は見えないが、ニヤついているの感じ取った気がした。


「あ…あと……」


 ん?まだ何かあるのか?


「……私にも甘い言葉を言って」

「!?!?」


 あれを言えというのか。

 別にりんに言うこと自体には問題ない。

 ただし、言えと言われると恥ずかしいものが出てくる。


「…ダメ?」


 上目遣いで涙目を見せながら言うりん。

 いつもは見せない表情、破壊力に俺は――


「……大丈夫だよ。子猫ちゃん」

「~~~!!」


 耳元でそれを言った。


「~~~」


 言葉はないが顔が真っ赤になり、下に俯くりんは嬉しそうだ。

 しかし、俺も慣れない恥ずかしいことを言ったせいなのか。


(ぬおおおおおおおおおおおおおお!!!)


 恥ずかしさで精神内ではのたうち回っていた。


(殺せー!俺を殺してくれ―――!!!)


 思わぬ精神的ダメージを負うことになる。

 もちろん。りんの嬉しそうな笑顔は嬉しいが――


(やっぱりキツイ!!)


 それでも……俺は、りんのために耐えた。


「……大牙」


 こちらをまた見ているりん。


「どうした?」


 そう言うとりんは目を瞑り、唇を前に出す。


「!?」


(マジかよ…)


 そう思ったが、もはやキスは恥ずかしがらないでできた。


「――りんちゃん!終わりだよ!!」

「あっ……」


 桜に剝がされたりんは、物惜しそうに離れる。



桜ターン

 最後は桜だが――


「……」


 ――なぜか黙っている。

 ただ、こちらを見ているだけだ。


(――コレはいったいどういうことだ?)


 桜のことだから、りんかめぐみと同じものと予想していたが――


「……」


 桜だけが何も言わない。


 ――どうやらそうではないらしい。


「――大牙くん…」


「!」


 ようやく口を開く桜。

 その目には何か決意したような目をしている。


「……今週の休み、何か予定ある?」

「え?……いや、大丈夫だが?」


 俺の予定を聞く桜、俺はわからず、首を傾ける。


「私を――」


 そして――


「明日!あなたの家で私を一日中、愛しなさい!!」


「――なっ!」


 ――その桜に発言に俺は絶句する。


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