#76 日帰り北海道旅行
夕張市の人口は、実際の人口とは異なります。
9月21日(日)
「北海道だーおっきいねー」
「いや、ここからの景色と羽田からの景色はそんなに変わんないだろ?」
俺と唯佳は今、北海道の新千歳空港にいる。
理由は将来的に北海道のダンジョンにも潜りたいので、時間がある時に唯佳と一緒に来ておきたかったからだ。
というのは建前で、美味しい海鮮料理が食べたくなって、唐突に行動に移しただけだ。
唯佳も付き合ってくれたので、今度からは唯佳の転移でいつでも来られる様になったのはラッキーだった。
「まずは夕張に行こうか」
「メロン食べたーい!!」
「時期的に食べられるかな~」
「えー食べられないのー?」
「分からないけど、取り敢えず行ってみようか」
「食べられるといいなー」
俺達は空港から電車に乗って夕張までやって来た。
昔は石炭採掘で賑わっていたらしいけど、石炭が石油に取って代わられた事で、1970年代後半にほぼほぼ閉山してしまい、それに伴って人口も減って行き、12万人いた人口はどんどん減っていってしまったらしい。
そんな夕張にダンジョンが発現したのは2000年、人口は約15,000人にまで減っていた。
今は若干戻って約20,000人まで増えたらしい。
「まずはダンジョンに行って、それからメロンを買いに行こう」
「はーい!」
唯佳と2人でタクシーに乗り、ダンジョンまでやって来た。
1980年頃に建てられたという石炭博物館の横に出来たダンジョンに併設されている夕張支部に入ると、今まで攻略して来たダンジョンの支部と比べると、人が多く感じた。
「何か人が多いねー」
「まあ、過疎ダンジョンとは言っても、人口2万人の町のダンジョンだからな。今まで攻略して来たダンジョンがある町は人口数千人しかいなかったんだし、そこと比べると多く感じるのは当たり前だよ」
「そっかーそうだよねー」
支部の入り口で唯佳と話していると、後ろから声を掛けられた。
「すいませ〜ん。そこに立っていられると邪魔なんだけど~」
「あっ!すいません」
慌てて横に退くと、俺達と同じくらいの年の女子4人が通り過ぎて行った。
「もう用は済んだし札幌に行ってお昼でも食べようか」
「その前にメロン買いに行こー?」
「そうだな。忘れてた」
「もうー!」
「ハハッごめんごめん。誰かにメロン買える所を聞いて来よう」
俺がメロンの事を忘れていた事に怒る唯佳を苦笑いで宥めつつ、空いてるカウンターでメロンを買えるお店を聞きに行く。
「すいません。ここら辺でメロンを買えるお店を教えてもらえますか?」
「メロンですか?メロンでしたら、最寄りの夕張石炭博物館というバス停からレースイリゾート前バス停までバスで行って頂ければ、その近くにあったと思いますよ」
「分かりました。ありがとうございます」
「春くん、早く行こう!」
「ああ」
待ち切れないといった様子の唯佳に連れられ建物を出て、最寄りのバス停からバスに乗り、教えてもらったお店にやって来た。
「春くーん、メロンが一杯あるよー」
「凄いな」
お店の人が言うには5月から8月が収穫のピークらしいが、9月もまだ収穫期ではあるそうで、店頭にも東京のスーパーでは見ない量のメロンが並んでいた。
「えーと、うちの分は2個あれば足りるかなー?」
「凛と智佳姉が沢山食べそうだし、唯佳も一杯食べたいだろ?そう考えると、3個あった方がいいんじゃないか?」
「そだねー。じゃあ、うちの分が3個で雛ちゃんとほのかちゃん、あとは可憐ちゃんと紗奈ちゃんの所に1個ずつでいいかなー?」
「いいんじゃないか?可憐さんと紗奈さんの所は贅沢食いが出来るな」
「そだねー。でも、実家に持って行くかもよー」
「そうだな。まあ、それでも足りるだろ?何人家族かは知らないけれど」
メロンを買って、唯佳の空間収納にしまった時にお店の人を驚かせてしまったが、探索者だと伝えると探索者全員が空間収納を持っていると誤解されてしまった。
特に訂正する事なく苦笑いでお店を出て、南千歳駅まで転移で戻り、電車で札幌までやって来た。
タクシーで美味しい海鮮料理が食べられるお店に連れて行ってもらい、お昼を食べながらこれからどうするか相談した。
「これからどうする?札幌の近くには夕張以外に過疎ダンジョンがないから、何処か観光でもしに行くか?まあ、その前に札幌ダンジョンにも行っておこうとは思っているけど」
「観光!?行きたーい!」
「じゃあ、まずは札幌駅近くにある札幌ダンジョンに行って、それから観光に行こう」
「うん!」
