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コスプレイオブパルクール  作者: 桜崎あかり
第4話『孔明の罠』

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19/28

アバン前+アバン前半

 今回もまた、例によって……である。


 紹介するのは、いわゆる朝の情報バラエティー番組なのだが、そこでの1コーナーである。


「転売ヤー問題に対し、予想の斜め上なアンサーを出した本が話題になっています」


 こちらは民放の情報バラエティーらしく、男性司会ではあるものの、いわゆる芸能人枠と思わしくような外見の男性に見える。


 そこで切り出されたのが、まさかの本だった。


「一部エリアでは転売ヤーの指名手配制度があるという話ですが、メーカー側でも転売ヤー対策は急務でしょう」


 この本のタイトルが出る前にも、別の男性コメンテーターから一言が飛び出す。


 確かに言われれば、その通りだ。メーカーも転売ヤーのような人物の手に商品が渡らないようには努力をしている。


 それでも、転売ヤーは……と言うのが現状かもしれない。



 VTRでは、転売ヤーが転売できないようにデジタルコンテンツの100%化を展開すればよいのではないか、という内容のライトノベルが紹介されていたのである。


 これは啓発本でもなければ、いわゆる煽り目的のようなものでもない。あくまでも内容がフィクションのライトノベルだ。


 一見すれば、SNS上でもあるようなフェイクニュースの類を疑われそうな内容なのは……間違いないだろうが。


 単純に転売ヤーを一掃するには、これ位の事が必要である、という方法や内容を物語にしたライトノベル。


 当然、ライトノベルなのでフィクションなのは当たり前だが、この世界では転売ヤーが社会問題になっていて、ある意味でも転売ヤーが敵として描写される作品も数多くある。


 何なら、小説投稿サイトでもいくつかの作品で闇バイトではなく、敵が転売ヤーの小説は探せば出てくるし、書籍化されたタイトルだって実際にあった。


 それを踏まえると、こうしたライトノベルがリリースされるのは……ある意味でも宿命と言えるかもしれない。


「しかし、この本を紙書籍で出す必要性はあったのでしょうか。むしろ、転売ヤー対策と言う意味では電子書籍の方が……」


 先ほども別の発言をした男性コメンテーターが、この本に関してざっくりと言及する。


 この本自体は転売ヤーの手に渡って転売されたというニュースはない。


 さすがに、転売ヤーがこの本を転売していたら、別の意味でも自分の首を絞めることになるだろうし、転売ヤーが悪であることを広める事にもなりかねないだろう。


 一方で、デジタルコンテンツオンリーにした方が良いのではないか、という意見はこの番組の後で別分野からも飛び出すこととなった。


 原油の高騰や人件費的な意味でデジタルオンリーにするべきと言う炎上勢力や煽り系配信者なども、この件に関しては言及することに。


 しかし、そうした勢力がガーディアンに秒で鎮圧されるのは、言うまでもないのだが……。


 その辺りの描写はメディアミックス化された際に対応するとして、こちらでは省く。



【テレビを見る時は部屋を明るくして離れてご覧ください】


 例によって、テロップに関しては【テレビを見る時は~】以外は表示されていない。


 そして、シーンの始まりは、まさかの部分からである。



『ガーディアンが捕まえた整備士の恰好をした転売ヤー、それが鍵を握る可能性はあるでしょう』


 冬川ふゆかわハンゾウの報告シーンから始まるのだが、冬川の姿は描写されていない。


 あくまでも声だけ登場だった。


「分かった。引き続き調査を頼む」


 別の一室で冬川とスマホ経由で話をしていたのは、秋月穂村あきづき・ほむらである。


 彼も転売ヤーには頭を悩ませるところだが……。


『それと、気になるレース映像を発見しました。該当レースは……』


 その後、冬川は秋月にあるレースの名称に言及し、そこで通話を切った。


 エクストリームパルクールのサイトで該当レース名を入力し、表示されたもの、それは金曜日に開催されていたレースの映像である。


 レース名は『トライアルマッチ』、このレースの2着までのプレイヤーにはサバイバー特別への優先出走権が得られる、というもの。


 同じサバイバー特別を狙うのであれば、他のレースでも代用は可能だ。


 実際、このレースのメンバーを踏まえれば、無理にここで狙う事はしないだろう……それがSNS上での見解である。



「一体、誰がこの世界を揺るがそうとしているのだろうか……?」


 その後、冬川に言及されたレースを秋月は確認を開始するのだが……。


 距離は2000メートル、場所は草加駅より若干離れたエリア、カテゴリー的には市街地・商店街と表示されている。


 2000メートル戦とはいえ、コース取りを間違えれば長距離戦の場合は致命的だろう。


 武器を使用した妨害工作などはエクストリームパルクールでは禁止されているので、そういう事だ。


 そのエントリーされている選手一覧を見て、秋月は言葉が出なかった。


 出走は8人だが、その内の3人は、諸葛亮孔明しょかつりょう・こうめい、アークロイヤル、ブレイズヴェルグ。


 この3人に限れば、転売ヤー確保の賞金ランキングで上位に入っているメンバーと言えるのだ。


「まさか、忍者構文の時と同じく……」


 この秋月の一言の後、シーンはレース映像の方へと移動していく。



 レースに関して言えば、1000メートルまでは先頭を走っていたのは、アトラクション番組でも同じみな男性アスリート。


 彼の独走をアークロイヤル、ブレイズヴェルグが許し、諸葛亮孔明は最後方……と言う展開だった。


 しかし、ガジェット不調の部類とは異なる理由で1500メートルを超えた辺りで彼は失速し、そこを孔明が見事な差しを決めて勝利する。


 孔明の方も隠しガジェットのような部類を使ったとは思えず、ホバーユニットを応用的に使用しての勝利、と言うべきか?


 なお、ガジェットの使用が前提なエクストリームパルクールでは、不正ツールや故意による相手プレイヤーへの攻撃に関しては反則と認定される。


 飛行ユニットやテレポートに近いようなシステムだったら即反則だが、ホバー移動は問題がなかった様子。


 実際、これに関する審議のランプも付くことはなかった。


 2着は独自ガジェット装備で挑んだアークロイヤル、3着は別の陸上出身の男性パルクールプレイヤー。


 失速した男性アスリートは最下位に沈み、7着にはブレイズヴェルグがゴール……。


【他のメンバーよりも孔明が目立った気配だった】


【無名アスリートも若干名いたが、歯が立たなかったのでは】


【孔明のワンサイドゲームだった】


 各種考察サイトでも以下のような言及がされていた。他にも意見はあったようだが、大半が孔明なのだろう。


 一部では【あのペース配分では崩れるだろう】と言う事で、トップを走っていた男性アスリートに言及したものもあったが。


 一方で、不思議なことにアークロイヤル及びブレイズヴェルグに関しては言及はない。コメントなどが消されたわけではないはずだが……。


 それを踏まえると、孔明のワンサイドゲームと言われれば否定できないだろう。


 レースの順位的な意味を踏まえると、孔明は後ろからのレースだったと言う事もあって……。



 そのレースの映像を見て、エクストリームパルクールに興味を持った人物がいた。


(これが、エクストリームパルクール……)


 自分の部屋で動画を視聴し、レースの内容に衝撃を受けていたのは、春日部皐月かすかべ・さつきである。


 彼女の部屋は、ある意味でもゲームに囲まれているような部屋ではある一方で、そこまで散らかったわけではない。


 見る人から見れば、雑ではあると認識される気配はするが。


 そして、これがきっかけとしてあの新人戦へ参戦したのである。



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