第19話 りんの悶え
~りんサイド~。
大河とのデートを終えたりんは――
家で一人、枕に顔を埋めて悶えていた。
「~~~~~!!!」
確かに、彼には好意はあったし、私はキスをした!!
だけど、今まで敵意むき出しで、警戒していた相手にする!?
勢いでやったこと…というには、やりすぎであったと今頃自覚し始めた。
これから‘‘付き合う相手‘‘として――
‘‘強くなるため‘‘――
そして、自分の‘‘気持ち‘‘を確かめるため――
フェニックスに好きな人と言われて――
――私は王守大牙が頭に浮かんだ。
最初は、あり得ないと否定した。
だって、彼は見た目が不良としか言えないほどの風貌で、獣と対峙しているかのような感覚を覚えた。
桜に紹介されたときは、桜を利用しているだけと考え、怪しんだ。
桜から引き剝がそうとしたが、ダメだった。
彼を信頼しきっていたし、抵抗もされた。
そうして私は仕方なく監視することにした。
彼が、学校にいる時はできるだけ、監視した。
桜の部活を手伝うときも、桜と話しているときも――。
なるべく彼に気づかれないように監視していた。
しかし、彼は手伝いを頼まれれば、真面目にしていた。
桜に対して、敵意を見せてもいなかった。
少しは安心して良いと感じた矢先に――
――私の家に現れた。
私のお祖母ちゃんが商店街で困っていて、助けたら、たまたま来たらしい。
身内を助けてもらっておいて、無碍にするのも何なので、家に上げた。
お祖母ちゃんが学校での私のことを聞いた時――
彼は、嫌味の一つでも言うかと思ったが――
一言も言わなかった。
二人きりなって、理由を聞いた。
私が警戒していることも「当然」と言い、嫌ってもいなかった。
むしろ、桜の方が変だと言い、私はその通りと思い笑ってしまう。
――その時からだと思う。
彼に対して、信頼をしていいと思ったのは――。
私が目を離した後に道場でお爺ちゃんと――戦っていた。
お爺ちゃんに実力を認められていた時は驚いた。
お爺ちゃんは中々相手を認めない。それが道場の師範代でも――
私の父でさえ、認められたのは入門して十年くらいだと言う。
ボーイフレンドと言われた時は、少し焦った。
あり得ないと思った。
そりゃ信頼してはいるけど、そこまでの関係じゃない。
その時から彼を意識しだしたんだと思う。
彼に私の名前を呼ぶことを許可した時も意識していた分――
顔が凄く熱くなって、素早く逃げるように家に戻る行為をした時は――
自分の気持ちに理解が追い付かなかった。
ウルフマンに敗北して、悔しい思いをした。
今までは、私が怪人に負けることはなかった。
それは今まで一族に代々続く剣術が、怪人相手でも通用したからだ。
だけど、あいつには通用しなかった。
本当に悔しかった。
自分の学んできたものが通用しなかったこと――
剣術そのものを否定されたこと――
仲間を守れなかったこと――
だから――
私は強くなろうと決心した!
しかし、その方法が――
彼氏を作ることが重要と言われ、何の冗談かと思った。
「いない」と言ったが、めぐみは私の動揺を察したのか――
それともこの前の大牙の話で、何か感づかれたのか――
――とにかく、幸か不幸か、私たちの気になる対象が全員一致していた。
そりゃ、桜は彼と仲は良いし、桜もきっかけがあれば付き合っていたと思う。
めぐみは、なんか「わからされた」らしい――。
それを聞いた時、何か黒いものが胸の中を駆け回った気がした。
今考えると、「嫉妬」というモノだろう。
まさかそこまでの感情が出てくるとは――。
(……なんで、あんなに嫌だったのかしら)
そんなこんなで話し合った結果――
桜が遊園地、私が水族館でデートすることに――
めぐみがいないのは、私たちの気持ちの確認を優先させるためらしい。
デートの前日からドキドキと心臓の音が早かった。
家族以外の男性と水族館に行くのは、初めてのことだし――。
彼が来た時は、鼓動がさらに早くなった。
そのせいか素っ気ない態度を取ってしまう
彼に服が似合っていると言われた時も凄く嬉しかったが――
恥ずかしく、また素っ気ない態度を取ってしまった。
彼は水族館の水槽を見ると、子供の様な純粋な目をしていた。
初めて見るからか、本当に楽しんでいるように見えた。
あまり話はしなかったけど――
彼の顔を見ているのは、何だか楽しかった。
彼と一緒に水槽を見ていると安心した。
彼もきっと同じだと不思議と感じることができた。
水族館を進んで、私と、彼との共感を楽しんだ。
それだけで、私は満足だった。
そのはずだったのに――
――私は、彼と抱き合っていた。
すぐ離れることもできたはずなのに――
彼の身体、体温、鼓動が伝わって、一つになったような感覚が起こった。
私がギュっとすると、彼も抱き返してくれた。
私の体温が高くなり、彼の体温も上がっていくこともわかった。
この瞬間が、永遠に続けばいいと感じていた。
――彼を好きだと実感してしまった。
水族館を出て、彼とのデートも終わってしまった。
彼が去っていく。
まだ、抱きしめた時の感覚があった。
――今しかないと思った。
――彼を呼び止め。
――私の顔が届くまで近づける。
――私は彼の頬に……
「~~~~~!!!」
その時を思い出し――
恥ずかしさのあまり枕に顔を埋め、叫ぶ。
(明日からどんな顔して会えばいいのよ~~~~!!!)
青髪の乙女は、初恋に悶え――
そして同時に――
――彼にまた会えることを楽しみするのであった。
一方、大牙は――
昨日のデートの件は考えないようにしよう。
――というか、ありえないことが多すぎて、許容量が、もう……。
…さすがの怪人である彼でも今回の件は限界であった。
(……今日はゆっくり寝よう)
そうして静かにベットの中で横になる大牙であった。
(……りんの顔、近かったな)




