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30/55

第30話 終了……そして

 神獣の「龍」と狂竜の「竜」が相対する。


 お互いに敵を見る――


 お互いに強者とわかる。


 一方は傷があり、一方は万全である。


 一方は何も持たず、一方は味方を抱える。


 どちらも有利で、どちらも不利である。


 お互いに思う――




((このまま戦えば、どちらか死ぬな))




 一触即発になろうかという――

 長い沈黙。




「――四天王レクス・リザードよ」


 その沈黙の中、龍が先に口を開く。


「この戦い――預ける」


「――あ?」


 そう言われ、不満そうな顔をする。


「――ふざけてる訳じゃねぇよな?」


 ――もちろんリザードも分かっている。

 戦うことより、今はこの場をお互い去ることが正解であると――


 だが彼女は――


 どちらが正解かより、どちらが面白いかを――


「そちらは不満そうだが――」


 リザードのことを察したのか、龍は話す。


「貴様の持っている者は――私でも計り知れないぞ?」


 そう言われた瞬間、リザードは――狂気染みた笑顔を見せる。

 確かに、ウルフマンには他の怪人にはない、特異な力がある。


 だが、それも――今はまだ使いこなせていない。


(でも、使いこなせたら――)


 そう思うとゾクゾクする。

 自分と戦えるものが、また増えると思うと――


「――どうやら…決まったようだな」


 そう、決まった――彼女の答えは出た。


「――ああ、そうだな」


 リザードがそう言って、二体はその場から去る。


 一方は傷を負い、未来の脅威を見逃し――

 一方は傷を負った見方を背負い、楽しみが増えた――







 


 

~ウルフマン~

 目を開けると知らない天井――


 身体を持ち上げると――全身が痛い。


 よく見ると全身が包帯で巻かれている。


 まだボーっとして頭が冴えない。




(――確か、俺は……)


 記憶を辿ると、何をしていたか思い出した。


「…そうだ!俺は!……ッ!!」


 思い出し、大声を上げたせいか傷が痛む。


「――あまり無理はしないで下さい」


 そう言って現れたのは――見たこともない人間の男だった。


「ウルフマン…大丈夫ですか?」

(俺の名を知っている!?)


 組織の人間であることはわかった――


(だが、誰だ?)


 人間の男の姿をしているが、誰かはわからない。

 怪人が全員、人間の姿を知っている訳ではない。


「あー…もしかしてわかりません?」


 俺は目の前の男に頷く。


「――コレならどうです?」


 男は怪人になる――それを見た瞬間、誰だかわかった。




「デスピエロ――」


(こいつの人間の姿、初めて見たな)


 デスピエロの人間の姿を初めて見て、驚いたが――

 むしろコイツと知り、安心した。


「どうしたんですか?」


 そんなことを考えているとデスピエロが口を開く。


「いや…なんでもない」


 デスピエロの質問に俺はそう答えた。


「――それより」


 そう、それよりも――だ。


「どれくらい経った?」


 俺は龍と戦った時の記憶はあるが、そのあとの記憶が――


「――三日くらい寝てましたよ」

「――なっ!?」

(三日も眠っていたのか!)


 三日も眠っていたことに驚いたが――


「満身創痍のアナタをリザード様が助けてくれたんですよ?」

「――マジか」


 さらに驚くが出てくる。

 戦闘狂で言われるリザード様が助けてくれたとは――


(…意外に部下想い?)


「ちなみにどこまで覚えています?」


 そう言われ、俺は覚えている範囲のことを話す。

 リザード様と魔法少女たちとの戦闘――

 新しい魔法少女の登場――

 神獣の「龍」が現れたこと――

 「龍」と戦い、その後の記憶がわからないこと――


「……ふむ」


 おそらくリザード様にも聞いたはずだが、確認のためだろうな。


「――リザート様の情報と差異はないようですね」


 確認が取れたようだ。


「それとアナタの記憶にないことを教えときます」


 俺は、リザード様に助けてもらったことより耳を疑った。


「マジかよ――」


 なんせ自分が龍と戦い、撤退させるほど追い込んだことに――


「私も驚いてますよ」


(――そりゃそうだろ)


 俺でも耳を疑うほどだからな。


「何が起こったんだ?」


 俺はデスピエロに聞く。


「う~ん……わかりません!」

「おい!」


 そう言われツッコむ。


「いや、本当にわからないんです」

 

(…おいおい)

 

「――姉さんの方は?」


 姉は知ってると思い聞いてみる。


「――そっちはまだ無理です」

「無理?」

「はい、姉君の方は仕事量が多すぎるので、調査がわかり次第言うそうです」

「…そうか」


 今回のことは色々イレギュラーなことが多かったから仕方ない。


(しかし……姉さん大丈夫かな?)


