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コスプレイオブパルクール  作者: 桜崎あかり
第3話『日本のコンテンツ流通を変えていく』

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オープニング後+Aパート(ざっくりと)

 オープニングが流れた後、このようなCMが流れた。


『特殊詐欺グループの資金源にも不正転売は利用されています』


『転売ヤーから商品を購入することで、特殊詐欺グループの犯罪行為が拡大していきます』


『商品は正規ルートで購入し、転売ヤーから購入するのは止めましょう』


『〇月は不正転売ヤー一掃期間です』


 〇月とは言いつつも、このCMは毎月見ることになるであろう内容だ。


 転売ヤーから商品を買う事は、特殊詐欺グループなどに資金が流れる事を意味しているらしい。


 実際、金塊を海外で換金し、税金逃れをしようとしたグループが日本ではなく海外で逮捕されたニュースもあった。


 つまり、そういう事なのだ。


 その一方で、不正転売ヤーではなく転売ヤーそのものを一掃するべき、という声もある。


 ただ、貴重な美術品が海外流出しているケースに関して買い戻し、それを日本へ取り戻す的な存在もいるためか、一応はCMで不正転売ヤーとしている模様。


 どちらにしても、転売ヤーへの風当たりが最悪なのは間違いないだろう。



『日本人総パルクーラー時代へ』


『令和日本を舞台に、様々なランナーがそれぞれの思いで疾走する!』


 次のCMは書籍化されたライトノベルのCMらしいのだが、別の意味でも驚くような冒頭ナレーションだった。


 時代背景としては、自動車や自転車などの交通ルールが厳しく定められ、移動は全て徒歩、もしくは2足歩行ガジェット……ざっくりと言えばロボットのみと言う令和日本。


 そこで繰り広げられるパルクーラー同士のバトルがメインの作品のようである。


 作品内容よりも重要なのは、パルクール人気がここまで到達している事により、WEB小説などでも令和日本を舞台にした作品を書籍化した方が売れる、と考える会社が存在すると言う事。


 異世界ファンタジーがメインだった同分野において、まさかの現代ものがブームになっているのは、ある意味でも転売ヤーの存在だけでなく……という個所はある模様。


 中には、錬金術でレアアースを生み出したり、様々な魔法技術などで食料自給率100%を達成させた……と言うようなファンタジー要素を持つ作品もあるようだが、本当にこれらがフィクションなのだろうか?


 最低でも発電に関して言えば、原子力発電は10年以上前に全ての発電所が廃炉になっているし、もはやSNS上で「魔法発電が実用化している」とネットミーム的に言われるようなレベルで、脱炭素化を実現させた。


 自動車やバイクなどにおける電気化も、令和が始まって数年ほどで確立させたという話だ。


 そうした個所を踏まえると、コスプレイオブパルクールも、そうした日本が舞台となっているのは間違いない。



【第3話:日本のコンテンツ流通を変えていく】


 CM後、黒バックにサブタイトルが表示される方式でタイトルが表示された。


 しかし、この表示方法は何かおかしい。


 タイトルの文字が小さくなっていくような、まるでフェードアウトしているような描写で縮小していく。


 最終的には周囲がどこかの部屋のような場面に変化していた。特撮番組でサブタイの演出にこだわった作品もあったが、それに影響を受けたのだろうか?


 場所的に言えば、どこかのガーディアンの支部にも見えなくもないのだが……対電忍をチェックしていた人にとっては、見覚えあるようなシーンとも言える。


 何故、このようなシーンが存在するのかは……次の場面を見てみよう。



「なるほどね。転売ヤーに賞金が懸けられていたことに、こういう意味があったなんて」


 テレビを見ていた女性、それはまさかの人物だった。


 ホットコーヒーの入ったコーヒーカップを片手に視聴していたのは、ガーディアン秋葉原本部の本部長であるガンライコウ。


 しかも、今回はガーディアンの制服であり、普段というかいつものスマートフォンをモチーフとした着ぐるみキャラではない。


(確かに転売ヤー対策は、急務と思っていただけど……こういう手法を取るとはね)


 当然、コスプレイオブパルクールはフィクション。


 しかし、その一方で転売ヤーに対する罰則は存在する、そう本編ラストでも言及されていた。


 ガーディアンも転売ヤー一掃のためには動いているのは事実で、先ほどのテレビCMのような啓発活動も警察などが主導する形で行われている。 


 だからこそ、転売ヤーの一掃が急務になっているのは事実だった。


 今のままでは、ジャパニーズマフィアや特殊詐欺グループの立て直しを転売ヤーが行い、それこそ地球全土を転売ヤーが管理する世界……そうしたフィクションのような事が現実に起こる。


