#97 温泉旅行2日目前半 飛騨高山観光
10月13日(日)
チュンチュンチュンチュン
鳥の囀りで目を覚ました俺の目の前には、雛の綺麗な顔があり、しっかりと目があっている。
「雛、おはよう。今何時だ?」
「春斗っちおはよう。時間は分かんない」
「そっか」
唯佳とほのかはまだ寝ている様で、俺の背中側から2つの寝息が聞こえて来る。
枕元のスマホで確認すると、時間は5時前だった。
習慣て凄いな。
「春斗っちは今日もウォーキング行くの?」
「ああ、いつも程距離は歩けないと思うけどな」
「アタシも一緒に行くね」
寝ている2人を起こさない様に静かに着替え、白骨温泉内を散歩して部屋に戻った。
「案外狭かったね~」
「そうだな。歩数も5,000歩くらいしか増えなかったな」
「でも気持ちよかったね~」
「紅葉してればもっと気持ちよかったんだろうけど、ちょっと早かったな」
「この辺りの紅葉は、10月下旬からが見頃だそうですよ」
「残念だったねー」
俺と雛の会話にほのかと唯佳が割り込んで来た。
「2人共起きたのか。おはよう」
「うん。春くんおはようー」
「春斗くんおはようございます」
「2人共おはよ〜」
「雛さんおはようございます。ちょっとお話しましょうね?」
「へっ?な、何の?」
「雛ちゃんおはよー。抜け駆けした事についてだよー」
「いや、それは2人が気持ちよさそうに寝てたから、ね、ねえ春斗っち?」
「2人共許してやってくれ。昨夜の疲れもあると思って起こさなかったんだよ」
「「ゆっ昨夜のって!?」」
昨夜の事を思い出し、言った俺も含めて全員真っ赤になって俯いてしまった。
「ひ、雛、先に風呂入っていいぞ」
「う、うん。ありがと」
順番に汗を流して、全員揃って朝食会場に移動した。
既に全員揃っていて、俺達が最後だった。
「3人はこっちね〜」
「お姉さん達に話を聞かせてごら〜ん」
3人は可憐さん達に連れて行かれ、俺は裕人さん達男子組と一緒のテーブルで朝食を摂った。
裕貴くんからは刺すような、直人からは興味津々といった視線を送られたが、何も言う事はないです。
裕人さん、クスクスしてないで下さい。
2日目の今日は、飛騨高山に行った後に白川郷まで足を延ばす予定らしい。
「飛騨高山ってどんなとこなん?」
「古い街並みが有名ですね」
「楽しみだねー」
高山の街に着いて、待ち合わせ時間を決めてお昼ご飯は一緒に食べる事にして、大人と子供で別れて行動する事になった。
智佳姉はこっちに付いてくるらしい。
「あっ!お兄ちゃん!あれ食べたい!」
凛が指差す先には、飛騨牛の串焼き屋があった。
「いいぞ。みんなも食べるか?」
「「食べる〜」」
「春斗くん、私達は自分で出しますよ?」
「いいよ。会計が別々だと時間も掛かるし、ここは俺が出すから別の所では頼むよ」
「そういう事なら分かりました。ご馳走になりますね」
「春斗、太っ腹~」
「あっ!お兄ちゃん!コロッケも食べたい!」
「いいぞ~」
牛串は霜降と赤身、ロースの3種類あり、全種類買ってみんなで分け合って食べた。
醤油ベースに生姜とリンゴを使った甘みのあるタレが、肉との相性抜群だった。
因みに、生姜とリンゴは女子達が気付いて教えてくれた。
俺を含めた男子陣は、何が入っているかまでは分からなかったので、素直に女子達凄いな~と、感心した。
コロッケも飛騨牛コロッケというだけあって、飛騨牛が使われていて美味しかったけど、正直飛騨牛かどうかは言われないと分からなかったかな~
お土産屋さんも覗きながら古い街並みを歩いていると、食べ歩き出来そうな物を売っているお店が多くて、ついつい引き寄せられてしまう。
「飛騨牛のお寿司だってー」
「食べた〜い」
「じゃあ、ここはお姉さんが奢ってあげよう」
「智佳姉いいの〜結構お高いよ~?」
「バイト代取っといたから平気だよ~遠慮しないで食べな〜」
智佳姉の奢りで、3貫セットの飛騨牛の握り寿司を味わった。
お皿代わりのお煎餅の上に乗ったお寿司を平らげ、最後にお煎餅も美味しく頂いた。
「美味しいね~智佳姉ありがとう〜」
「どういたしまして〜凛ちゃんに喜んでもらえて嬉しいよ~」
「このペースで食べていると、お昼ご飯が食べられませんね」
「それはそれでいいんじゃん?」
「おばあちゃんに連絡しとくねー」
結局、集合時間を1時間遅らせて、バスの所に集合に変更になった。
次に目に留まったのは飛騨牛まんという肉まん。
結構大き目で、中に肉が結構入っていて美味しかった。
「何か食べてばっかじゃない?」
「智佳姉、しょうがないの。美味しそうな匂いが私を誘うんだもん!」
「凛ちゃん先輩、まだ食えるんすか...?」
「ちょっとお茶にしませんか?」
「「「さんせ〜い」」」
ほのかの提案に唯佳と雛、智佳姉が賛同したので、ほのかの見つけたお店で休憩を取った。