 姉の役職を考えると――過労死しないか心配である。


「――じゃあ、俺の状態はわからず仕舞いか…」

「ただ――二つわかったことがあります」


 わからないことだけかと思ったが、そうではないらしい――。


「なんだ?」

「一つは、怪人特有の力とは――別と言うことです」

「――別?」

「はい、別です」


 怪人の力とは――動物ベースのところが大体である。

 個別の能力として存在している。

 後は鍛えた結果で新しい力を派生させ、得ることが多い。

 たまに特殊能力もちも存在する。


(しかし別とは――)


「どういった力なんだ?」

「わかりません」

「ええ…」

「すいません、こればかりは――」

「なにが違うんだ?」

「動物特有でも、特殊能力でもないんです」

「つまり――新しい力だと?」

「そうとしか言いようがないんです」


 どうやらわからないことが多いらしい。


「二つ目は、発動条件がわからないのです」

「…おいおい」


 発動条件がわからない。つまり、いつ使えるかわからない。

 発動させて、鍛えることも今のところ不可能。


(どうやって発動させたんだ?)


 発動条件がわからないことに頭痛がする。


「すいませんね。そちらで頑張って下さい」

「自分でやるしかないのか」


 全く知らない力だからな――






「そういえば…リザード様は?」


 デスピエロにリザード様がどうなったか聞いた。


「彼女ならドンとその精鋭の五人の上級怪人が連れて行きました」


 ドンの精鋭怪人――これほど強力な怪人はいない。

 ドンは怪人たちの親代わりであり、師匠だ。


 そのドンが選んだ怪人――

 リザード様とも渡り合うくらいの怪人を連れて来たのだろう。


(まあ…そもそも――)


 俺たちはドンには頭が上がらないのだ。

 親代わりと言うこともあるが――

 ――ほぼ全ての怪人はあの人に逆らえない。


「――どうなった?」

「拳骨を喰らわせられたそうです」


 あの人の折檻の仕方は、昔ながらだ。


「そのあと、説教コースか――」

「ですね――」


 俺たちもあの人には頭が上がらない。


「――どれくらい?」

「今回は――十は超えるかもですね」

(うん…まぁ…そうなるよなー)


 ドンは怒り方によって説教の時間が変わる。


 つまり――そう言うことだ。

 俺とデスピエロは、リザード様に心の中で合掌する。




「あと――」


 どうやらまだあるらしい。


「リザード様からです」


 渡されたのは――紙だった。


「リザード様から?」

「はい…伝言だそうです」


 伝言――なんだろう?

 俺は紙を開き、文面を見る。






 よう!これを見たってことは生き残ったか!

 私も遠目で見ていたが、死んだとおもったわ!



(まあ…そうだよな)

 よく生きていたなと自分でもそう思う。



 しかし、あれは何なんだ?

 私も見たことねえぞ?お前らの特異能力か?

 神獣のヤツもビビってたし――


 

(違うんだよなー)

 俺もよくわかってない――というか記憶にない。



 まぁ、それは良い。

 というか興味ない!


 

(えーー)

 興味ないの?四天王としてどうなの?


 

 私はお前がブラッド以上になると見てる!

 だから強くなれ!命令だ!



 戦闘狂の面を改めて見た。



 もし、私に勝ったら――



 つがいになってやる!




 「ブーーーーー!!!」

 病室に、盛大に噴き出す音が聞こえた。




 それじゃ!がんばれよ!

                      リザード





 文面を見て怪我とは別に疲れが来た。


(――何だろう…戦闘より疲れた)


「――大丈夫ですか?」


 俺の様子を見て、心配するデスピエロ。


「――ん…」


 俺は手紙をデスピエロに渡す。




「――あー…これはこれは…」


 仮面越しだがニヤついているな。


「なかなか買ってくれてるではありませんか!」


 そう言われるが、何とも言えない。


「――姉さんに見せるなよ」


 わかっているとは思うが――一応な。


「もちろんですよ」


 わかっていたらしく即答した。


「こんなもの見せたら、内乱が起きますよ――」


 そう――冗談でも姉さんに見せたら、リザード様と戦争が起きる。

 それくらいやばい!

 

 訳の分からない力が出てきて、これからどうしたものか――

 そして、あの三人のことを不意に思い出す。


 (――あいつらはどうしてるかな……)


 そんなことを思い出しながら――

 こうして俺のリザード様の件は終わった――



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