この後の予定も大雑把に決まり、残っていたうにいくら丼を2人で完食して、札幌駅まで転移で戻って来た。
札幌ダンジョンは、札幌駅から歩いて5分程の場所にあり、凄くいい立地にあるダンジョンだった。
「うわー、凄い人が一杯いるねー」
「大都市の駅近くにあるダンジョンだからな、人が多くても不思議じゃないさ」
「そだねー富士森公園ダンジョンと同じくらいいそうだねー」
「富士森公園よりも多いと思うぞ」
札幌ダンジョンを出た俺達は、そのまま電車で小樽までやって来た。
「春くん!水族館があるよ!」
「行ってみるか?」
「うん!行くー」
水族館に入って最初にいたのはアオウミガメ。
ゆったりと泳いでお出迎えしてくれた。
「のーんびり泳いでいるねー」
「そうだな。気持ちよさそうだな」
アオウミガメの前を後にして、進んだ先にあったのはオホーツク海とベーリング海の魚の展示エリアだった。
「あー!この子可愛いー」
唯佳の視線の先には、岩の間からひょっこりと顔を出してこちらを見ている様なシモフリカジカがいた。
「何だか妙に癒されるな」
「ねー」
次のエリアは南の海の魚が展示されていた。
「チンアナゴって今、ちょっと人気だよねー」
「ああ、SNSでバズっていたんだっけ?」
人気のチンアナゴの次はカワウソエリア、コツメカワウソが左右の水槽を通路の床の筒状の水路を使って、行ったり来たり泳いでいる。
「可愛いー!凄い泳ぐの早ーい!」
「こういう風に水槽を繋いで展示されているの面白いな」
「ねー」
放っておくといつまでも見ていそうな唯佳を連れて、次のエリアに移動する。
「おー!おっきいー」
「水だこだな。確か世界最大級のたこだったっけ?」
「うん。そだよー」
水槽に張り付いている水だこの大きさに驚きながら、次のエリアに移動すると、そこにはキタサンショウウオやオショロコマといった北海道ならではの水生生物達が展示されていた。
「おっきい水だこの後だと、凄く可愛く見えるねー」
「実際に可愛いぞ?」
「そうだけど、より一層って事だよー」
キタサンショウウオを見て可愛いと言っている俺達を見て、隣で見ていたカップルの彼女さんに、奇異な目で見られてしまった。
爬虫類とか両生類が苦手な人かな?こんなに可愛いのに。
次のエリアにいたのはネズミイルカ。
今もまだ習性や特性が殆ど分かっておらず、学術研究目的以外での飼育は禁止されているのだが、ここの水族館では地元の大学の研究チームと合同で生態調査などをやっている為、こうやって展示出来ているらしい。
「イルカだー!」
「ネズミイルカだって、あんまり聞かない種類だな」
「そだねー」
のんびりとイルカの水槽を見学してから、次のエリアに進んだ。
「あのカメ右前足?がないよー?」
「ほんとだ。どうしたんだろうな?」
横に大きなパノラマ水槽の中に、右前足がないアオウミガメがいるのを見て、疑問に思って水槽内を見ていると、サメも同じ水槽内を泳いでいた。
特に珍しい展示方法ではないが、一瞬このサメに食べられてしまったのかと思った。が、違ったらしい。
「このカメ、この状態で保護されたんだってー回復してよかったねー」
スマホで調べた情報を唯佳が教えてくれた。
サメにあらぬ疑いを掛けてしまった。すまん。
その後、セイウチやトドなどのショーを観て、俺も唯佳もテンションが上がったのだが、楽しみにしていたイルカのショーは、イルカの出産が近く体調面を考慮して中止となってしまった。
「イルカは赤ちゃん生まれるんじゃ仕方ないねー」
「そうだな。また今度観に来ような」
「その時はみんなで来ようねー」
「そうだな」
その後は、まだ見ていなかったアザラシなどを見て、水族館を出て、タクシーでお土産として鮮魚が買える所に連れて行ってもらった。
ウニ、イクラ、タラバガニに毛蟹、ホッケの開きやホタテに水だこなどを買った。
困ったのは、タラバガニと毛蟹が生きていた為、唯佳の空間収納に仕舞えなかった事だ。
取り敢えず、箱詰めしてもらって、俺が持った状態で帰る事にした。
タラバガニと毛蟹、それぞれ25杯ずつ合わせて50杯の蟹が入った発泡スチロールの箱を重ねて持って、唯佳に誘導してもらいながら建物の外に出た所で、転移で自宅に帰って来た。
休みで家でゴロゴロしていた父さんズの手を借りて、蟹をキッチンまで運んだ後、雛とほのかに連絡をしてそれぞれの家にお土産を置いて来た。
可憐さんと紗奈さんの家は知らないので、連絡をしてうちに来てもらい、一緒に海鮮パーティーを楽しんだ。
いや~満足です。
実際には、夕張駅は新夕張駅から夕張駅間が廃線になったのに伴い、廃駅になっています。




