第32話 世界樹(ユグドラシル)
世界樹に来た魔法少女たち――
「世界樹?」
桜は名前を聞いてもピンと来ていない。
「それってあの?」
「そうですよね~」
りんとめぐみは知っているようだ。
「一応、言っておこう――」
神獣・青翠は魔法少女たちのために話す。
「世界樹とは、僕らの故郷であり、世界を支える場所だよ」
「世界を支える場所?」
「うん、そうだよ。世界樹は様々な世界を支え、安定を保つためにあるんだ」
「?」
スケールが大きすぎてピンと来ていない桜。
「つまり、家を支える土台ってことよ」
「ああ、そっか!」
りんにそう言われ、納得した桜。
「正確には違うけど、概ねそれであっているよ」
青翠の話は続く。
「ここはその一部を別の場所に変えて、拠点にしたんだ」
「まるで「挿し木」ですわね」
「挿し木ってあの?」
挿し木――枝を切り、鉢に植え、育てる方法。
「それはわかるのね…」
「私、園芸部だよ!」
「今までできなかった理由は、コレが育ち切ってなかったんだよね」
「そうなんだ!」
「桜さんに相談したらもっと早かったかしら~?」
「う~ん…どうだろ?」
「いや!冗談だからね桜!」
そんなじゃれ合いをしながら話を続ける。
「これから君たち魔法少女は、ここを拠点にしていいよ」
「ホントですか!?」
今までは魔法を使って、拠点に隠ぺいをしていた。
今までの虚誕は、場所が見つかる可能性もあり、安全とは言えなかった。
だが、ココならば――
「ああ、もちろん!」
青翠は笑みを見せながら、話を続ける。
「ここなら見つかる可能性も減るし、部屋もいくつもあるよ!」
「それに君たちが寝ていたベット――」
「あれですか?」
ベットの方を見る桜たち。
「あれ回復効果があるんだ!」
「あら~いいですわね~」
「確かにね…」
ベットの効果を聞き、桜たちは乗り気になる。
魔法少女三人は、新しい拠点ができたことに喜んだ。
「あと…彼女たちの訓練もお願いできる?」
「訓練?」
「知っての通り、彼女たちは魔法少女になったばかりだ」
「ああ!そういえば…!」
「だから実戦経験がない彼女たちに…訓練をお願いしたい」
訓練をお願いされ、三人は――
「いいですよ!」
「構いませんよ~」
「…いいわよ」
すぐに了承する。
「おお!いいのかい!ありがとう!」
青翠は感謝を伝える。
「命の恩人だし、いいよ!」
「ですわ~」
「ただし…日によるわよ?」
りんの言葉に青翠は頭を傾ける。
「日によるとは?」
「私たち全員がいける日といけない日があるの…」
「それはなぜ?」
「それは……」
言い辛そうな表情を見せるりん。
「――か………」
「か?」
「彼氏とのデートがあるの!!!」
りんの発言にずっこける後輩たち。
青翠は――
「ぷっ…はははははは――!!!」
大笑いしていた。
カアアァァァァ――
りんは顔を真っ赤になる。
「――はははっ!!!……すっ…すまない!!」
大笑いしていた青翠は、笑いを堪えながら謝罪する。
「なるほど!君たちにとっても確かに重要なことだ!」
「りんさんの気持ちわかりますわ~」
「うん!――そうだね!」
桜とめぐみは同意するが、自分の大胆さに黙ってしまうりん。
「…そんなに重要なこと?」
三人がデートと言い、それに怪訝な顔をする楓。
「うん!意外かと思うけど、結構重要なことだよ!」
「デートがですか?」
万奈美も楓と同じ反応をする。
「彼女らにとっては強くなる方法の一つだしね!」
「そうなんっすか!?」
理由を知らない楓・万奈美・橙は驚愕する。
彼女たち魔法少女が、強くなる方法の一つが意中とのデートである。
「君たち、驚いているけど――」
青翠は、楓・万奈美・橙に何を言うか――三人は瞬時に察する。
(コレって――)
(ですわね――)
(そのようね――)
