第23話 桜とデート
桜とのデート当日――
俺は、りんのことを無理やり頭から追い出していた。
そうしないと桜とのデートに集中できない。
快晴、雨が振る気配はない。
そして、待ち合わせ場所の一時間前待ち――今回は駅で行く。
空を見るとりんを思い出すから――
花壇に咲いてるピンク色の花を見ている。
――これで桜に集中できる。
~桜サイド~
ピンクが右往左往している。
(どうしよう!どうしよう!)
彼女は慌てている。今日が気になる相手とのデートだから。
天気は晴れ!雨降る気配なし!
どの服着ていく?お弁当は?忘れ物ない?
桜は軽いパニック状態、昨日決めていたことを繰り返してしまう。
「さくらー!もう行く時間でしょ!」
桜の部屋に来た女性は、桜の母「栄美」である。
栄美は、桜がなかなか下に来ないので、見に来たのである。
「まだ?緊張してるの?」
「だ…だってー!」
デート当日、桜にとって初めてのデート――
緊張しないほうが無理である。
「大牙くんのことは知ってるけど――」
そう、桜は大牙が転校してきて以来、長い付き合いであるが――
「じゃあ余計に大丈夫でしょ?」
「それでも!――」
心の底では認めているが、まだ頭がついて行ってない状態。
「それでも…大牙くんに気に入られたいから…」
彼女はこのデートで、それを確かめるために行くのだ。
「ふーん、なら――」
娘を見た母は――
「余計に大丈夫よ!」
娘の顔を両手で挟み、そう言う。
「え?」
「あんたは笑顔が可愛い!私の娘よ!」
そう言う母に桜は胸の中に熱いものが灯った。
「だから!いつも通り!胸張りなさい!」
「…うん!!!」
そして、桜は覚悟を完全に決まった。
「行ってきます!」
「いってらっしゃい!」
元気よく彼女は待ち合わせ場所に向かう。
~駅前~
「大牙くーん!」
聞き覚えのある元気な声が聞こえる。
「…桜」
「おはよう!」
「…おはよう」
(相変わらず、元気がいいな)
桜の声と笑顔、それで自然と笑みが出る。
「――お前は俺の笑顔を引き出すな」
「え?」
「何でもない。行こう」
「うん!」
そうして、俺たちは遊園地に向かう。
~遊園地~
遊園地を初めて見る俺にとってはわからないことだらけ。
観覧車というものが見え、俺は少しだけワクワクしてきた。
「楽しそうだね!」
顔を見られたのか、桜はそう言う
「テーマパークと聞いているから少しな」
「子供みたいな目してたよ!」
「うるせえ」
俺は桜にデコピンをする。
「痛っーい!なにすんの?」
「からかった罰だ」
「もー!」
(……本当に楽しそうだな)
傍から見ると恋人に見えるのだろうか?
チケットを買いに列に並ぶ。
「こんなにたくさん来るんだな」
「そうだねー!」
桜と並んでいるとすぐに着いてしまった。
「カップルですとカップル割になりますがどうします?」
チケット売り場の売り子にそう聞かれ、気まずくなるが――
「カップル割でお願いします」
俺はそう言い、カップル割にした。
桜は顔が少し赤くなるが――
「行こっか!」
笑顔でそう言った。
遊園地に入り、乗り物が多く。どれに乗ったものか?