「この紅茶美味しいねー」
「ホントね~このお店当たりだったわね~」
「そうですね。落ち着きますね~」
「コーヒーも美味しいよ~」
「ああ、美味いな」
「ふぅ〜人心地ついたよ」
「凛!?お前、パンケーキなんて注文したのか!?」
「美味しそうだったんだも〜ん。それと裕貴?お前って言うな」
「は、はい。ごめんなさい...」
「凛ちゃん先輩、凄いっすね」
休憩で入った筈の店で、パンケーキを食べる凛にみんな苦笑いしつつ、のんびり雑談を楽しんだ。
休憩を終えた俺達は、一旦古い街並みを離れ高山陣屋に来ている。
「高山陣屋とは、元禄5年西暦で言うと1692年に、飛騨を支配していた金森氏が江戸幕府の命令で出羽国、現在の山形県と秋田県の一部の上山に国替となりました。
同年、江戸幕府は飛騨を直轄領として役所を設置し、幕府から派遣された代官、12代からは郡代というらしいですが、その代官が飛騨支配のための執務を行っていた建物のことらしいです。
幕末には全国に60数ヶ所あったといわれている代官・郡代所の中で、当時の主要建物が残っているのは、この高山陣屋のみなんだそうですよ」
パンフレットを見ながらほのかが説明をしてくれている。
「へーここだけって凄いねー」
「貴重な建物なんだね~」
ほのかの説明を聞きながら玄関に入ると、正面に青海波という模様が描かれた壁に出迎えられた。
ほのかの説明によると、江戸時代に流行った模様で、当時は壁や襖にまで描かれたいたらしい。
無限に広がる波の模様には、未来永劫続く繁栄と平和への願いが込められているとも言われているとの事だ。
奥に進むと柱にうさぎの飾りが施されていた。
「あ〜うさぎがいるよ~」
「ん?何だ飾りじゃないか」
「でも、カワイイっすよ?雪兎程じゃないっすけど」
「キュッ!!」
直人に撫でられながら褒められた雪兎が誇らしげな顔をしている。
「それは真向兎といって、部屋の長押などに打ちつけた釘の頭を隠すための装飾らしいです。
うさぎは子どもをたくさん産むことから、縁起のよいデザインとも、火災から建物を守ってくれる魔除けの意味合いがあるとも言われている様ですよ。なぜ高山陣屋のデザインとして採用されたかは、よくわかっていないそうですが、案外単純に可愛かったからかもしれませんね」
「長押って何なん?」
「長押っていうのは、日本建築によく見られる部材の事で、柱面に水平に打ち付けて、柱を連結する物の事だよ」
「ヒロ君よく知っているわね、お兄ちゃんとしての面目躍如ね」
智佳姉に褒められ照れる裕人さんをニマニマとした顔で見つめるほのか。
何かいつもとキャラが違くないか?
先に進むと大きな広間が現れた。
「ここは見たまま大広間と呼ばれているそうです。年始をはじめとした重要な年中行事などで使用された書院造りの部屋で、49畳敷の3部屋続きで、高山陣屋内で最大の広さを誇るそうです。
縁側を通して季節ごとに変わる庭の景色を一望できます。と書かれていますね」
「大広間ってまんまだね~さっきの嵐山の間みたいな別称はないの?」
「パンフレットには...載ってませんね」
更に先に進んで行くと何だか見た事がある様な所に出た。
「何か時代劇で見た事がある様な気がするな」
「ここは御白洲という場所ですね」
「ああ、なるほどな。時代劇だともっと広い所でやっている事が多いけど、こういう広さの所でやっている事もあるから、それで見覚えがあったんだな」
どうして見覚えがあるのか判りスッキリして先に進み、御蔵という所もほのかの説明を聞きながら見学を終えた。
「ほのかちゃんがいるとガイドしてもらえていいわね~ヒロ君よりも優秀だったりして?」
「そうですね。実際、ほのかの方が優秀ですし、自慢の妹ですね」
「俺にとっても姉さんは自慢の姉です!」
「も、もう!2人共恥ずかしいから止めて!」
「ほのかっちの素が出た~」
「ほのかちゃん、私達にもそれでいいよー?」
「ああ、もうそういう関係なんだし」
「は、春斗くん!?」
「えっ?あっ!い、いや、そ、そういう関係っていうか、その、あの...」
言った俺と言われたほのかだけじゃなく、唯佳と雛まで真っ赤になって俯いてしまった。
「お兄ちゃ〜ん?そういう関係ってどういう関係なの〜?」
「お姉ちゃんも聞きたいな~」
そんな俺達を見て、すかさず凛と智佳姉が誂って来て、俺達は余計真っ赤になってしまった。
裕人さんがとりなしてくれ、古い街並みに戻って来た俺達は、食べ歩きを再開して飛騨牛大玉焼きやつくね串、ミンチカツという名のメンチカツ、それからとろ煮という飛騨牛とこんにゃくなどが入り、その上に温泉卵や刻みネギが乗った煮込み料理まで堪能して、待ち合わせ時間にバスまで戻って来た。
合流したばあちゃん達から、お土産で買った荷物を預かった唯佳が空間収納に仕舞い、白川郷へと移動した。