 それを阻止するためにも、ガーディアンはこれまで以上に転売ヤーの摘発を進めなくてはいけなくなっていた。


「ガーディアンが取るべき、次の一手は……」


 コーヒーを飲み終わり、カップを本部長専用の机に置くと、同じくそこに置かれていたスマホお画面に表示された告知を見て、ふと考えた。


【エクストリームパルクール、特別トライアルレースを実施。場所は草加市ゲームセンター近辺。距離は2000メートル】


【今回のレースに勝利した上位2名には、サバイバー記念への優先出走権が与えられます】


 この告知は、あの時に流れていたデジタルサイネージの物とは別に配信されているものである。


 あのレース自体は実在した。むしろ、エクストリームパルクールは実在する競技として存在していた、とも言えるだろう。


 エクストリームパルクールを宣伝するために造られたアニメ……コスプレイオブパルクール。


 その正体を知ったとき、ガーディアンは別の意味でも対電忍のネットミームを思い出したのは言うまでもない。



 転売ヤーに対し、人一倍の敵意を持っていた女性、春日部皐月かすかべ・さつき


 彼女は対電忍のネットミームが広まった際は、目撃者の一人にすぎなかった。


 その一方で、転売ヤービジネスのような物には敵意を持っている。


 しかし、彼女は転売ヤー指名手配制度のようなものは望んでおらず、そういった意味ではシグルドリーヴァとは違うのだろう。


 彼女が今いる場所、それはエクストリームパルクールのフィールドのひとつだった。詳細な場所を言うと、谷塚駅より数百メートル程度離れた道路。


 この道路はエクストリームパルクールで使用する関係で、一般車両は通行止めとなっている。対応カーナビでは通行止めと言う事で、迂回路を指示されるレベルだ。


(本当にこれでよかったのかな?)


 彼女が着ているのは、ARパルクールなどで使用されているガジェット装着用のインナースーツ。


 SF物で言うと、パワードスーツを装着する時に着るインナースーツと同じような立ち位置だろうか?


 彼女の方も、エクストリームパルクールへ参戦するのは、これが初めてだ。それもあって、公式ホームページを確認しても……これで問題ないのかは半信半疑である。


『まもなく、新人戦がスタートいたします。エントリーしているプレイヤーは……』


 時間は午後1時30分を回っているだろうか? アナウンスの声は男性だ。女性アナウンスも場合によってはあるようだが……。


『……距離は1000メートル、最大16人プレイヤーで行います。該当するプレイヤーは大至急、フィールドにお集まりください』


 人混みが激しいであろうエリアの一角で、新人戦の開始を伝える放送が流れていた。


 距離は1000メートル、初心者向けと言う訳ではないのだが距離はそこそこある。これでも短い方、と語る人物もいるようだが。


 陸上競技よりも距離があるので、ある意味でアスリート泣かせな距離なのは間違いない一方で、あるものに例えると距離はそこまでないという声もあった。


 アナウンスに関して言えば、若干途切れ気味と言う訳ではなく、ある意味でもギャラリーの声などもあるので途中が遮られている説はある。


 プレイヤーの集まりが少ないと言う訳ではなく、他のフィールドでは満員になっている場所もあるので……そういう事なのだろう。



 スタート地点であるフィールドの前には、様々なプレイヤーがすでにスタンバイしている。


 アーマーを装着済みな人物もいれば、まだカスタマイズ途中というプレイヤーもいるだろう。


 開始に関しては、5分後だ。全プレイヤーが集まっていると言われれば、数人ほどいないようにも見える。


『エントリーナンバー3番、まだスタート登録が完了していません。大至急、登録をお願いします。登録が確認されない場合、競争除外とします』


 別のレースの事例だが、レース前にエントリー取り消しをした際も問題なく進行していた。


 その場合は本来のプレイヤー数とは違った形で行われるようである。しかし、直前のドタキャンやガジェットの故障などは除外扱いとなる。


 運営が提供しているガジェット故障やシステムトラブルなどではペナルティはないものの、プレイヤーの都合などによるドタキャンのような運営に支障があるような部類はペナルティでポイントが下がる模様。


 キャンセルと言っても、理由が緊急性のないようなものはペナルティの対象……なのだろう。


 他人に変わって勝手にエントリーとか、そういう部類はライセンスはく奪にもなりかねない。ポイントも新人だとランクが一番下なので、下がりようもないが。


 そして、ポイントによってランクが決まっており、一定ランクにならないと該当するレースに出られない……と言う形は、様々なゲームでも用いられているので、何となくは把握できる。


 目指すべきはランク上位になるだろうが……賞金的な意味でも。



(自分の番号は……これか?)


 皐月は右腕に装着している専用のガジェットに目を向ける。番号は3と表示されていた。つまり、流れているアナウンスに関して言えば、自分の事であることに気づく。


 声を出すようなタイミングもなく、慌ててスタートフィールドにあるエントリー用の機械にガジェットをかざす。


 そこで、ようやくエントリーが完了し、無事に競争除外は回避された。


「エントリー完了しました。準備が完了しましたら、スタートエリアへ向かってください」


 男性スタッフに皐月は声をかけられた。怒られるような想定もあったが、スタッフはそんな表情をしていない。


「アナウンスが聞き取りづらくて、この場所に気づいたのも……さっきなので」


 どういう言葉で伝えればいいか分からず、皐月は身振り手振りで何とか事情を説明する。


「ここ最近の盛り上がり方は異常ですからねぇ……開催初期よりは、まだマシだと思いますよ」


 ここでスタッフと話をしていても始まらない。下手をすれば、また間に合わずに……もあり得るだろう。


 そして、皐月は該当フィールドの方へと向かって走り出した。

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