「大牙くん!あれに乗ろう!」
桜が指さしたのはティーカップという乗り物だ。
「あれは楽しいのか?」
「うん!楽しいよ!」
そう言われ、乗ることにした。
動き出し土台が回転する。
そして、ハンドルを回すと乗り物自体も回転する。
単純だが、自分で回転する感じはなぜか楽しい。
「楽しかったねー」
「そうだな」
次に乗ったのは、メリーゴーランド
メルヘンな馬と馬車の作り物がある乗り物だ。
ティーカップにはない上下の運動でなかなか悪くない。
桜は隣で、笑み出して、楽しんでいる。
乗っている俺も釣られて、笑みが出る。
~正午~
いくつかの乗り物に乗り、昼食の時間になる。
昼食は、桜の弁当だ。
おにぎりに、卵焼き、たこさんウインナー、から揚げ、サラダ。
そんな定番が詰められたものだった。
「そういや初めてだな。桜の弁当食べるの」
「そういえば、そうだね!」
そう言う意味では楽しみだ。
「召し上がれ!」
「いただきます」
食事を始め、手を付けた桜の料理は――
「うまいな」
うまかった。特別うまいわけではないが――
温かい家庭の味って感じだ。
「ありがとう!」
その笑顔がこの弁当に詰まっていると感じた。
(桜と結婚できるやつは幸せだろうな)
そう思った。
「笑っているけど?どうしたの?」
どうやら笑みが出ていたらしい。
「いや、桜となら楽しい人生になるなと思ってな」
「……え!」
桜の顔が赤くなる。
「どうした?」
「ううん!別に!」
「?」
ランチが終わり、また遊園地を楽しむ。
ジェットコースター。
今までの乗り物より動きが大きく、速い。
順番を待ち、乗るのを待っていたが――
「…一番前になったな」
「…そうだね」
さすがの桜も笑顔が引きつっている――少し怖いらしい。
ガタンと動き出し、道に沿って頂上まで上る。
「――これは高いな」
「そうだね」
「怖いか?」
「…うん、少し」
やはり怖いらしい。
「――手、繋いでやろうか?」
「――お願いできる?」
冗談で言ったつもりなだが――
ギュ――
お互いの手を握り、手の震えが伝わる。
(そんなに怖いのか)
じゃあ乗らなければいいのでは?そう思うが――
(俺が遊園地、初めてだから無理したんだな)
そうしている内に頂上に着く。
そして、一気に――落ちる!
(うお!これは速い!)
桜に手を握る力が強くなる。
さらに動きが加わり、叫び出す人が出てくる。
しかし、恐怖の者もいれば、楽しんでいる者もいる。
桜は――黙っている。
初めての俺も恐怖はないが――叫ぶ余裕はない。
長い時間乗っていたと思うが、実際は一瞬だ。
「桜?終わったぞ?」
降りようとした俺は、桜が動かないので声をかける。
(き…気絶してる)
――どうやら相当苦手だったらしい
――数分後。
目を開けた時、ジェットコースターの上ではなく――
大牙くんの膝の上に乗っている状態だった!
「た…大牙くん!?」
「おっ…起きたか?」
どうやら私は気絶していたらしい。
「ごっ…ごめん!」
「いいよ。それよりもう少し座ってろ」
「で…でも!」
「いいから座ってろ」
桜は嬉しさもあるが、恥ずかしさが勝っている。
(な…何でこんなことに―!!?)
桜はどうしてこうなったか思い出そうと努力する。
苦手なジェットコースターに乗り、そのあと――
カァ――
顔が赤くなる――大牙と手をつないでいた事実を思い出す。
そして、ジェットコースターが落ちたあと――
おそらく気絶したのだ。
(ジェットコースター苦手なんだよなあー!)
無理して乗ったことに後悔が生まれる。
「大牙くん、ごめんね…」
桜は謝るが――
「気にしてはいない。ただ――無理し過ぎだ」
そう言われ、桜は反省する。
~桜サイド~
大牙くんは優しい。
それは、彼と初めて会った時からわかっていた。
自分の直観には正直で、実際彼は良い人だ。
少し意地悪だけど――
でも、私と一緒に姉弟たちと遊んでくれた。
友達が疑った時も怒らない。仕方ないからと。
だから、私は怒った。そんな悲しい彼を見たくないから。
彼はいつの間にか、大切な友達と仲良くなっていた。
りんちゃんは、彼を警戒していたけど、良い人だとわかってくれた。
めぐみちゃんは――彼に好意があると言った。
その時、私は焦りというものが出てきた。
(……もう、止められない)
彼は鈍感だから、わかっていなかったみたいだけど――
優しい彼が、意地悪な彼が、鈍感な彼が――
そんな彼が、私は――
~大河サイド~
「――好きだよ」
「……………ん?」
俺は耳を疑った。
桜から――「好きだよ」という言葉が聞こえた。
俺は顔が赤くなる。
昨日のりんとのデートとは、全く違う熱さだ。
パニック状態でお祭り騒ぎだ。
「――さ……桜?」
桜に声をかけると――
桜は自分が口に出た言葉を理解したようだ。
その顔は真っ赤になる。
ただ――その目には冗談がなく、覚悟を決めた目だ。
俺は考え込む。
任務を優先するなら友人として過ごす方が問題は少ない。
恋愛は問題になりやすい。
任務に支障がないという意味では――
「断る」方がいいのだろう。
だが――俺、個人としては桜のことが。
(いや――だからこそ)
「さ……さく…ん!?」
俺は答えを言うつもりだったが――
先に黙らせられた。
彼女の唇で――