「君たちもすることだよ?」
「「「…え?」」」
「「「えーーーーー!!!」」」
そう言われ、さらに驚く楓・万奈美・橙。
「ちなみにー」
青翠は、まだ何か言いそうだ。
「彼女たちの彼氏も同一人物だよ」
「ちょっ…!!!」
「ちょっとーー!!!」
「「「えーーーーーーー!!!!!」」」
爆弾が投下され、さらに驚かされた。
「マジっすか!先輩!!」
「…スゴイね」
「どんなお付き合いを?」
「いやーそれはー…」
「っ…!」
「あらあら~」
桜たちは、後輩たちに彼氏との付き合いを聞かれるのであった。
数十分後――
「まあ…それについては大丈夫だよ」
「それは一体どういうことですの?」
「ここは元の世界とは違い、時間の流れがゆっくりなんだ」
「そうなの!」
青翠の発言に桜たちは何度かわからない驚きを見せる。
「もちろん条件付きだけどね」
「条件付き?」
「条件はこんな感じだよ」
青翠が提示された世界樹の条件
1,緊急事態の場合(治療・避難)
2,訓練の場合3人以上必要
3,私利私欲には使えない。
以上である。
「私利私欲とは?」
「宿題とか勉強などの個人的なことだね!」
「え~!ここなら宿題もすぐ終わると思ったのに!」
「同じくっす!」
それを聞き、ガッカリする桜と橙。
「まあ…それは仕方ないけど――」
りんは条件の内容に怪訝な顔を見せる。
「この避難した場合って――他人も連れて来れるの?」
それを聞き、りん以外の魔法少女がハッとする。
「入れるよ?」
「!」
それを聞き、りんは考え込み、しばらくして口を開く。
「それって――怪人でも?」
「「「「「!」」」」」
そう―もし怪人が人間に化け、この場所に入ってきたら。
(むしろ逃げ場がなくなる…)
「それは無理だねー」
「!」
「というか、君たちに悪意を持っている者はここには入れないんだ」
「そう…」
まだ、不安は残るが今はそれでいいと考えたりん。
~地上~
話が終わり、世界樹の一部から出て来た六人と一体――
「さて…君たち――」
出て来たばかりの彼女たちに青翠は――
「コレを渡しておこう」
青翠は懐から、腕輪が出てくる。
「それは?」
「カギだよ」
「カギ?」
そう言われ、三人は頭を傾ける
「うん、さっきの場所にいけるカギだよ」
「楓たちにはもう渡していたけどね」
楓たち三人は、桜たちに腕輪を見せる。
「魔法少女以外使えないし、違和感がないように術を入れてる」
「へえ~」
「悪くないですわ~」
「まあ…それなりに良いデザインね」
「とりあえず、これにて解散!お疲れ!」
青翠は笑顔でそう言い残し、世界樹のところへ戻る。
どうやら、あの場所の管理人をするらしい。
「あの…先輩たち」
去り際の桜たちに楓が口を開く。
「これから…よろしく」
恥ずかしそうに照れた顔でそう言う。
「うん!よろしく!」
不安は残るが、お互いに笑い、健闘し合う魔法少女たちだった。
「ふ~…今日は色々あったねー」
「そうね」
「そうですねー」
四天王との闘い、新しい魔法少女の登場、新しい神獣、宿敵の強さの再確認。
――本当に今日は色々あった。
敗北もしたが――
そんな三人でも明日は楽しみなのである。
「明日は――」
三人にはある人物が思い浮かぶのである。
「大牙くんに慰めてもらおっか!」
王守大牙――
「そうですね~…とびっきりのをしてもらいましょう!」
三人にはその人物がいる限り――
「そうね………とびっきり…」
その輝きが消えることはないだろう。
「そうだね!」
そんなことを考えながら明日を楽しみにする――。
そんな彼は――
「――ぶえっくしゅん!」
「どうしました?」
神獣との戦いで――
「いや…くしゃみがな――」
「大丈夫ですか?」
今週は学園を休むことになり――
後日、三人に付きっきりで慰めを迫られるウルフマンであった。




